[5.31 J1第11節延期分 浦和 2-1 広島 埼玉]

　1点を追う後半27分だった。浦和レッズは途中出場のMF大久保智明が右サイドで受けてタメをつくり、この間にDF酒井宏樹がPA内に侵入。最後はMF伊藤敦樹のスルーパスに抜け出した酒井が角度のないところから右足でシュートを決めた。

　試合を振り出しに戻す貴重な同点弾。「トモ(大久保智明)と(伊藤)敦樹とトライアングルで良いコンビネーションができた。トモが持った時に敦樹から僕に出てくるというイメージができたので、できるだけ相手を引きつけてオフサイドにならないことだけ考えた」

　狙い通りだったと自画自賛する形からゴールを決めた酒井は、ペットボトルを鷲づかみにして給水しながら高速ランで右SBの守備位置へ帰還。ゴールを決めた余韻に浸るでもなく、すぐに次のプレーへ向かっていった。

　その気概が勝ち越しゴールにつながったのは試合終了間際。右サイドの酒井は逆サイドのFWブライアン・リンセンに浮き球のパスを出し、折り返しを伊藤が決めて2-1とした。「あれの方がサイドバックっぽい仕事だと思う。みんなが慎三さんに釣られる中でブライアンがフリーになっていくのが見えた。うまく折り返してくれて、敦樹がうまく決めてくれた」とうれしそうに振り返った。

　浦和の逆転勝利は今季リーグ4試合目。酒井はそのうちの2試合で0-1から1-1に追いつく同点ゴールを決めている。

「このスタジアムでは1-1になれば何かが起きると思うし、逆にそういう雰囲気や結果を僕らがもたらすことができれば、サポーターもまた勝つんじゃないかとさらにパワーをくれると思う」。ここぞの場面で勝ち点に直結するプレーを出せる実力派は、そう言って相好を崩した。

　これで浦和は1試合未消化ながら暫定4位に浮上した。ハイプレスがはまらなかった広島戦の前半に象徴されるように、うまくいかない試合は決して少なくないが、それでも勝ち点3を手にできていることは大きい。

「強いチームなら2-0、3-0で勝つんですけどね。前半1-0で後半1点追加して2-0とか」と語るように、求めている強さには到達していないと考えている酒井だが、「試合巧者ではないと思うけど、でも勝ちきれるということは手強いチームになっていると思う」と上昇ステップを踏んでいる手応えは十分。浦和がしっかりと上位争いに参入し始めた。

(取材・文　矢内由美子)

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