beacon

尚志の「尽力する」エースストライカー、村上力己。家族、サッカー仲間たちに支えられたFWが晴れ舞台へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

尚志高の「尽力する」エースストライカー、FW村上力己

 家族の、サッカー仲間たちの、そして恩師たちの支えを誰よりも感じながら、晴れ舞台に立つ。尚志高(福島)のFW村上力己(3年=MIRUMAE.FC U-15出身)はインターハイ予選でチームトップの3ゴール。10勝1敗で首位を快走するプリンスリーグ東北でも、7ゴールを挙げて得点王争いを繰り広げている。

 今年のエースストライカーだが、背負っている番号はFW染野唯月(現鹿島)やFW阿部要門(現山形)の「9」ではなく「12」。新人戦前に怪我をして出遅れたこともあって、「12」でスタートした村上は、FW争いの一人から絶対的な1トップを勝ち取った後も同じ番号を背負い続けている。

「FWとして尊敬している」染野の背負った「9」への憧れはある。だが、「(9をつけられずに)悔しかったですけれども、何番でも自分がエースだと思わせるようなプレーをしていきたい」という強い思いを持ってトレーニングに励み、結果を残してきた。

 インターハイも「12」で出場する予定だが、仲村浩二監督が村上にその番号を託している理由があった。「12は(チームのために)尽力している選手なんですよ」と指揮官。村上は前線での献身的なプレッシング、味方との挟み込み、そして攻撃時のスプリントなどを特長とする選手だ。多くの人々に支えてもらった感謝を誰よりも感じている村上は、誰よりも頑張ることでその思いを表現している。

 村上は岩手県陸前高田市出身。小学1年時に東日本大震災を経験し、かけがえのない家族、自宅も失った。それでも、母や2人の兄、親戚の支えもあってサッカーを続け、FCサン・アルタス大船渡からナショナルトレセンU-12メンバー入り。中学時は盛岡市に移住して強豪・MIRUMAE.FC U-15でプレーし、日本クラブユース選手権(U-15)大会でベスト16進出を果たしている。

 そして、19年4月、選手権で2度目の3位になったばかりの尚志へ進学。感謝の思いを力にするFWは、「本当に自分一人じゃ尚志高校にも来れていなかったと思うし、周りの支えがあって今の自分がプレーできているので、結果で、やっているんだというプレーを見せるだけでも」と人一倍の強い気持ちを持ってプレーし、ゴールや苦しい時に頑張る力を示している。

 16日初戦のインターハイは、将来へ向けて重視している大会だ。「得点王を狙っているので、得点王を狙いつつ全国優勝を。スカウトとか、活躍して声をかけてもらえるように頑張りたいし、自分の力をどれだけ出せるか。動き出しとか、クロスに飛び込むとかそういう泥臭く取れるところを出して確実に取る」と誓った。

 父の夢を実現させるため、村上はまだまだ歩みを止めるつもりはない。「オレは直接聞いていないんですけれども、お父さんがお父さんの友達とかに、『ベガルタに入れさせるんだ』とか言っていたみたいなので、そういう思いも叶えさせたいなと」。高卒でプロ入りを勝ち取ることは難しいかもしれない。ただし、現在の自分のすべてを出し切ること。そして、全国制覇、得点王を勝ち取り、将来への道を切り開く大会にする。

Sponsored by PUMA

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2021

TOP