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空自3補が悲願の初優勝!:全国自衛隊サッカー大会

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[4.28 全国自衛隊大会決勝 海自厚木ANFC1-3空自3補 西が丘]

 全国の自衛隊基地・駐屯地で活動するサッカーチームの日本一決定戦「第47回全国自衛隊サッカー大会」は28日に西が丘サッカー場で決勝戦を行い、航空自衛隊入間基地第3補給処が3-1で海上自衛隊厚木ANFCを下して初優勝を飾った。

 空自3補は準決勝に続いて決勝戦も先手必勝の態勢で臨み、キックオフから勢いよく敵陣へ攻め込んだ。10分、MF熊谷哲平2曹(大東文化大学出身)が蹴ったFKをMF大串善一2曹がヘディングで折り返すと、ゴール正面へ勢いよく飛び込んだDF山本雄也士長(浦和東高校出身)がヘディングシュートを突き刺して先制した。さらに14分、相手GKが足下でコントロールしている隙に猛チェイスをかけたFW小木曽真悟士長(武蔵越生高校出身)がボールを奪取。そのまま無人のゴールへシュートを決めて追加点を挙げた。

 タイトル獲得へ絶好のスタートを切った形となったが、道のりは楽ではなかった。球際で強さを見せる海自厚木ANFC(通称:厚木なかよし)は、2点のビハインドを物ともせず、じわりじわりと試合のペースを奪い取った。前半終了間際、厚木なかよしは左CKがファーサイドまで流れたところから、DF松本誠吾3曹(向上高校出身)が得意の左足でミサイルのような迫力あるシュートをたたき込んで、反撃の狼煙を上げた。

 後半は、厚木なかよしのペースだった。空自3補はハイプレッシャーが機能せず、最終ラインでのボール保持から縦パス1本で逆襲を狙う単調な展開を強いられた。得意のポゼッションを体現できない空自3補に対し、厚木なかよしは蹴り合い、打ち合いの展開で強力2トップへのボール供給を増やし、攻め立てた。後半7分、右サイドのスローインからFW中村京介士長(鹿児島実業高校出身)がポストプレーでつなぎ、MF小田倉将恭3曹(水戸葵陵高校出身)が放ったシュートは惜しくも枠の外。後半15分には左クロスをMF山田武志3曹(岐阜工業高校出身)が押し込んだがファウルでゴールは認められなかった。そして後半23分、ロングパスで相手守備ラインの裏に日里和樹3曹(藤岡工業高校出身)が抜け出ると、PA外に釣り出された相手GKがハンド。厚木なかよし陣営からは一斉に「レッド!」の声が飛んだが、主審の判定は警告。直接FKは外れ、空自3補が辛くも難を逃れる格好となった。

 熱戦に終止符を打ったのは、後半21分に訪れた空自3補の左CKだった。熊谷2曹が上げたセンタリングはゴール前に落ちて大混戦。その中で一度はボレーシュートを空振りしたものの、相手がクリアする前に顔から突っ込んでゴールへねじ込んだのが、途中出場のDF藤田雄介3曹(吉備国際大学出身)だった。前回大会の決勝では、オウンゴールで涙をのんだ。「ようやく、モヤモヤした思いが消えた」という渾身の一撃で勝敗を決定付けた。厚木なかよしは終盤に長身の園田智也士長(鹿児島実業高校出身)を前線に上げてパワープレーを展開。激しいカウンターの応酬に持ち込んだが、ゴールを割ることはできなかった。

 試合時間90分の経過を告げる笛が、空自3補の歴史を変える音色となって響いた。過去5回の決勝進出が一度も実らず、長い間追い続けた悲願の初優勝。様々な因縁から解き放たれた瞬間だった。選手としてもプレーした熊谷監督が「過去に2度、決勝戦でゲームキャプテンを任せて失敗した。PK戦のサドンデスで彼が失敗して負けた年もあった。でも、3度目の正直で男にしたかった」とキャプテンマークを託した川口裕3曹(松山工業高校出身)らが歓喜の声をとどろかせた。空自3補の熊谷監督は「後半は自分たちのサッカーを失う展開になったが、タイトルを取るためには我慢も必要だった。声が止まって負のオーラが出始めたが、途中出場の選手が助けてくれた。予選ラウンドから全員を使ってきた効果が出た。僕たちがこのチームでプレーできているのは、ずっとこの大会を目標にやってきた数々の先輩が築いてきた伝統と職場の仲間の理解のおかげ。その感謝に応えられるものは優勝しかなかった」と喜びと安堵の入り混じった表情で話した。

 空自3補は入部1年目の真木基希1士(米子北高校出身)がベストイレブンに選ばれるなど若手も台頭。2点目を挙げた小木曽士長は「今は精神的な面で年上の選手に引っ張ってもらっていると感じている。今後は自分がチームの中心になっていく気持ちでやりたい。精神面でもプレーでも、若い人中心でもっとチームを作っていけるようにしていきたい」と話し、先制点を挙げた山本士長は「連覇を狙いたい」と早くも次の目標を掲げた。悲願達成に沸いた空自3補は王者の看板を背負い、新たな歴史へ足を踏み出していく。

(取材・文 平野貴也)

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