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大卒3年目で初の開幕スタメン&連続無失点! 福岡DF井上聖也「まだ安泰な地位を築けているわけではない」

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アビスパ福岡DF井上聖也

[3.1 J1第2節 横浜FM 0-1 福岡 日産ス]

 大卒3年目を迎えたアビスパ福岡DF井上聖也が今季、開幕節から2試合連続でフル出場し、いまだ無失点が続く堅守を支えている。昨季のJ1リーグ戦出場は6試合にとどまった中、主にルヴァン杯を通じてアピールに成功。準々決勝の負傷で準々決勝・決勝のピッチに立つことはできなかったが、クラブ初タイトルに貢献した自信を新シーズンにつなげている。

 第2節の横浜FM戦では4-4-2と5-4-1の2段構えで守る布陣の右CBで先発し、FWエウベル、FWアンデルソン・ロペスといった昨季Jリーグベストイレブンとのマッチアップを優位に進めていた。

「攻撃陣は多彩かつ強力なのはわかっていたし、エウベル選手の動画はたくさん見た。それでも何度かやられたシーンがある。自分の中ではいい経験にしつつ、修正していかないとなと思う」

 そう謙虚に振り返る井上だが、対峙する回数を増やすたびに安定感は増すばかり。「両CBから背後に蹴って良いボールが来るので、それをさせないためにずっと首を振って意識していた。止めるというよりそういった場面を少なくすることが大切だと思っていた」という準備も実り、無失点に抑え込んだ。

 今年11月に25歳を迎える井上は兵庫県立西宮高、甲南大出身のCB。大学3年時には甲南大を過去最高となる関西学生リーグ3位、冬の全国大会(総理大臣杯とインカレの代替大会で行われた#atarimaeniCUP)ベスト8に導き、関西屈指のCBとして評価を高めた。しかし、プロ1年目はJ1リーグ戦出場機会がなく、昨季も6試合の出場にとどまっていた。

 大卒といえば即戦力。他のチームを見れば、初年度から出場時間を伸ばす選手も多くいる。それでも井上自身、その立場に焦ることはなかったという。

「僕は同世代とかはあまり気にしていなくて、結局サッカーは年齢も大事だけど、ピッチで何ができるかが大事だと思う。他の選手と比べずにできたのが良いことだったと思う。もしそこで他と比べてしまうと自分が見劣りしてしまうことにもなる。僕は自分に自信があるし、自分はできると思っているからこそ、自分によりフォーカスして、どうやったら試合に出られるのか、試合に出た時はどういうプレーをすればもっと使ってもらえるのか、それをより単純にすることに注力していた」

 出場時間が少ないことで「もちろん苦しい時期はあった」。それでもなお、自身の成長にフォーカスし続け、レベルアップを追求してきた自負があった。

「コーチであったり、監督であったり、いろんな人が支えてくれた。自分のプレーを修正しつつ、チャンスを与えられた時に掴むことができたことで今につながっている。しんどい時は確かにあったけど、逃げずにサッカーに向き合い続けたことが去年から少しずつ実を結んでいると思う」

 そんなブレない準備の姿勢が実ったターニングポイントは昨年6月25日のJ1第18節・神戸戦(●0-3)だった。前半35分過ぎ、DF三國ケネディエブスの負傷でチャンスが巡り、スクランブルで念願のJ1デビュー。「結果的には負けてしまったけど、守備のところでやれる部分があった」と手応えを得て、続くJ1リーグ戦2試合も途中出場でピッチに立った。

 また7月16日の第19節・湘南戦(◯1-0)では出場停止のDF奈良竜樹に代わってJ1初先発を果たし、今度は勝利に貢献。その後は2週間のサマーブレイクに入ったが、「1-0で勝ったことで自信を掴めたし、そこで中断に入れて整理して、中断明けからよりシンプルにリセットした状態でできたことがもう一つのターニングポイントになった」と巡ってきたチャンスを活かした。

 その後は主にカップ戦で高いパフォーマンスを発揮していたが、9月10日のルヴァン杯準々決勝第2戦・FC東京戦(◯2-0)で両前腕骨幹部骨折の重傷を負い、その後は公式戦出場はなし。それでも今季に入って開幕2試合連続の先発出場という現状は、昨季中盤戦のパフォーマンスから導かれているのは間違いなさそうだ。

 しかし、井上自身は「でもそれ(試合に出る)だけじゃ意味がない。この舞台で何ができるかが一番大事」と浮かれるつもりはない。「チャンスをもらえているので、まずはそのチャンスをしっかり掴むことを意識している。全然まだ安泰な地位を築けているわけではないと思っているので、危機感を持ちつつ、与えられたプレー時間で与えられた役割を全うできるように良い準備を心がけている」と気を引き締めている。

 2試合連続クリーンシートというチームのパフォーマンスについては「チームとして勝つことが一番大事だし、2試合連続の無失点は自信にしていいことだと思っている。僕だけじゃなくチーム全員で失点0を追求していきたいし、そこをどんどん続けていきたいと思う」と太鼓判を押す。だが、自身については謙虚な姿勢を崩さない。

 札幌、横浜FMというJリーグ屈指の攻撃力を持つ相手を抑えたことにも「僕自身の中では全盛期の2チームじゃないと思っている。札幌も雪でたぶん札幌で練習ができていないし、環境が違う。マリノスも監督が変わって、サッカーが変わって、開幕戦からうまくいっているなとは思っていない。そこでしっかり勝つ、または引き分けて勝ち点を取るという試合ができたのは良いことだと思うけど、でもここからの1試合1試合が大事になる」と冷静に分析していた。

 とはいえ、そのように先を見据えられるのも、シーズン開始前に掲げていた「開幕戦でスタメン」という目標を達成し、試合でアピールするチャンスを掴み取ったからこそだ。「ゼロで抑えるのはもちろんだし、今年は点を取りたい。去年も一昨年もいっぱいチャンスがあった中で決め切れていないシーンがいっぱいある。今季は公式戦で5点取るというのが自分の中での目標」。妥協を許さない24歳は堅守・福岡をこれからも支え、自身のゴールで勝ちをもたらすつもりだ。

(取材・文 竹内達也)

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Text by 竹内達也

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