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左足弾のゴール認定信じてベンチ前で歓喜迎えた久保建英「菅原選手に“やっとかよ”と…」

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日本代表MF久保建英がDF菅原由勢と歓喜の握手

[1.31 アジア杯決勝T1回戦 日本 3-1 バーレーン アルトゥママ]

 1-0で迎えた後半4分、日本代表の勝利を大きく手繰り寄せたのはMF久保建英(ソシエダ)の一撃だった。自身のボール奪取からカウンター攻撃を仕留め、ラストパスが通らなくてもプレーを続けると、最後は得意のコースから左足で逆側サイドネットにズドン。待望のアジアカップ初ゴールは貴重な追加点となった。

 自身のボール奪取後、左ハーフスペースを攻め上がった久保だったが、最初はFW上田綺世へのアシストを狙っていた。「綺世君の特徴的に振り向いてシュートを打ってくれるかなと思って出したボールだった」。しかし、そこで上田とMF堂安律のポジションが重なり、まさかのお見合い。明確なビジョンを持って出したはずのラストパスは通らなかった。

 しかし、久保はプレーを止めずにゴール前に走った。「俺としては綺世くんに打ってくれよと思ったけど、自分のところにこぼれてきた」。相手選手はオフサイドだと思ってアピールする中、久保は迷わずに左足を一閃。強烈なシュートをゴールに突き刺した。副審はオフサイドフラッグを上げていたが、久保にはゴールが認められるという確信があった。

「とりあえずオフサイド(ポジション)は分かっていたけど、プレーを止めたらもったいないし、大会前のマッチコミッショナーのレフェリングガイドみたいなやつで、ああいう場合はオフサイドにならないというのを聞いていた。これはないかなと思って打ったけど、結果的にゴールで良かった」(久保)

 久保が根拠としたのは相手DFハザ・アリがクリアミスをした場面だ。このケースは久保の後に日本の選手がボールに触っていないため、正真正銘のオンサイド。しかし、もし上田や堂安がボールに触れており、その時点で久保がオフサイドポジションにいたとしても、DFハザ・アリのキックが「意図的なプレー」だったと判断されれば、現行ルールではオフサイドの対象外となる。

 近年この「意図的なプレー」に関するルールは細かい改正が続いており、大会前には出場チームにガイダンスが行われているが、久保はこれを覚えていたという。このゴールは久保が強みとしている先を読む力、抜け目ないポジショニング、そして精度の高い左足シュートが光ったもの。だが、その奥底にはサッカーのルールに対する理解度の高さも垣間見えた。

 結果的にゴールはVAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入を経て認められたが、ゴール認定を信じていた久保はあえてベンチ前で歓喜の瞬間を待っていた。「ベンチと喜ぼうと決めていたし、VARが近かったので何か聞こえないかなと思って待ってました」。モニター確認を終えた主審がゴールの宣言をすると、すぐにチームメートから盛大な祝福を受けた。

「ああいうのがVARの悪いところであり良いところであると思う。ゴールを待たないといけないこともあるけど、みんなで喜べたのはポジティブに捉えていい」。ベンチで見ていた同世代のDF菅原由勢(AZ)とは握手で喜びを分かち合っていたが、そこで手荒いメッセージももらっていたという。

「菅原選手には(アジア杯初ゴールで)『やっとかよ』と。彼はいつも僕に厳しいんで。そこは今日くらいは褒めてくれてもいいんじゃないかなと思ったけど、決められて良かったです」

 盟友からの言葉を冗談まじりに振り返った久保は「惜しいシーンも何回か作ったので、決まっていなくても自分の出来には満足していたけど、ゴールは2年後とか3年後とかに見た時に決めてたなって結果に残るので良かった」と独特の表現で自身の得点を喜びつつ、「今回は(こぼれ球が)ラッキーだったということで、次の試合は多少アンラッキーでも我慢しようかなと思う」と報道陣の笑いを誘いながら取材エリアを後にした。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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