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「もがき苦しみ、不安な時間も続いた」町田・黒田剛監督がJリーグで初勝利! “教え子”との初対決には感慨も

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FC町田ゼルビア黒田剛監督

[2.26 J2第2節 町田 2-0 群馬 Gスタ]

 FC町田ゼルビアザスパクサツ群馬を2-0で下し、黒田剛監督が開幕2試合目にしてJリーグ初勝利を飾った。スコアレスドローだった開幕節に続く無失点に持ち込んだだけでなく、この日はセットプレー2発で複数得点も記録。昨季まで率いた青森山田高を彷彿とさせるような“したたかさ”は、プロの舞台でもしっかりと健在だった。

 試合後、記者会見に出席した黒田監督は率直に感情を表現した。

「サポーターに守られて、われわれがサッカーをやる場を提供してもらっていることをすごく重く感じているし、全部が僅差なので、このようなゲームがあと40試合あると思うと『気が遠くなるな、もっと減らしてほしいな』という感じがある。またこの1勝がいつ来るかという気持ちがあった中、私も初めてなので嬉しかった。選手たちにはポジティブな形で、次の試合、また次の試合とトレーニングしていきたいので、勝つことが一番いい材料。そこがすごく良かったと思う」

 0-0の引き分けに終わった開幕節・仙台戦の終了後も、クリーンシートだった守備には手応えを語っていた指揮官。「勝つイコール守れること」というモットーどおりの船出に自信さえにじんでいるように思われた。それでも実は、指揮官が感じていたのは高校サッカーチームを率いていた頃とは異なる重圧。表現を変えれば、地域の象徴と言える存在を背負っていることの重みだった。

「高校サッカーもJリーグも一つの思いを背負ってやることに違いはないと思うが、クラブや組織がチームが勝つことによって活性化していったり、いろんな人たちを笑顔にしたり、地域のファン・サポーターを笑顔にしたりすることもわれわれの一つの役目だと思っている。それができた週というのは応援してくれている人たちみんなが幸せに感じる1週間でしょうし、負けた時は暗くなるでしょうし。そういったことを背負って、われわれも選手も戦うことになるので、ちょっと選手権とは違った重圧はかかると感じている」

 さらに指揮官は「前回の引き分けからこの1週間、『本当に次は勝てるのかどうか』ともがき苦しみ、不安な時間も続いた」ことも明かした。

 もっともその悩みは全て、この一戦に向けた準備に注がれたのであろう。FWエリキとMF高橋大悟のスタートポジションを入れ替えた選手起用も、外国籍選手のプレス意識を踏まえた試合途中の修正も、セットプレーへの準備もすべて結実した上でつかんだ勝利に「この1勝は自分にとってもすごくありがたい1勝になった」と喜びを語った。

 また黒田監督にとって、この一戦はもう一つ大きな意味があった。対戦相手の群馬ではGK櫛引政敏、MF天笠泰輝という青森山田高出身の2選手が先発出場。Jクラブの監督になって以降、教え子たちと公式戦で対戦するのは初めての経験で、「昨年までは教え子の活躍をテレビで応援している側だったけど、それが対戦相手となるのは運命的なものもあるし、感慨深いものもある」と心境を明かした。

 それでもすぐに表情を引き締め、前を見据えていた。「ただ、これから40試合やっていく中で、教え子もたくさんいるので、嬉しい反面、負けたくない気持ちがあるし、複雑な心境ではある。それでもこうして卒業生たちに各会場で会って、いろんな話ができることがすごく嬉しい。私としてはポジティブに捉えながら、1年間通じてそういう選手たちといろんな会話をしたり、グラウンドで戦っている姿をピッチ上で見られたり、ありがたい時間をいただいているとポジティブに考えて対戦していきたいです」。

(取材・文 竹内達也)
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