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神戸MF齊藤未月、決定機で生じた“迷い”「アンドレスを探してしまった」バルセロナと日本サッカーの違いも分析

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MF齊藤未月

[6.6 国際親善試合 神戸 0-2 バルセロナ 国立]

 ラ・リーガ王者バルセロナとの親善試合、前半19分までに0-2とリードされたヴィッセル神戸はしばらくボールを持たれるまま何もできず、一時スタジアムからは緩んだ空気感すら漂い始めていた。

 しかし、それを打ち破ったのがインサイドハーフで先発出場したMF齊藤未月だった。無謀にも思えるようなハイプレッシングでチームのスイッチを入れると、すぐにボールを奪えるわけではなかったが、徐々に試合がオープンな展開に移行。次第にMFアンドレス・イニエスタが攻撃に絡み始め、次々とシュートシーンが生まれるようになっていった。

 試合中にムードが落ち着くのは親善試合にありがちな光景。しかし、日本滞在24時間という強行日程で来日したバルセロナのコンディションはさておき、なかなか世界のトップレベルと対峙する機会を得られないJクラブの一員という立場、そして何より見に来てくれたサポーターのことを考えると、決して望んだ展開ではなかった。

 だからこそ齊藤はあえて動いた。

「相手がボールを持っている時間が長くなればなるほどあまり面白くないので。こっちにはアンドレス(・イニエスタ)もセルジ(・サンペール)もいるし。だったら(前からプレスに)行って、相手に攻めさせて、こっちのゴールキックになるくらいがちょうどいいかなという感覚だった。相手も守備の強度を高く来るわけでもないから、こっちがボールを持って攻撃をやり切るほうが見ている人も楽しいし、やっているこっちも実になるかなと思った。ある意味、ゴールまで運ばれる前提でも行って、こっちのボールに早くしたほうがいいかなと思った」

 そんな齊藤にも前半43分、大きな見せ場が訪れた。右サイドでFWリンコンが抜け出し、カウンターのチャンスを作ると、齊藤がピッチ中央からゴール前に猛烈なスプリントを開始。バルセロナの選手たちを一気に抜き去り、フリーで折り返しのパスを受け、ゴール前でシュートチャンスを迎えた。

 だが、ここで齊藤に迷いが生じた。脳裏をよぎったのはこの日の主役だったMFアンドレス・イニエスタの存在。直前には惜しいミドルシュートでスタンドを大きく沸かせており、ファン・サポーターも彼のゴールを見たいと感じていたのは明らかで、親善試合に花を添えようという配慮が出てきた。

 だからこそ、齊藤は「アンドレスを探してしまった」。

 ところが右からのパスを受けた瞬間、イニエスタの走り込みを期待して後方を振り返ったものの、イニエスタはスプリントすらしておらずに遥か後方。その間に相手の戻りが間に合ってしまい、シュートコースは消滅し、MF汰木康也へのラストパスで二次的なチャンスにはつなげたものの、得点には至らなかった。

「そういうところですよね。探さないで自分で行けって思うけど、ちょっと声がしちゃって探しちゃいました」

 自身のプレー選択に苦笑いを浮かべた齊藤は「(イニエスタが)雰囲気的にも決めそうだったので。でも俺がダメでした」とスプリントしていなかったイニエスタではなく、自身に責任の矢印を向けつつ、「シュートを振ればよかったなと思っています」とはっきり述べた。

 もっとも、この日の齊藤にとってはそうした攻撃参加の姿勢自体を見せられたことが一つの手応えとなっていた。

「最近アンカーでプレーする機会が多くて、今日は一つ前でプレーしたけど、前でプレーすればゴールに近づく可能性が高くなるなと。ゴールに絡んでいかないといけない、絡んでいけそうな雰囲気があるので、ゴールに近づけるシーンがプレースタイル的にも増えたらいい。そういう意味でバルサの試合はたまにチェックしたりしているし、勉強になることばかりです」

 この日のバルセロナはMFフランク・ケシエが2列目からの飛び出しで先制ゴールを奪っており、また普段のラ・リーガの試合でも中盤のMFガビやMFペドリが得点源として君臨。そうしたプレービジョンが齊藤の糧になっているようだ。

 またバルセロナはこの日、移動疲れの中でも的確な技術に裏打ちされたパスワークを見せており、パフォーマンス面でも刺激になった様子。齊藤はバルセロナとJリーグのサッカー観の違いを次のように分析した。

「正しいことを正しくプレーして、それを簡単にこなしているように見せられるのが彼らだと思う。日本人選手のようにボールを持ったらすぐはたいてしまうのがいいプレーなわけではなくて、ボールをあえて長く持って、人が来ていないならしっかり運んで、それでもダメだったらやり直せばいいだけ、人が強く来ればワンツーで剥がすという考え方も持っている。それを簡単に正しくポジションを取ってやれているのが彼らだし、それが浸透していないのが日本だと思う」

 相手をうまく動かしながら攻撃を組み立てるバルセロナの選手たちとの違いに、日本サッカーの課題を見出した齊藤。それでも最後は「でも日本のスピード感は良さだと思うし、個人としてそういうところを奪い取ってやれればと思う」と続け、まずは自らが学ぶ姿勢を強調していた。

(取材・文 竹内達也)
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