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板倉滉、失意のアジア杯以来の森保J合流「あの経験があってよかったと思えるキャリアを歩みたい」

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DF板倉滉(ボルシアMG)

 失意に終わったアジアカップから1か月半、DF板倉滉(ボルシアMG)は大きな覚悟を持って日本代表に帰ってきた。「アジア杯は非常に悔しい思いをしたので、あの経験があってよかったなと思えるように常に意識してやっている」。最も大きな目標である2026年の北中米W杯に向け、ここで目線を下げるつもりはない。

 板倉にとってのアジア杯は屈辱的な結末に終わった。準々決勝のイラン戦ではロングボールの対応で精彩を欠き、相手の攻撃を跳ね返せないまま終盤を迎えた結果、後半アディショナルタイムにペナルティエリア内の対応で後れを取ってPKを献上。これが敗退を決める失点につながり、試合後にはチームメートより一足先にロッカールームに帰っていた。

 試合後にはミックスゾーンで「今日の敗因は自分にあると思うし、CBの自分がもっと良いパフォーマンスをしていれば日本代表は勝てたと思う」「このままだと代表のピッチに立つ資格はないなというのを自分自身感じた」と責任を一身に背負っていた板倉。今回の代表活動に向けても「僕自身、危機感を持って帰ってきている」と厳しい姿勢を変えなかった。

 それでも、気持ちの切り替えはできているという。

「もちろんみんなに申し訳ないという思いは常に持っているけど、毎日次の日が来るわけで、立ち止まっているわけにはいかないし、前に進まないといけない。これからのキャリアを考えた上で、あの経験があってよかったと思えるキャリアを歩んでいきたいと思ったので切り替えはすぐにできた。帰ってすぐに試合があったので、目の前の試合に集中してやってきた」

 アジア杯明けのブンデスリーガでは出場試合の結果が思わしくなく、スタメン落ちが継続中。それでも「シンプルに外されたりもしたけど、でも全然コンディション的には問題ない。自分自身のパフォーマンスも上がってきているので問題ない」と力強く、「メンタル的にやられているわけではないので変わらずにいつも通りやっていくだけ」と気丈に振る舞った。

 そうした姿勢は気持ちの面だけでなく、自身がピッチに立った際の役割にも向いている。

「まずは1対1で負けない、戦えるようにならないといけないのはアジア杯を通して感じた。個人として伸ばせるのはそこ。またチームとしてああいう試合展開になった時に自分たちの流れを掴めなかったのも事実。実際に難しい戦いが続いたので、もう一回チーム内で話をしたり、コミュニケーションを取りながらやっていきたい」

 自らのパフォーマンスを立て直すのが最優先ではあるものの、チームを鼓舞できるパーソナリティは稀有なもの。一昨年のカタールW杯でもコスタリカ戦の敗戦後に「国民のみんなは下を向いているかもしれないけど、選手は次のスペイン戦に向かっている。心配しないでで一緒にスペイン戦で戦ってほしい」と堂々と口にし、その通りのパフォーマンスを見せたことも記憶に新しい。

 そんな板倉はこの日、北中米W杯に向けて掲げる世界一の目標をあらためて強調した。「僕たちはW杯優勝を目標に掲げているし、そこはブレることはない。ただアジア杯でああいう結果を出してしまっているところで、見ている人に無理なんじゃないかと思われて当然だとも思う」と現状を見つめつつも、力強い言葉を続けた。

「でもみんなの自チームに帰ってからの活躍を見ても、みんな前進していると思うし、危機感を持って戦っているなと自分自身も伝わってくる。日本代表の活動はなかなか長い期間取れないので、自チームで調子良くやっているのを日本代表で発揮できるようにいい準備して、どんな相手でも倒せるようにならないといけない」

「いまは見ている人たちからしたら非常に心配な状態だと思うけど、やっている僕らからしたら全然問題ない。ここから前に進むだけだと思っている。それを変えるためには結果で証明するしかない。結果で証明して、またどんどん盛り上がっていってもらえるような流れを作っていきたい」

 そうした機運を作るべく、今回の活動では37歳のDF長友佑都(FC東京)がW杯以来の復帰。ただ、板倉はベテランの仕事に頼り切るつもりはない。「佑都くんに頼っているようじゃダメだと思う。これから日本代表を強くしていく上で自分たちの世代がという思いは強い。もちろん佑都くんが帰ってきて会えた時は嬉しかったけど、そこに頼らず自分たちがという思いは忘れずにやらないといけない」。まずは21日の国立競技場・北朝鮮戦で、その言葉にふさわしい姿勢を示していく構えだ。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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