beacon

優勝校の喜ぶ姿を全員で凝視。関東一は先輩から受け継がれ、形になりつつある力を「継続するしかない」

このエントリーをはてなブックマークに追加

関東一高は決勝で敗れた悔しさも糧に、全国へ

[6.19 インターハイ東京都予選決勝 関東一高 0-1 帝京高]

 表彰式を終え、優勝校は記念撮影。そして、交代でカップリフトを行っていた。その姿を関東一高の選手たちは全員で凝視。CB矢端虎聖主将(3年=FC古河出身)は、「本当に自分たちが情けないというか、色々な意味で自分たちに腹が立ちましたね。自分たちが弱いという面で本当に……チャンピオンになる素質がなかった」と唇を噛んだ。

 この日は、3大会ぶりのインターハイ出場を決めた前日の代表決定戦(準決勝)から矢端ら3人を除いて入れ替え、下級生や普段出場機会の少ない3年生が先発した。下級生時から先発を務める矢端は、彼らがピッチで色々なことに自分で気づき、対応できるように「(自分の発言を)抑えながらのゲームでした」と明かす。自分がやり過ぎることなく、小さなサポートを心掛けた80分間。だが、前半16分にやや不運な形で失点した関東一は試合終盤に巻き返したものの、0-1で敗れた。

 チャンスを得た選手たちは彼らなりに頑張っていたことは確か。だが、本当に100パーセントの力を発揮できたのか――。前半から主導権を握られ、流れを変えることができなかった。終盤の反撃も相手が落ちてきたからであって、決して自分たちが良かった訳では無い。主将は「負けるべくして負けた」ゲームだと実感していた。

 そして、「関東第一というのはどんどん積み上げてきたチームなので、自分たちが崩してはいけないし、崩してしまって先輩たちに失礼なことをしてはいけない。自分たちの成長にもなるような結果も欲しいですし、やるのは自分たち選手なので本当に死ぬ気でやっていくしかない」と引き締めていた。

 プリンスリーグ関東2部の自分たちよりも上位、同1部に所属する帝京高相手に力負け。それでも、選手権全国3位の先輩たちができなかったインターハイ切符獲得は、チームにとってまた一つ前進だ。15年から18年までインターハイ予選で4連覇し、15年には全国3位、17年にも全国8強。その間、2度の選手権出場を果たしている関東一が都内の競争でまた抜け出し、全国上位への基盤を築こうとしている。

 前日の代表決定戦では、小野貴裕監督から掛けられた「オレたちを全国が待っている」という言葉で心を整え、奮い立ち、東海大高輪台高を紙一重の差で上回った。小野監督は今年のチームの力の源になっている部分について、先輩たちの姿を見ていることを挙げる。現3年生はコロナ禍によって、全国的に思うようにトレーニングも合宿・遠征も、試合もできなかった世代だ。その中で何が対戦相手との差になるのか。

 小野監督は「先輩のことは確実に見ているじゃないですか。僕たちが、めちゃくちゃアドバンテージがあるとすれば、自分たちで自発的にやってみろよ、考えてみろよというものが僕らの関係、選手と指導者の関係だけじゃなくて、もう一個別に自分たち(選手たち)が我々(コーチ陣)よりももっと近い位置で見ていた人たちがいるから、それは凄くデカいんだなと」と分析する。

 関東一は昨冬の選手権開幕戦で中津東高(大分)に6-0で快勝。その後はDチェイス・アンリ擁する尚志高(福島)に0-0からのPK戦で競り勝ち、2大会連続選手権3位・矢板中央高(栃木)との3回戦では後半終了2分前の劇的な決勝点で勝利を収めた。そして、V候補の静岡学園高(静岡学園高)との準々決勝は後半40分に1チャンスを決め切って追いつき、PK戦で劇的勝利。先輩たちは相手ではなく、まず自分たちに目を向け、やるべきことをやり続けたことで新たな歴史を築いた。この経験を見るだけでなく、ピッチ上で体感した矢端は、先輩たちから受け継いだものを継続することを誓う。

「自分たちは体感している。そういうところこそ関東第一の持ち味なので。そこ(逆境)を先輩たちは乗り越えているので、自分たちもプラスアルファでやっていかないと、他との差がつかない。だから、本当にまだ完全体ではないですけれども、小さく形になっているので継続するしかないですね」と語った。

 今回の敗戦も次への糧に。矢端と同じく、先発として選手権を経験したエースFW本間凜(3年)は、「まだ去年には及ばないし、去年のような流れを変える選手がまだいないので今日を機にじゃないですけれども、残り1か月、全国大会に向けてチームを変えてくれるような選手が1人でも2人でも増えてくれたら静学戦みたいな感じになると思う」と自分自身とチームに成長を求める。

 そして、矢端は「とにかく後先考えずに自分たちが勇気を持ってやるしかない。とにかく1か月後には全国大会があるので、難しいですけれども、全国優勝というのは。でも、できない訳ではないので、可能性はあるので、そこは狙っていきたいです。目の前のことをやらないと初戦で負けますし、一個ずつ勝って、そこから優勝という目標を立てたいと思います」。先輩たちから学んだことを継続し、より表現できるチームになって白星を積み重ねる。

強い責任感と覚悟を持つCB矢端虎聖主将。経験をチームに伝える

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

TOP