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「ロス五輪への推薦状」第4回:プレミアWESTで早くも2桁得点。神村学園FW西丸道人はチームに安心感与える点取り屋

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神村学園高のエースFW西丸道人主将はプレミアリーグWESTで早くも11得点と量産中

 2028年ロサンゼルス五輪まであと5年。ロサンゼルス五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ2005年生まれ以降の「ロス五輪世代」において、年代別日本代表未招集の注目選手たちをユース取材ライターの川端暁彦記者と森田将義記者がピックアップ

 初参戦のプレミアリーグでは2度のハットトリックを含め、6試合で11ゴール。ストライカーとして覚醒しているのが、神村学園高(鹿児島)のFW西丸道人(にしまる・みんと、3年)だ。

 昨年からの成長は著しい。入学1年目から出場機会を掴みながら、思い通りの結果が残せない時期も。だが、昨夏辺りから2トップを組んだFW福田師王(現ボルシアMG)との関係性が確立され、ブレークの兆しが漂い始めた。西丸が前線からアグレッシブにプレスをかけて、相手のビルドアップが乱れた所を福田が奪い切る。高い位置で奪ったボールをそのままゴールまで持ち込むと共に、勢いのある西丸の動きがチームに活力を与えていたのは間違いない。選手権は福田の活躍が目立ったが、14大会ぶり2度目の4強進出に西丸の貢献度は大きかった。

 迎えた最終学年の今年は、有村圭一郎監督の推薦もあり、MF大迫塁(C大阪)からキャプテンの座を引き継いだ。背番号は昨年の12番から、福田の後を継ぐ13番になり、意気込みは強い。「塁さんと師王さんの2つを背負うのは大変ですが、結果を残せば名前が広まるし、プロなどの個人昇格にも繋がると思っている。13番でキャプテンだったら注目してもらえると思うので、プレーで示して行きたい」。
 
 2月に行なわれた九州新人大会で与えられた役割は昨年までの2トップではなく、1トップ。起用の狙いについて、有村監督はこう口にする。「道人は大学ではなく、プロで勝負していきたいと言っている。FWでしか生きられないと思うので、すでにできる2トップだけでなく、1トップでターゲット役としてもやれないといけない。2トップのセカンドストライカーになるのか、トップとして認めて貰える存在になるのかの分かれ目。だから、今年はあそこで身体を張らせようと思っている」。

 慣れない役割に戸惑いを感じながら、試合を重ねながらエースとしての自覚は高まっていく。ライバルの鹿児島城西高に敗れ、準優勝で終わった九州大会ではこんな言葉を残している。

「昨年なら師王が点を獲って勝つ試合が多かったけど、今年は誰もいない。自分が主役というか、チームを勝たせる存在にならなければいけない。同時に目に見えないものでチームに安心感みたいなのを与えられる選手になっていきたい。去年だと塁さんや師王さんは、目に見えない安心感を持ち合わせていた。ピッチの中でやっている人しか分からない物だと思いますが、安心感やアイツがいれば大丈夫だろうと思われる選手になっていきたい」。

 4月に開幕したプレミアリーグでのプレーは、“西丸がいれば大丈夫だろう”と思えるような働きぶりだ。決してフィジカル的に恵まれた選手ではないが、きっちり前線でボールをおさめて攻撃の起点として機能。競り合いでも相手と駆け引きして、有利な状態を作って得点に繋げている。

 何よりも昨年、選手権を経験できたのが精神的に大きかった。「小学1年生からサッカーをやってきて、初めて負けられないなという戦いが選手権だった。あの時はいつもと違うメンタリティーで試合をして、言葉にはできないのですが、今までの自分とは一味違う気持ちでプレーできた。今は選手権と同じメンタリティーでプレーできるようになった。絶対に負けられない気持ちというのがプレーに出ていると思う」。

 卒業後の進路はプロ1本に絞っているが、今の活躍が続けば自ずとオファーは届くだろう。不思議と無縁だった代表入りも夢物語ではない。「代表に入りたい気持ちは凄く強いけど、結果を残せば自ずと入れるのかなって思っている。今は代表とか言う前にしっかり結果を残し続けて、呼ばれた時にどれだけ良いパフォーマンスができるかという所にしっかり目を向けて頑張っています」。ストライカーとして一皮むけ始めた西丸のストーリーは、これからが本編だ。

執筆者紹介:森田将義
 1985年、京都府生まれ。路頭に迷っていたころに放送作家事務所の社長に拾われ、10代の頃から在阪テレビ局で構成作家、リサーチとして活動を始める。その後、2年間のサラリーマン生活を経て、2012年から本格的にサッカーライターへと転向。主にジュニアから大学までの育成年代を取材する。ゲキサカの他、ヤンサカ、エル・ゴラッソ、サッカーダイジェストなどに寄稿している。
森田将義
Text by 森田将義

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