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[国体少年男子]「日本で一番上手い子たち」神奈川県が鮮やかに逆転。“ちこちこサッカー”で魅せて、勝つ

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後半23分、神奈川県右SB加治佐海(川崎フロンターレU-18、1年)が決勝ヘッド。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[10.4 国体少年男子準々決勝 東京都 1-2 神奈川県 下野市大松山運動公園 陸上競技場]

 神奈川のスタイル、“ちこちこサッカー”を見せつけててっぺんを獲る、代表に入る――。優勝候補の神奈川県が、東京都との関東勢対決で逆転勝ち。「ボールを大事にするプラス、ゴールに向かって行くこと」(関泰宣監督、横浜市立美しが丘中)にこだわって攻め続け、東京都のゴールをこじ開けた。

 この日の東京は神奈川の攻撃力を警戒し、アンカーを置く形で分厚い守りを構築。神奈川はボールを保持して攻め続けていたものの、芝が長いこともあってか、崩しを得点に結びつけることができなかった。

 その中で、チームの肝であるMF高橋友矢(横浜FCユース、1年)とMF德田佑真(横浜F・マリノスユース、1年)のダブルボランチを中心に高い位置での奪い返しに成功。連続攻撃を繰り出していた。だが、前半終了間際の35分、中央のプレスを剥がされて展開され、ゴールを破られてしまう。

 ただし、関監督は「僕ら“ちこちこサッカー”と呼んでいるんですけれども、ギャップとかゆっくりとドリブルとかワンツーとか、個人技で相手をゆっくりゆっくりこじ開けていく、風下の方がボールを動かしやすいから心配しなくて良いよと」と選手たちにアドバイス。後半はよりボールを動かし、仕掛け続けた。

 そして15分、次々と選手たちが湧き出るような攻撃から右SB加治佐海(川崎フロンターレU-18、1年)がクロス。これをFW望月耕平(横浜F・マリノスユース、1年)が頭で合わせて同点に追いついた。

 高橋は「“ちこちこサッカー”と監督は言うんですけれども、中央で細かい崩しだったり、連係、コンビネーションで崩して行くというのが一つ強みですけれども、そこで相手が絞って来た中でサイド使ってクロスというのも自分たちの攻撃の狙いとしてあるので。(このシーンは)集結したところでサイド使って気持ちで押し込んだ」という狙い通りのゴール。指揮官も「伝家の宝刀」と称賛した攻撃による1点が神奈川を加速させた。

 さらに23分、望月の右CKを「自分、身長小さいんですけれども昔からヘディングは得意。実はCKの前、望月選手とマイナス気味にと話していました」という加治佐が頭で決めて勝ち越す。殊勲の背番号14は観戦に訪れていた地元小学生の目前に駆け寄り、ゴールパフォーマンス。「目が輝いていて、小学生の子たちは。嬉しかったですね」と微笑んだ。

 加治佐は右SBながらも関東トレセンリーグの得点王。個人技を大事に中央から“ちこちこ”ドリブル、ショートパスで前進し、外も活用して攻める攻撃スタイルが「自分にはとても合っていて、本当に監督さん含めて、このサッカーが大好きです」という。やや熱すぎる性格、また技術面も指導陣から成長させてもらったというSBは、前へのパワー、得点力といった高いポテンシャルを大一番で発揮した。

 関監督が「日本で一番上手い子たち」と断言する選手たちが、角度とタイミングを合わせ、イメージを共有して敵陣、ゴール前に入っていく。強豪・東京に先制され、仕掛けた分、ロストする回数も少なくなかった。だが、神奈川の特長を発揮する形で追いつき、ここへ来て得点数を増やしているセットプレーで逆転。関監督は「神奈川がこういうサッカーをしているとみんなに見せたかったので。(4-0で広島県に勝った)昨日もそうだし、今日のゲームも。みんなでゴールに向かって行って、一人ひとりのアイディアと個人技でこじ開けてくれた」と喜んだ。

 また、指揮官は神奈川のサッカーについて、「個人技と一人ひとりが輝けるサッカーですね。速い子、上手い子、強い子、賢い子がちゃんと目立てる、そういうところはずっと求めてやってきました。優勝と一人でも代表に多く送る、そのためのスタイル」。U-15からこだわってきた神奈川のスタイル、“ちこちこサッカー”であと2試合。この日1ゴール1アシストの加治佐は魅せて勝つこと、そして個人の目標を口にする。

「やっぱりこのサッカーは変えないで、貫き通して、準決勝や決勝でもただ勝つだけじゃなくて、観客にも楽しんでもらいながら、勝って、魅せるサッカーをしたいと思います。国体から代表というのは自分の目標でもありますし、チームで活躍しながら代表を目指していけたらと思います」。神奈川県選抜から4選手がU17アジアカップ予選を戦っているU-16日本代表へ選出された。だが、彼らが不在でも上手さと強さを表現。その神奈川が準決勝、決勝でも“ちこちこ”と攻めて、魅せて、勝つ。


(取材・文 吉田太郎)
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