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西村拓真への“危険タックル”…JFA審判委の見解は「一発退場」VARのコミュニケーションに課題

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負傷交代した横浜F・マリノスFW西村拓真

 日本サッカー協会(JFA)審判委員会は7日、オンラインでレフェリーブリーフィングを行い、9月10日に行われたJ1第29節の横浜F・マリノスアビスパ福岡で起きた危険なプレーについて説明した。

 この試合では前半6分、横浜FMのFW西村拓真が敵陣左サイドでボールに絡んだ際、やや遅れてアプローチした福岡DF奈良竜樹と交錯。奈良の右足が西村の左足首を踏みつけるような形となり、西村は左足首を大きくひねった。プレーはアドバンテージで流され、西村はその後もプレーを続行したものの、前半20分過ぎに途中交代。後日、横浜FMから左足関節外側靱帯損傷という診断結果が発表された。

 Jリーグレフェリーデベロプメントマネージャーの東城穣氏は、この事例について「著しく不正なプレーによる一発退場」が適切な判定だったという審判委員会の見解を示した。ブリーフィングでは以下の考慮事項が列挙された。

・相手競技者の側面、1〜2mからアプローチ
・スタンディングでのチャレンジ
・膝が伸びきっている
・足裏がくるぶしの上付近に接触
・接触した足は地面についており、力が逃げない
・全体重が相手競技者にかかっている
・足首が極度に曲がってしまっている
・やや遅れたタイミングで、ボールに触れられていない
・強度は高い

 もっともこの場面では奈良のタックルは遅れ気味に入っていたため、ピッチ上の審判員としては「見極めが非常に難しい事象」と東城氏。「先のプレーを追ってしまうので、後の接触の部分は見極めが薄くなってしまう」といい、この場面でも「アドバンテージだったのでファウルの認識はあったが、足裏が入っている見極めはできていなかった」と明かした。

 一方、大きな課題が残ったのはVARとのコミュニケーションだ。ブリーフィングでは映像と音声が公開されたが、VARの「どのように見ましたか?」という問い掛けに対し、主審は選手とのコミュニケーション中で答えられず、そのままプレーが再開。そこでようやく「(足の)裏はいっていないと見ている」という情報が主審から入り、映像との相違が明らかになっていた。

 東城氏は「マリノスの選手が大怪我をしてしまった事象」と重く見た上で「課題の一つはコミュニケーション」と指摘。「VARが『どう見ましたか?』とは言っていたが、その後に『(主審は)足裏が入っていない』と言っているのであれば、『事実とは違う』というところまで踏み込んで次のステップに行くべきだった。プレッシャーの中、短い時間でチェックしているということはもちろん理解はしているが、このシーンに関してはレッドカードの可能性があるとしてオンフィールドレビューを勧めるべき事象だった」と総括した。

 こうした問題が起きる背景には、日本式のVAR運用の影響が大いにありそうだ。

 VARのプロトコルでは通常、ピッチ上の審判員に「明白かつはっきりとした誤り」があった場合、VAR側から主審に助言が行われることになっており、欧州などでもそのような運用になっている。一方、日本では前倒し導入の混乱を避けるためか、VAR側からまず主審の見解を問うやり取りが一般的となっている。

 今回の場面でも、VARは主審に対して「どのように見ましたか?」と尋ねている。だが、もし国際的な運用どおりに「足裏が足首に入っている。一発退場ではないか」という主旨のストレートな助言が行われていれば、そもそも今回のようなコミュニケーション上のミスは起こらなかった可能性が高い。

 東城氏はそうした運用について「『どう見たの?』と聞くことで、サポートできる状況もあるので一概にダメとは言えない」としながらも、「ただ、今回のケースは現場で見えているものと映っている事実が違う。そこを強く言うべきで、だからオンフィールドレビューを勧めなければならなかった」と振り返った。

 また「われわれが現役だった時、最初に教えられた時には『まずはレフェリーがどう見たかを聞きなさい』という教えがあった。そこから『じゃあ次のステップどうなの?』と考えることになっていたが、明らかに(判定が)違うものであれば、こういう事実があると伝えることが必要だと考えている」と見解を語った。

(取材・文 竹内達也)
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