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月間MOMより“大事なもの”…遠藤航「リバプールのファンがそういうところを評価してくれた」

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日本代表MF遠藤航(リバプール)

 プレミアリーグでの評価を大きく高め、勢いに乗った状態で日本代表に帰ってきた。MF遠藤航(リバプール)は昨年12月の公式戦全8試合に出場し、クラブのファン投票による月間マン・オブ・ザ・マッチを受賞。開幕前は出場機会さえ疑問視されていた状況から一転、いまやチームに欠かせない中心選手としてのパフォーマンスを見せている。

 持ち味の守備ではプレミアリーグのスピーディーな展開に順応し、代名詞の“デュエル”で優位に持ち込む場面が増えた。単に相手の攻撃を受け止めるだけでなく、アンカーの位置から果敢に持ち場を離れることで、より相手ゴールに近いエリアでボールを奪い切るシーンも多数。これはリバプールの戦術に適応した結果だという。

「攻撃的なサッカーをやっているので、自分のところで奪い返せるようにとか、それができないなら1回遅らせるようなプレーを意識していて、それは良くなっていると思う。普段よりもリスクマネジメントは高い位置になったと思うし、それはリバプールのサッカーがそうだからということで、自分がアダプト(適応)していかないといけないところだった」(遠藤)

 また首位攻防戦となったアーセナル戦(△1-1)を筆頭に、攻撃面の貢献も際立っていた。CBの間に入ってビルドアップに加わり、安全にボールを前進させる役割だけでなく、ボールとともに前進しながら攻撃に関与。時には左右のスペースを自在に動き回り、より相手にとって嫌な位置に顔を出す姿が増えている。

「攻撃に関しては特に細かい指示があるわけではなく、自由にやってくれという話だったので、自分は3枚(遠藤と2枚のCB)で落ちて作ったりとか、アーノルド(右SBのトレント・アレクサンダー・アーノルド)が中に入ってくるので、彼のポジショニングを見ながら自分のポジションを決めるという形でやっている。CB、SB、あとは8番がどこまで降りてくるかとか、周りのポジションを見ながら自分のポジションを決めているので、フリーにみんな動いているという感じですね」

 一言でボランチといっても、日本代表ではアンカー寄りの役割、前所属のシュツットガルトではインサイドハーフ寄りの役割を担ってきた遠藤。それがリバプールでは、いずれの経験もバランス良く使い分けているように見える。遠藤によると、向き合っているのは「個の良さをどう出していくか」というミッション。それもチームに順応していくにつれて、アプローチの仕方を徐々に変えてきていたようだ。

「最初のほうはどちらかというと、チームのやり方に自分が合わせていくためにどうしたらいいかを考えながらやっていて、今はようやくチームのやり方も分かっているし、周りも自分が理解しているということをわかっている。そこで今は、より個の良さを出しているという感じ。12月はそういう試合が多かったので、自分の良さを出すところと、チームとしてのやり方がしっかりフィットしてきたという感じだと思います」

 そんな手応えを語った遠藤だが、月間マン・オブ・ザ・マッチという栄誉自体には「そこまで気にしてはいない」という。

「大事なのはしっかりリバプールとして、怪我人が多い中でも勝ち点を重ねてしっかり首位でターンしたということ。チームとしても個人としても大事な12月だったので、そこで結果を出せたのは良かったし、日本代表チームにも良い刺激を与えられたのかなと思う」

「賞を取ろうと思ってプレーしているわけではないし、大事なのはチームが勝つこと。与えられた時間の中でとにかく勝ちを目指してやっていくこと。それを目指してやった結果、リバプールのファンがそういうところを評価してくれて自分に投票してくれたということだと思う」

 個人としての栄誉より、チームのためにどう取り組むか。その姿勢は日本代表チームにおいても変わらない。

 所属クラブで勢いに乗っている状況での代表合流だが「あんまり気にしていないですね」ときっぱり。「自分に決定権があるわけでもないので、(アジア杯の)スケジュールがそうならしょうがない。とにかくいまは代表のキャプテンとしてここに来るのが自分の仕事であって、とにかくここで優勝して帰ることを目標にやっている」と結果にフォーカスしているようだ。

 リバプールの現状では安心材料もあった。1月1日の第20節ニューカッスル戦(○4-2)では負傷離脱が続いていたMFアレクシス・マック・アリスターが復帰。「彼がケガから帰ってきたのでタイミングとしては良かったのかなと。自分が抜けて彼も怪我している状況ならチームは苦しいのかなと思ったけど、彼が帰ってきたのでしっかり向こうも勝ち続けてくれると思うし、こっちもしっかり結果を残して帰れればと思う」。頼れるチームメートを信じ、代表チームでの役割に集中していく構えだ。

 前回2019年のアジア杯は準優勝に終わった日本代表だが、準決勝イラン戦で遠藤が負傷離脱したのも大きな痛手となった。5年越しのリベンジへ。「アジアが厳しい戦いというのはみんなよくわかっている。前回もそうだし、最後に優勝したのが2011年なので、それを考えても優勝するのは難しい。とにかく自分のやるべきことに集中しているし、代表チームとして毎試合勝つためにやるだけだと思う」と気を引き締め、14日の大会初戦に向けて準備を続ける。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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