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試合への飢え、意識変化、新技術…ブラジルでの日々を財産に、U-22日本代表MF松岡大起が踏みしめる新たな一歩

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MF松岡大起

 19日に始まったアジア大会の男子サッカー競技。20日にカタールとの初戦を迎えたU-22日本代表にあって、MF松岡大起(グレミオ・ノヴォリゾンチーノ)のプレーは印象的だった。

 アンカーの位置からボールを引き出して鋭くさばき、出足良くボールも狩ってみせた。「自分でもうまくやれていたと思う」と松岡が振り返るように、前半に関してはベストプレーヤーの一人だった。

「試合に飢えていたんで」

 そう語ったとおりの意欲的なプレーぶりだった。ブラジルではパーソナルトレーニングも実行しているそうで、「動きのキレの良さはその成果」と胸を張る。ただ、後半は悪い意味で「試合への飢え」も感じさせることとなった。

 後半に入ると時間の経過と共に動きが落ちてしまい、ゲーム体力の不足を感じさせることとなってしまった。

「自分としても悔しかった。長いこと試合から離れてしまっていたので、そこは少なからずあったんだと思います」

 清水から移籍したグレミオ・ノヴォリゾンチーノではなかなか出場機会を得られず、公式戦の場数を踏めていない。その影響があったのは確かだろう。ただ、そうした自分の状態を含めて「今はポジティブに考えている」とも言う。

「ここに呼んでもらえて試合に出られることが楽しくて、ものすごく楽しんでプレーできている。そこが一番大事だと思うし、充実しています」

 ブラジルでの日々も「最初は言葉も文化も環境も違っていて、『これは本当に難しいな』とばかり考えていた」と、振り返る当初のネガティブな感覚とは大きく変わってきたと言う。

「今は色々なことに慣れて、練習でもベンチに座っていても『俺を試合に出してくれ』と思って前向きにプレーできるようになった。ピッチでの行動も変わったと思うし、地道に続けることで(チャンスが)転がってくると思うし、認めて貰うためにやり続けるだけだと思うようになった」

 同時に「出られないからには自分に原因があるとも考えて深掘りもしたし、そうなると(出ている選手と比べて)足りないのはゴールの部分だなとも思った」という考えに至った。

「ブラジルの選手はトレーニングのミニゲームから本当にゴールにこだわるし、どんどんシュートを狙っていく。試合を観ていても、ペナルティーエリアの外、少し離れた位置であってもフリーでシュートを打たないとブーイングが来るんです。シュートの意識というのは日本と本当に違うと感じたし、自分も意識を変えないといけないと思った部分です」

 シュートに関しては技術的にも新たな挑戦を試みている。インステップキックで蹴るタイミングで軸足をジャンプして“抜く”形のシュートモーションを採り入れたり、インサイドキックで巻くシュートなども試している。実際にトレーニングでも、鋭いシュートでゴールネットを揺らすシーンが観られた。

 またブラジルでの日々で守備技術に関しても新しい発見があったと言う。「こっちの選手はすぐに股抜きを狙ってくる。特に難しい状況に追い込まれたとき、股を抜いて広いほうへ持っていくプレーが本当に上手い」ということも体感。出し抜かれないために磨いた感覚は「アジア大会の試合でも実際に活かせた」と言う。

 もう1点、ブラジルで痛感したのは「サッカーは本当にコミュニケーションが凄く重要」ということ。今回の代表では「初めてやる選手が多いけれど、いつもよりも積極的に話している」と言う。言葉が通じるゆえ、「いっぱいしゃべりたくなる」ということもあり、トレーニングでも盛んに言葉を交わすシーンが観られる。

「自分たちは勝つことでしか評価してもらえないと思っている。まずは次のミャンマー戦。相手はこっちが想像している以上にやってくると思っているので、そこをしっかり勝っていきたい」

 ブラジルで悩んだことも成長のための財産に変える。まずは次戦。そしてその先へ。松岡はここで歩みを止める気はない。

(取材・文 川端暁彦)

●第19回アジア大会特集ページ
川端暁彦
Text by 川端暁彦

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