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オフサイドの「意図的なプレー」新基準…Jリーグは9月から適用開始へ

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 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は23日、報道陣向けのレフェリーブリーフィングをオンラインで行い、今年7月末に国際サッカー評議会(IFAB)から示されたオフサイドの新ガイドラインについて説明した。

 新ガイドラインで示されたのは、競技規則の「オフサイドポジションにいる競技者は、相手競技者が意図的にプレーしたボールを受けたとき、意図的なハンドの反則を行った場合も含め、利益を得ているとはみなされない」という文言における、「意図的にプレーした」という部分の定義変更。守備側にとって不利な基準となっていたものが、やや揺り戻されたような形だ。

 サッカー競技では2013年夏以降、オフサイドポジションにいる攻撃側の選手であっても、守備側が「意図的にプレーした」後にボールを受ければオフサイドにあたらないというルールが敷かれてきた。この規則によりオフサイドポジションでの駆け引きがさらに高度化したが、ディフェンダーにとってはきわめて守りにくい事象がたびたび起きてきた。

 中でも大きな物議を醸したのが2021年10月10日に行われたUEFAネーションズリーグ決勝のスペイン対フランス戦。後半35分に決まったFWキリアン・ムバッペのゴールが決勝点となったが、DFテオ・エルナンデスがスルーパスを出した時点でムバッペはオフサイドポジションにいたにもかかわらず、ぎりぎりでクリアを試みたDFエリック・ガルシアのボールタッチが「意図的なプレー」と判断され、オフサイドにあたらなかったのだ。

 この事例は世界中で大きな議論を呼び、サッカーのルールを定めるIFABも国際サッカー連盟(FIFA)との協議をスタート。「意図的なプレー」と「ディフレクション」(ボールが競技者に当たって方向が変わる=意図的なプレーではない)の違いを明確にしようと試みた。それが今回のガイドライン変更の中身である。

 意図的なプレーとは、ボールを競技者のコントロール下にある中で「パスする」「保持する」「クリアする」行為を念頭に置いたもの。今回のガイドラインでは以下のような基準が設定されている。(なお、パスやクリアのコントロールがうまくいかなかったり、ミスをしたとしても「意図的にプレーした」という事実が変わることはない)

①ボールが長く移動したので、競技者はボールをはっきりと見えた。
②ボールが速く動いていなかった。
③ボールが動いた方向が予想外ではなかった。
④競技者が体の動きを整える時間があった。つまり反射的に体を伸ばしたり、ジャンプせざるをえなかったということでもなく、または、かろうじてボールに触れたりコントロールできたということではなかった。
⑤グランド上を動いているボールは、空中にあるボールに比べてプレーすることが容易である。

 ①〜③の基準はこれまでも考慮されていたもので、④〜⑤は新たにつくられたもの。その中で①〜④を全て満たした場合にのみ「意図的にプレーした」と言える。また基準⑤はあくまでも考慮すべき点。ボールの移動、速さ、動きの方向という状況に加えて、ボールがグラウンド上にあったのか、空中にあったのかも、「意図的にプレーした」かどうかを判断するための基準になることが示されている。

 JFAは今季の開幕前に公開した「2022レフェリングスタンダード」の動画において、昨季の東京ヴェルディ対京都サンガF.C.戦の前半37分の事例を紹介し、京都DF荻原拓也に「意図的なプレー」があったとして、東京Vの攻撃はオフサイドにはあたらないとしていた。だが、今回のガイドライン変更により、荻原は「かろうじてボールに触っている状況」だとして、今後このプレーはオフサイドになると新たに結論づけられた。

 今回のガイドライン変更は競技規則自体の改正ではなく、定義の明確化にとどまるため、国際的には施行日は設定されず即時適用が原則。実際に、今夏開幕を迎えた欧州各国リーグをはじめ、現在東地区のノックアウトステージが行われているAFCチャンピオンズリーグにもすでに適用されている。

 一方、シーズン途中のJリーグでは9月からの適用となる。JFAは「競技およびプレーの結果に影響を及ぼす内容であるため、競技者および審判員、そして協議に関わる人々が理解した上で『プレーする、レフェリングする、競技を支える/観る』ことが必要である」と説明。すでに日本代表チーム、Jクラブ運営担当、現役審判員、インストラクターへの説明会を行っており、慎重に準備を進めているようだ。

(取材・文 竹内達也)
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