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悪ピッチに悩まされながらも福岡が開幕2連勝

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[3.11 J2第2節 町田0-1福岡 駒沢]

 「サッカーの質」に固執するだけがプロの戦いではない。状況にアジャストし、勝ち点3を積み重ねるのもプロの仕事だ。J1復帰を目指すアビスパ福岡が、〝新参者〟FC町田ゼルビアに1-0で勝利。熊本との開幕戦に続いて2連勝を飾った。
 
「目指すべきサッカーは両チームともできなかった。その中での勝利だった」

 前田浩二監督が振り返ったように、ピッチコンディションはJとしては最悪に近い状態だった。芝がはげ、パスコントロールがままならない。地面がむき出しになっているのか、滑って転ぶ選手が続出。ゴール前でボールがイレギュラーし、バウンドしたボールがGKの顔に当たった場面もあった。

 けれども福岡は耐えた。無理につなぐことをやめ、ロングボールに徹した。立ち上がりから押される時間帯が続いたが、守備の意識を高めることで対処しつつ、好機をうかがった。

 そして27分、チャンスが訪れる。FW坂田大輔が前線で相手ボールをカットし、パスを受けたMF鈴木惇が中盤右のエリアから左足を一閃。強烈なミドルシュートがゴール左上に突き刺ささり、先制に成功した。

「狙ったというよりは、流れが悪かったからパスよりシュートを打とうと思って蹴った」

 そう話す鈴木の言葉から感じられるのは、ある意味、J1昇格と降格を何度も経験してきているチームならではのメンテリティが備わっているということだ。

「上がってきたチームに負けられないという気持ちはあったが、負けられないのはどのチームが相手でも同じ。1-0で勝った試合の得点を自分が決めたことも良かった。ただ、自分たちのやりたいサッカーをするのも大事だけど、相手に主導権を握られた試合で勝ち点3を取るのも必要」

 華麗な攻撃は見られなかったかもしれない。守備に人数を割いて、無骨なサッカーをしたかもしれない。ただ、J1復帰のために何より必要な勝ち点3を手に入れたことは大きい。アウェースタンドで歓喜するサポーターの姿が、それを雄弁に物語っていた。

(取材・文 矢内由美子)

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