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大島&アンドリュー。U-19代表候補の「ダブル司令塔」が千葉揺さぶる

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[3.14 練習試合 U-19日本代表候補1-1千葉 ユナイテッドパーク]

 U-19日本代表候補浮沈の鍵を握るのはダブル司令塔だ。MF大島僚太(川崎F)とMF熊谷アンドリュー(横浜FM)のダブルボランチはU-19代表が目指しているポゼッションサッカーの体現者。世代トップレベルの技術を持つ2人の正確なパスが、U-19代表候補に主導権を握らせていた。

 ややつなぐことに固執しすぎていた感があり、縦へスピードアップする回数はわずか。大島も「つなごう、マイボールにする時間を長くしようという意識が強すぎた。失点してからようやくギアが入ったこともよくない」と反省していたが、それでもU-19代表は1タッチ、2タッチでボールを自在に動かす2人を中心に練習通りのポゼッションでボールを散らし、行き詰まれば逆サイドから攻めなおして圧力をかけていた。

 ともに声でチームを引っ張るタイプではなく、今合宿では吉田靖監督からそれぞれに「オマエがリーダーとして引っ張らないでどうするんだ」「チームの中心になってやれ」とゲキが飛んだほど期待が大きい2人だが、この日はプレーでその重要性を証明して見せた。バランスを取りながら、慌てずに、確実に攻撃を展開。ブレのないパスとフィジカルコンタクトの強さなど別格のパフォーマンスで攻撃の中心となった熊谷は「自分が出したいところに大島クンがいてくれるんで、大島クンがいることはでかいですね」と話し、大島も「アンドリューはつなぎで関わってくれるし、技術が高い。プレッシャーのかけ方とか悪いところは話し合いながらできた」と評した。昨年のU-20W杯アジア1次予選では大島の負傷によって公式戦でコンビが実現することはなかったが、現在のところは彼らがアジア最終予選の中心メンバーとなることは間違いなさそうだ。

 93年の早生まれである大島は昨年、ルーキーながらJ1で9試合に出場。若手らしからぬ落ち着きと、派手さはないが、難しいプレーを難なくしてしまう玄人の巧さがある。技巧派軍団・静岡学園高出身で高校時代は個人技を活かしたドリブルとスルーパスで局面を何度も打開していただけに「フロンターレでも『もっと攻撃を』と言われています。静学のときは抜けると思ったら、抜いていたけれど、今いるポジションのことを考えています。でももっとやらなければいけない」。今後は捌き役だけでなくよりチャンスメーカーとしての色を出していくつもりだ。

 またスリランカ出身の父を持つ181cmの大型ボランチ・熊谷は「きょうは良かったですね」と振り返ったように好調だったこの日、プレッシャーのかかる高い位置でも確実にボールを止めてボールを守り続けてみせる。「前半は良かったんですけど、後半の頭は相手のFWのところでためられて自分達のところで挟めなくてカウンター気味に結構やられていたのでそこが課題」と指摘していたものの、自身のプレーとしては全くボールを失わず、明らかに目立つ存在だった。

 指揮官が「ゲームである程度2人の関係は良かった」と及第点を与えた2人。技術とスペース感覚も高い彼らがより良いポジションを取ることが、より多くのパスの選択肢をつくることにつながる。相手の守備に狙いを定めさせなければ、例えブロックをつくられてももっと主導権を握ることができる。今回の合宿ではポゼッションに何より時間を割いてきただけに、試合でも成果は表れていた。まだサイドでのダイレクトパスや前線へのサポートの少なさなど課題はあったものの、Jクラブ相手に自分達のサッカーを貫いた。大島は「3日間の集大成となる試合なのでチームとしてやりたいと思っていた。チームのコンセプトをみんな理解できていると感じた」。決定機こそわずかであったが、自分達がどう戦うのかを示す90分間。U-19代表のダブル司令塔が中核となってアジアのライバルをポゼッションで飲み込む。

(取材・文 吉田太郎)

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