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[国体少年男子]全国決勝で「ちょっとの差」を学んだ青森県。新たな戦いで日本一を目指す

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決勝で惜しくも敗れたが、青森県は堂々の準優勝。この悔しさをバネに。(写真協力=高校サッカー年鑑)

[10.6 国体少年男子決勝 青森県 1-2 神奈川県 真岡市総合運動公園 陸上競技場]

 初のファイナルで初優勝を目指した青森県は、1点差で敗れたが、次に繋がる準優勝だ。高体連を代表する強豪・青森山田高の1年生15人に早生まれのU-16日本代表候補CB山本虎主将(青森山田高、2年)を加えた16人で国体に挑戦。厳しい5連戦で成功体験や失敗も重ねながらタフに勝ち上がり、初の決勝でも好勝負を演じて見せた。

 勝負としては、2失点したことが全て。今大会随一の技術力を持つ神奈川県にボールを握られることも想定して臨んだが、前半9分に失点し、ゲームプランが崩れてしまう。

 それでも、上田大貴監督(青森山田中)が「奪ったボールを大切に、というところはやれていた」と振り返ったように、青森山田のAチームで先発を務める10番MF谷川勇獅(1年)とMF山口元幹(青森山田高、1年)のダブルボランチや今大会を通して好フィードを連発していたCB山本が勇気を持ってグラウンダーで縦にボールをつけ、仕掛けに持ち込もうとしていた。

 そして、ロングスローの回数を増加。相手にプレッシャーを掛けると、前半31分には左サイドをコンビネーションで完全に崩し、最後は左SB小沼蒼珠(青森山田高、1年)の折り返しをFW浅野瑠唯(青森山田高、1年)が左足でゴールへ流し込んだ。チームは盛り返したが、1試合消化試合の多い青森は後半、よりボールを握られ、我慢の展開に。その中で「ゴールを隠す」守備を徹底し、決定打を打たせなかった。

 それでも後半23分、相手SBにスペースを与えてしまい、カットインシュートを決められて1-2。山本は「最後までチームでやり切れなかったことが敗因だと思います」と唇を噛み、上田監督は「やっぱり、2失点目のシュートを気持ちよく打たせてしまったこと。我々は『ゴールを隠す』というキーワードの下、戦ってきた中であの1本をしっかり隠し切れるかどうかというところが、こういう日本一を懸けた戦いで差が出てしまった」と指摘する。その後、諦めずに押し返したものの、日本一には手が届かなかった。

 悔しすぎる敗戦に選手たちは涙。だが、地元・青森のサポート、多くの励ましを受けて戦ったチームは、過去最高成績の4位を更新し、堂々の全国2位だ。山本や谷川は地元出身で、これは青森の小中高生育成の一つ成果。上田監督は支えてくれた青森の人々への感謝を共有し、「国体を勝ち抜く、連戦を勝ち抜くという大切さを学べたし、その中で成功体験を多くしたので。それで青森県の歴史を塗り替えてファイナルまで出場したということは選手が良く頑張った、と評価できると思います」と選手たちを讃えた。

 そして、「彼らも悔しくて涙していましたけれども、この国体で5試合戦った経験はこの先、貴重な経験になるし、この年代で、全国の決勝で日本一を懸けて戦って、一つの細かいちょっとの差で日本一か、準優勝かというところで準優勝に転がった。この結果というのは、彼らにとっては間違いなく財産になると思うので、2年生、3年生になった時にこの経験値を持って次は日本一を獲って欲しいと思います」と期待。選手たちも次のステージでの活躍を誓い、後輩に初の日本一を託した。

 谷川は「最後、優勝で恩返ししたかったけれど準優勝で、そこは悔しいですけれども、青森県の最高成績を残せたと思うので、優勝は次の世代、後輩たちに託したい」。そして、自分たちは、過去の先輩たちを越える結果に満足することなく、青森で一から鍛え直し、次は青森山田で日本一を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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