論点明確化で進むJシーズン移行議論…野々村チェアマンは雪国のインフラ整備に意欲「サッカーはきっかけになり得る存在」
Jリーグは30日、理事会後に記者会見を行い、シーズン制移行に関する討論資料を新たに発表した。今回は秋春制への移行を検討するにあたって、今後の土台となるメリット・デメリットが整理されている。
Jリーグは今年4月下旬、秋春制へのシーズン移行を検討していると発表。スケジュール案などを提示した上で、年内に正式な理事会決議を取るという見通しを示した。今回は4月下旬に続いて2度目の資料公開となった。
Jリーグによるとシーズン移行に伴うメリットは以下の6項目。それぞれに象徴的な問題を筆者側で追記している。
▼暑い中(6月〜9月)での試合数の減少
Jリーグが4月に公開した資料によると、移行後に想定されるシーズンオフは「5月最終週〜6月1週ごろ」から「7月最終週〜8月1週ごろ」。選手に負担の大きい6月〜7月の試合数は少なくなり、プレーのクオリティー向上も期待できる。
▼シーズン中の「チーム編成変動」の回避
現在は欧州とシーズン制が異なるため、中心選手の欧州移籍がJリーグのシーズン途中になるケースが多い。シーズン移行することでシーズン途中のチーム編成負担が減少する。
▼移籍関連
欧州クラブが選手の獲得を進める際には、シーズンオフに多くの予算を投じるため、欧州シーズンに合わせることで移籍金の獲得が促進される。また選手の契約期間も欧州シーズンに揃えることができる。
▼ACLシーズンとの一致
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)は今年の夏から秋春制以降が決まっている。シーズン制移行により、ACLがJリーグのシーズンをまたぐことがなくなる。
▼試合日程関連
梅雨、台風頻発期を避けられることで日程上のメリットが生じる可能性がある。
▼その他シーズン移行がもたらす事項
一方でJリーグが示したデメリットは以下の6項目。こちらもそれぞれに象徴的な問題を筆者で追記ている。
▼寒い中での試合数の増加
Jリーグが4月に公開した資料によると、移行後に想定されるウインターブレイクは「12月3〜4週ごろ」から「2月1〜2週ごろ」まで。これまで試合のなかった12月中旬、2月上旬の試合数が増えることから、観戦環境への影響が考えられる。
▼降雪地域の対応
これまでのシーズン制でも降雪地域の十数クラブが長期キャンプやアウェー連戦を強いられていた。寒冷期の試合開催が広がることで、一部クラブがさらに対応を強いられる。
▼移籍関連
欧州クラブと選手の契約期間が異なることにより、移籍金を獲得できていた事例も多くあった。シーズン制が一致することで、0円移籍につながる懸念もある。またJリーグとの関係性が深いブラジルとのシーズン時期がずれてしまう。
▼試合開催できる期間が短縮
これまでは12月上旬から2月中旬までがシーズンオフで、夏に2週間程度のサマーブレイクを設けていたが、移行案では6月上旬〜7月下旬のシーズンオフ、12月下旬〜2月上旬のウインターブレイクと中断期間がやや延びるため、選手の調整や過密日程、観戦環境への影響が考えられる。
▼ステークホルダーとの年度の異なり
シーズンを移行した場合、パートナー企業や学校などのカレンダーとシーズン開催時期がずれるため、広範な影響が考えられる。
▼移行期の対応
Jリーグは移行の最速のタイミングを北中米W杯後の2026-27シーズンと「仮置き」しているが、移行期は25シーズンの終了後に26年前半に0.5シーズンのリーグ戦を行うか、25年から26年前半にかけて1.5シーズンのリーグ戦を行うかの2案が検討されている。
Jリーグはこうしたメリット・デメリットを土台に今後、7月をめどに「必要な情報の収集・整理」を行い、9月をめどに「整理した情報を元にした方向性の議論」を進めていくという。
また野々村芳和チェアマンはこの日、シーズン移行の是非とはかかわらず、寒冷地のスポーツに関するインフラ環境を整備する必要性を訴えた。
「これはシーズン移行に関係なく、ずっと思っていることで、北海道で長く暮らしているのでよりそう思うのかもしれないが、北海道でサッカーをしたい子どもたちは12月も、1月も、2月も、3月もできない。東北もそうだし、雪国はみんなそうだと思う。10年前にそう思ったが、10年経っても変わっていない。日本はずっとそのままなのか。一昔前は世界をリードするような経済大国だったので、その日本だったらいろんなことができるんじゃないかと思っている。多くの地域に屋根があるグラウンドがいっぱいできるのは夢みたいな話だが、そこに向かっていく、スポーツができる環境を広げていくのはシーズン移行にかかわらず大事なこと。サッカーはそういうきっかけになり得る存在だと思う」
