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「黒田監督がいなかったら今の自分はない」恩師に挑んだ群馬MF天笠泰輝、試合後にかけられた言葉

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ザスパクサツ群馬MF天笠泰輝

[2.26 J2第2節 町田 2-0 群馬 Gスタ]

 ザスパクサツ群馬MF天笠泰輝は今季初先発の一戦を、かつて共に全国制覇を成し遂げた恩師の前で迎える形となった。90分間フル出場を果たし、試合後には温かいメッセージも受け取ったという22歳は「普通のクラブの試合とは少し違う感情があった」と振り返りながらも、「J2リーグ42試合、毎試合勝たないといけないので、毎試合勝つという気持ちで臨んでいる。黒田さん率いる町田に負けていまはめちゃくちゃ悔しい」と唇を噛んだ。

 対戦相手のFC町田ゼルビアのベンチには元青森山田高監督の黒田剛氏。同校で2018年に全国高校サッカー選手権制覇を成し遂げた天笠にとって「恩師」にあたる間柄だ。黒田氏が29年間率いた高校サッカー指導者の役職を離れ、Jリーグの舞台に乗り込んだことでピッチでの再会が実現した。

 天笠は高校卒業後に一度大学に入学しながら、退学してプロの道を選んだ身。単に高校時代に師事していたというだけでなく、当時の進路相談にも乗ってもらっていたという。「僕が大学を辞めた時も黒田監督に会いに行ったり、連絡をしていた。あの人がいなかったら今の自分はないので感謝しているし、感謝してもしきれない」。だからこそ元気な姿でアピールしたいという思いはひとしおだった。

 町田の戦術はコンパクトな守備ブロックを徹底し、カウンターやセットプレーで得点機を狙うという高校時代を彷彿とさせるもの。しっかり準備はできていた。「めちゃくちゃプレス来るのが分かっていたので、一回ボールを当てて、中に集結させて、サイドにつけるというのが解決策として一番いいのかなと」。その言葉どおり、相手に寄せられる前にボールをつなぎ、適度な距離感で引きつける動きも遂行。プレスを回避しながらのビルドアップに大きく貢献していた。

 ところがその奮闘は報われず、恩師のお家芸と言えるセットプレーから2失点し、0-2で敗戦。「何事も徹底するサッカーなので、攻撃も守備もある程度はわかっていたけど、町田さんのクオリティーが高く苦戦する部分があった。群馬もサッカーができたと思うけど、できたのに負けたのが悔しい」と悔しさを突きつけられる結果となった。

 それでも試合後、黒田監督から天笠には「ボールロストも少ないし、プレーも良かった」という称賛の言葉が送られたという。

 天笠は「僕自身はボールロストが多いと感じていたし、僕自身のプレーには納得がいっていないので悔しい」としつつ、「でも褒められたのは嬉しかった」と照れ笑いも。そして「この世界でしっかり結果を残すことが監督への恩返しだと思っているので、そこはまた意識してやっていきたい」と新たなモチベーションを芽生えさせていた。

 群馬を率いる大槻毅監督も試合後、天笠について「コンディションやボールフィーリングが良くて、オフの間にすごく頭を整理してシーズンを迎えている走行距離も非常に長く、強度もあるので非常に楽しみにしている選手。もう少し経験を積んだり、落ち着きが出てきたらミドルサードですごくよくなる選手」と期待を隠さなかった。

 その一方で「もっと前にボールを運んだり、自分自身が前に行く能力があるはず」「また良さは前に出て足を振るところなので、最後にカットインしたシーンで足を振ると思っていたが、振らなかったのでもっと自信を持って欲しい」と要求していた。その課題は天笠も自覚済み。「僕の気持ちの弱さが出たのでまだまだ。もっと強い気持ちを持ってやっていかないといけない」。そう胸に刻んだ22歳は「僕にしかできないプレーもあると思うので、自分にしかできない選手になっていけたら」と将来図を描いていた。

(取材・文 竹内達也)
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