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Jリーグのシーズン移行、全4回の監督会議で出た意見は…「夏場の試合はなくすべき」「リーグの補助が必要ではないか」

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 Jリーグは29日、理事会後の記者会見を行い、今月オンラインで行われたシーズン移行に関する監督会議のフィードバックを公開した。監督会議は全4回の会議が設定され、合わせて57クラブの監督が出席。そのうち33クラブの監督が発言を行い、活発な議論の内容が匿名で明かされている。

 Jリーグでは現在、春秋制から秋春制への移行に関する議論が進行中。現状のスケジュール案では最速で2026-27シーズンから「2月開幕12月閉幕」から「8月開幕6月閉幕」への変更が想定されている。この変更によって夏場の試合開催期間を減らしつつ、欧州中心のサッカースケジュールに合わせられるメリットがある一方、降雪地帯への影響や過密日程などのデメリットが生じることが懸念されている。

 各監督から最も多くのフィードバックがあったのは夏場の試合について。大半がシーズン制移行にかかわらず、夏場の試合を避けることに賛成しており、ある監督は「夏場の試合がサッカーのレベルアップにとって良くないことであるのは間違いないと感じている。逆に3年後まで待たなければならないのか、が個人としての意見である」と早期改革を主張した。

 同監督は「サッカーに限った話ではないが、この暑さの中でスポーツをやるという文化は無くすべきであり、シーズン移行をする、しないに関わらず、Jリーグが先導し、夏場の試合は来年にも失くすべきだと考える」とし、「死人が出てしまってから考えるというこれまでのやり方ではなく、早くに取り組んでほしい」「トップはナイトゲームが出来るが、子供たちやユースは大会などで昼間に試合をしており、その文化を変えていく動きを、先んじて取り組んでもらいたい」と訴えている。

 またJリーグは現状、8月上旬開幕を想定したスケジュール案を出しているが、別の監督からは「夏場の試合でのインテンシティ低下は自チームデータでも確認済である。一方で一番暑い8月開幕のため少し厳しいと感じた」、「ハイインテンシティのデータから移行するのであれば8月の試合開催は避けた方がいいと思われる。6月中旬くらいまでをシーズンとし、8月はやらないくらいの方がいいのではないか。日本全国どこも暑いが、当地域はさらに暑く、ナイターでも相当暑いのが現実である」という声が上がるなど、さらに開幕を遅らせるべきだという主張もあった。

 一方、夏場の試合開催期間を短くした場合、さらに多くの過密日程が生じる懸念もある。ある監督からは「オフシーズンが(ウィンターブレークを含むと)4か月ある中で、カップ戦や代表戦も含めた全試合日程を本当にこなせるのかといった疑問はある」という疑問の声が上がった。

 また別の監督からは「シーズン移行することで過密日程になるのではないか懸念している。したがって、仮にシーズン移行をするのであれば、もう少しウィンターブレークを短くして、リーグの日程に余裕を持たせることはできないか。それにより、夏場の過密日程を回避が実現できるのではないか」という具体的な提言も上がった。

 もっとも、ウインターブレイクを短くした場合、降雪地域への影響は避けられない。「ブレーク期間が長くなりすぎ、チームが変わりすぎる、作り直す難しさが出るのではないかと心配する」と中断期間の長期化に懸念を示したある監督からも「当クラブには地域的に大きな問題はないが、シーズン移行を行う上では降雪地域のクラブが不利にならないようにすることが重要だと考える」という意見が出た。

 降雪地域のクラブを指揮する監督は「サッカーの観点だけを見れば、非常に有益なプロジェクトだと思われる」「なるべく早いタイミングでシーズン移行を実現出来ればと思う」という前向きな意見を述べた一方、「(降雪地帯による)問題点は必ず出てくる」とも強調。「温暖化がどんどん進んでいくなかで、当地域は涼しいと思われているかもしれないが、連日40度近く、38度近くと非常に暑い日が続いている。そういった状況の中で、どのように身体を作っていくのかなどもまだ見えていない」とシーズン移行後のコンディション調整の難しさも語った。

 Jリーグに対し降雪地域への配慮を求める声も複数の監督から上がった。ある監督からは「降雪時期にシーズンをおこなうのであれば、寒冷対策の整備とリーグの補助が必要ではないか。降雪地域クラブでの経験から降雪地域のクラブは練習環境の確保が必要ではないか。問題は試合でなく、練習環境である。試合の場合、除雪すれば問題ないが、練習の場合、除雪が可能であれば問題ないが、降雪による練習場の環境整備や練習場までのアクセスなど、どのようにリーグがサポートして、練習環境を確保できるか」と具体的な提言が出た。

 降雪地域に関しては「キャンプに逃げるのではなく、降雪地域のクラブも冬場にサッカーができる環境を作るのが理想」という将来を見据えた意見もあり、これにはJリーグ側も応答。Jリーグ側は「お金は非常に掛かる。また箱を作ったとしても、雪が降る期間は天然芝でのプレーは難しい」とした上で、「ウィンターブレークを1週間、1週間、前倒して試合が出来るようになるためにも、練習環境としての設備を整えられればと考えている。一つ作るのに億単位・10億単位の費用が掛かる見込みである。Jリーグとしてお金を投資してでもやるべきことだと考えている」と支援に前向きな見通しを示したという。

 そのほかには、シーズン移行で欧州のサッカースケジュールと一致することで、選手の移籍面のメリットに着目する声も。「現在はJリーグのシーズン中に欧州が移籍期間に入ることにより、 Jリーグのシーズン途中で選手が欧州へ移籍する環境になっている。自分のチームでも数人移籍してしまったが、それは下のカテゴリーまで連鎖していくのではないか。それにより各クラブ予算が制限される中で当初の戦力を維持することが難しいのではないか。また長い目で見たとき、優秀な選手が海外に移籍してしまうことでJリーグから優秀な選手がいなくなるのではないか」と現状のスケジュールへの危機感が語られている。

 欧州のサッカースケジュールと一致するメリットがある一方、「シーズン移行に伴い、学校教育との併用の工夫が必要ではないか。その問題の改善案などあれば教えていただきたい」」日本のスクールカレンダーとの不一致を懸念する声も。これに対してJリーグ側は「移籍ウィンドウが2回と決まっているため、この移籍ウィンドウでしか選手を獲得できないということに変更はない。学校からクラブに加入する選手のタイミングに 2点問題がある。1点目は、大学3年生や高校2年生の夏に加入した場合、所属していた大学・高校に迷惑がかかってしまう恐れがある。もう1点は、大学4年生や高校 3年生で加入した場合、選手が 8月まで公式戦に出場することができない。これらの解決には特別な契約制度の整備などが必要ではないか」と答えている。

 Jリーグは今年中をめどにシーズン移行に向けた可否の結論を出す予定となっている。

(取材・文 竹内達也)
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竹内達也
Text by 竹内達也

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