(取材・文 竹内達也)
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●2023シーズンJリーグ特集ページ
Jリーグは今年4月下旬、秋春制へのシーズン移行を検討していると発表。スケジュール案などを提示した上で、年内に正式な理事会決議を取るという見通しを示した。今回は4月下旬に続いて2度目の資料公開となった。
Jリーグによるとシーズン移行に伴うメリットは以下の6項目。それぞれに象徴的な問題を筆者側で追記している。
▼暑い中(6月〜9月)での試合数の減少
Jリーグが4月に公開した資料によると、移行後に想定されるシーズンオフは「5月最終週〜6月1週ごろ」から「7月最終週〜8月1週ごろ」。選手に負担の大きい6月〜7月の試合数は少なくなり、プレーのクオリティー向上も期待できる。
▼シーズン中の「チーム編成変動」の回避
現在は欧州とシーズン制が異なるため、中心選手の欧州移籍がJリーグのシーズン途中になるケースが多い。シーズン移行することでシーズン途中のチーム編成負担が減少する。
▼移籍関連
欧州クラブが選手の獲得を進める際には、シーズンオフに多くの予算を投じるため、欧州シーズンに合わせることで移籍金の獲得が促進される。また選手の契約期間も欧州シーズンに揃えることができる。
▼ACLシーズンとの一致
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)は今年の夏から秋春制以降が決まっている。シーズン制移行により、ACLがJリーグのシーズンをまたぐことがなくなる。
▼試合日程関連
梅雨、台風頻発期を避けられることで日程上のメリットが生じる可能性がある。
▼その他シーズン移行がもたらす事項
一方でJリーグが示したデメリットは以下の6項目。こちらもそれぞれに象徴的な問題を筆者で追記ている。
▼寒い中での試合数の増加
Jリーグが4月に公開した資料によると、移行後に想定されるウインターブレイクは「12月3〜4週ごろ」から「2月1〜2週ごろ」まで。これまで試合のなかった12月中旬、2月上旬の試合数が増えることから、観戦環境への影響が考えられる。
▼降雪地域の対応
これまでのシーズン制でも降雪地域の十数クラブが長期キャンプやアウェー連戦を強いられていた。寒冷期の試合開催が広がることで、一部クラブがさらに対応を強いられる。
▼移籍関連
欧州クラブと選手の契約期間が異なることにより、移籍金を獲得できていた事例も多くあった。シーズン制が一致することで、0円移籍につながる懸念もある。またJリーグとの関係性が深いブラジルとのシーズン時期がずれてしまう。
▼試合開催できる期間が短縮
これまでは12月上旬から2月中旬までがシーズンオフで、夏に2週間程度のサマーブレイクを設けていたが、移行案では6月上旬〜7月下旬のシーズンオフ、12月下旬〜2月上旬のウインターブレイクと中断期間がやや延びるため、選手の調整や過密日程、観戦環境への影響が考えられる。
▼ステークホルダーとの年度の異なり
シーズンを移行した場合、パートナー企業や学校などのカレンダーとシーズン開催時期がずれるため、広範な影響が考えられる。
▼移行期の対応
Jリーグは移行の最速のタイミングを北中米W杯後の2026-27シーズンと「仮置き」しているが、移行期は25シーズンの終了後に26年前半に0.5シーズンのリーグ戦を行うか、25年から26年前半にかけて1.5シーズンのリーグ戦を行うかの2案が検討されている。
Jリーグはこうしたメリット・デメリットを土台に今後、7月をめどに「必要な情報の収集・整理」を行い、9月をめどに「整理した情報を元にした方向性の議論」を進めていくという。
また野々村芳和チェアマンはこの日、シーズン移行の是非とはかかわらず、寒冷地のスポーツに関するインフラ環境を整備する必要性を訴えた。
「これはシーズン移行に関係なく、ずっと思っていることで、北海道で長く暮らしているのでよりそう思うのかもしれないが、北海道でサッカーをしたい子どもたちは12月も、1月も、2月も、3月もできない。東北もそうだし、雪国はみんなそうだと思う。10年前にそう思ったが、10年経っても変わっていない。日本はずっとそのままなのか。一昔前は世界をリードするような経済大国だったので、その日本だったらいろんなことができるんじゃないかと思っている。多くの地域に屋根があるグラウンドがいっぱいできるのは夢みたいな話だが、そこに向かっていく、スポーツができる環境を広げていくのはシーズン移行にかかわらず大事なこと。サッカーはそういうきっかけになり得る存在だと思う」
(取材・文 竹内達也)
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