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前半0-1も、焦れずに3発逆転。神村学園が「仲間・後輩のため」の連覇へあと1勝

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後半20分、神村学園高FW西丸道人主将が勝ち越しヘッド

[5.26 インターハイ鹿児島県予選準決勝 鹿児島実高 1-3 神村学園高 OSAKO YUYA stadium]

 令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技鹿児島県予選準決勝が26日にOSAKO YUYA stadium(南さつま市)で行われ、神村学園高が6連覇に王手をかけた。鹿児島実高と対戦した神村学園は、U-17日本代表MF 名和田我空(2年)の2ゴールとU-17日本高校選抜FW西丸道人主将(3年)の決勝点によって3-1で逆転勝ち。27日の決勝で鹿児島城西高と戦う。

 先制したのは15年度以来のインターハイ出場を狙う鹿児島実だった。立ち上がりからオールコートでプレッシングをかけると10分、バックパスを狙ったMF仙田龍聖(3年)が相手GKとの距離を詰めてスライディングタックル。こぼれ球を10番FW伊地知龍之介(3年)が左足で蹴り込み、先制点を奪った。

 前半は鹿児島実の流れ、奪ったボールを伊地知やMF田村倫也(3年)が収め、そこからサイドを活用した攻撃に持ち込むなど、相手を押し下げることに成功する。そして、MF原口順多主将(3年)のロングスローなどのセットプレーでゴール前のシーンを創出した。

 一方の神村学園はU-17日本代表の左WB吉永夢希(3年)が圧倒的な推進力で攻撃参加。決定機を演出していた一方、前がかりになりすぎたことで相手右SB東中凪音(3年)にスペースを消されるなど行き詰まる部分もあった。また、1年生で10番を背負うU-16日本代表MF福島和毅のスルーパスがゴール前に入るものの、鹿児島実は相手FW陣の抜け出しをケアして決定打を打たせない。神村学園はボールを保持する時間を伸ばせず、0-1で前半を折り返した。

 後半、神村学園は3バックから4バックへ変更。有村圭一郎監督から「スペースの作り方と相手が3トップだったので、はっきり(DFの枚数を)4にして前に出て行って良いよと」助言を受けたチームは試合をひっくり返す。8分、右スローインを西丸がキープ。中へ持ち出して繋ぐと、右前方へドリブルした名和田がそのまま右足を振り切る。これが鮮やかな孤を描いて対角の左サイドネットへ。スーパーゴールで1-1に追いついた。

 鹿児島実は後半立ち上がりも勢いがあり、クロスからのチャンスや、セットプレーを獲得するシーンもあったが、痛恨の失点。神村学園の勢いを止めることができない。神村学園は昨年から主軸のDF有馬康汰(3年)を怪我で欠いているものの、競り合いでDF長沼政宗(3年)らDF陣が跳ね返し、セカンドボールも福島やMF平木駿(3年)が回収する回数を増やした。

 そして20分、神村学園はPA内右でボールを受けたMF高橋修斗(3年)が切り返しから左足クロス。ファーサイドでマークを外した西丸が「自分のところにボールが来さえすれば点を取れる自信はあったので、ボールを要求していて良い形で来たので決めるだけでした」というヘディング弾を決めて逆転した。

 西丸はプレミアリーグWEST7試合で12ゴールと量産中。「(先制されて)めちゃくちゃ慌てていました」と明かすが、「点取るということに関しては誰よりもストイックにやっていますし、自分が取らないと波にも乗らないし、チームも負ける試合が多いので、点取ることは意識していて要求も凄くしている」。ストイックに狙い続けてきたゴールをこの日も勝負どころで決めた。

 神村学園は今年、初参戦のプレミアリーグWESTで2位につけていることも自信になっているようだ。西丸は「プレミアでやっているので負けている状況とかでもチームとして焦れなくなっているというか、成長が感じているので良くなっているなと思います」。有村監督も「強度が高いのでちょっとやそっとでは壊れないというか、そういうゲームをやってきていることが自信になっている」と説明する。

 鹿児島実は次々と交代選手を投入し、MF小城悠大(2年)のスピードを活かした攻撃などで同点を目指す。だが、神村学園は後半に存在感を増した1年生MF福島を起点とした攻撃からダメ押し。中盤でインターセプトした福島がそのまま前進すると、DFのタイミングを外したスルーパスを左へ通す。これに走り込んだ吉永がマイナスの折り返し。最後は名和田がスライディングシュートで決め、3-1で決勝進出を決めた。

 神村学園は17年のインターハイ以降、激戦区・鹿児島県予選で白星を重ね、夏冬の全国大会に出場し続けてきた。U-20日本代表FW福田師王(現ボルシアMG)やMF大迫塁(現C大阪)は卒業したものの、今年も各学年に年代別日本代表や高校選抜がいる。多くの人々に見られる舞台に立ち続けてきたからこその個人、チームの高評価。それを選手たちは理解している。

 今夏のインターハイ出場まであと1勝。西丸は「本当に明日は6連覇がかかっていて、自分たちだけの戦いじゃないので、先輩たちの分もしっかり後輩に繋げないといけないですし、やっぱり今年2回負けているので、3度目の正直じゃないですけれども、全国行ってみんなが良い進路だったり活躍する場を自分が点を取ってつくらないといけないと思っているので、チーム、仲間・後輩のために明日は絶対に勝たないといけない」と力を込めた。決勝の相手は今年、県新人戦決勝、九州新人戦決勝で敗れている鹿児島城西。プレミアリーグで成長を続ける神村学園が今度こそ勝って、インターハイ予選連覇を果たす。


(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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