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MVP・寿人が手にしたもう一つの“勲章”

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 最優秀選手賞(MVP)、得点王、ベストイレブン、フェアプレー個人賞という史上初の“4冠”を達成したサンフレッチェ広島のFW佐藤寿人にとって、MVPにも引けを取らないもう一つの“勲章”が5年ぶり2度目の受賞となったフェアプレー個人賞だ。

 フェアプレー個人賞とは、J1全34試合に出場し、警告・退場処分を受けなかった選手を対象に与えられる栄誉だが、実に寿人は09年10月25日の第30節・川崎F戦でイエローカードを受けて以降、今季最終節の神戸戦まで98試合連続で警告・退場処分を受けていない。

 昨季はインフルエンザのため、仙台との開幕戦を欠場したが、残り33試合にはすべて出場し、カードはなかった。つまり、もしも開幕戦に出場し、警告・退場がなければ、昨季もフェアプレー個人賞を受賞していたはずだった。

 寿人自身、フェアプレー個人賞について「シーズン前から意識していた賞」と認める。「去年は開幕戦をインフルエンザで欠場して取れなかった」と、本人にとっても悔やまれる記憶だった。だからこそ2年越しの受賞に喜びもひとしおだった。

「FWをやっている以上、DFのハードなマークを受ける。ストレスも感じるし、イラつく感情が表に出ることはある。でも、僕はDFの選手をリスペクトしているし、サッカーに傷つける行為はいらない。お互いに持っているものをフェアに出さないと、見ている人も楽しめない」

 自分自身のサッカー哲学とも言える想いを語る寿人。フェアプレー個人賞の受賞スピーチでは「僕の2人の息子もサッカーをしています。息子はもちろん、多くのサッカー少年がフェアプレー精神を持ってプレーするように、トップレベルから伝えていきたい」と語り、場内から割れんばかりの拍手を浴びた。

「神戸戦の前に97試合というのは聞いていた」。100試合連続ノーカードまで、あと2試合。順調にいけば来シーズンの第2節が節目のゲームとなる。MVP、得点王に輝いた選手がフェアプレー個人賞を受賞したのは史上初。子供たちの模範となる寿人がMVPを受賞したことは、Jリーグ全体にとっても意義深いものだった。

(取材・文 西山紘平)

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