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「過去に類を見ない成績」への新たな挑戦。帝京長岡は粘る日本文理をPK戦で振り切って新潟制覇!

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帝京長岡高はPK戦を制して新潟連覇を達成!

[6.4 インターハイ新潟県決勝 帝京長岡高 0-0 PK4-3 日本文理高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 目の前の試合を1つ1つ勝っていくほかに、目標としている結果を手繰り寄せる術はない。どんなに苦しんでも、どんなに追い込まれても、最後には必ず歓喜を味わうための日常を積み重ねていくことだけが、頂上へと辿り着く唯一の方法だ。

「もちろん全国優勝は目標なんですけど、まだまだ足りないところもあるので、目の前の試合を絶対に勝って、どんどん上に行けるようにしたいですね。帝京長岡の新しい記録をこの代で出したいという気持ちはあります」(帝京長岡高・堀颯汰)。

 焦らず、騒がず、逞しく勝ち獲った全国切符。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技新潟県予選決勝が4日、新発田市五十公野公園陸上競技場で開催され、初の新潟連覇を目指す帝京長岡高と5年ぶりとなる夏の全国を狙う日本文理高が激突。0-0でもつれ込んだPK戦で、守護神のGK小林脩晃(2年)が好守を見せた帝京長岡が勝利を掴み、7回目の全国大会出場を決めている。

 序盤から試合の構図はハッキリしていた。帝京長岡は攻める。前半4分には今年の14番を背負うMF堀颯汰(3年)が左に流れながらフィニッシュまで持ち込み、これは日本文理のGK松澤誠也(3年)にキャッチされるもオープニングシュートを。14分にも右からDF松岡涼空(3年)が上げたクロスに、ダイレクトで合わせたFW野村塁生(3年)のシュートは枠の上へ。18分にもMF山村朔冬(3年)が蹴った右CKを、ニアで合わせたDF内山開翔(3年)のボレーは松澤のキャッチに遭うも、ゴールへの意欲を前面に打ち出していく。

 日本文理は守る。右からDF小山田草太(3年)、DF赤阪和輝(2年)、DF宮下創輝(3年)、DF八百板青空(3年)で組んだ4バックは相手のパスワークやドリブルに粘り強く対応し、中盤ではMF谷澤功雅(3年)やMF町田光希(2年)が攻守の切り替えを司り、素早いアタックでFW山田拓実(3年)とFW山城勇稀(3年)をシンプルに生かす戦い方を徹底。相手の隙を窺っていく。

 30分も帝京長岡。山村の右CKを堀が頭で折り返すと、反応したFW安野匠(2年)のヘディングは松澤がファインセーブ。35分にもDF坪田悠一郎(3年)が深い位置から蹴ったFKに、ファーへ突っ込んだDF高萩優太(3年)のヘディングは左のポストを叩き、詰めた野村のシュートは松澤がビッグセーブで応酬。「押し込む展開が続いている中で、なかなか点が入らない状況だったと思います」とは高萩。前半はスコアレスのまま、35分間が終了した。

 後半も大きな流れは変わらない。帝京長岡は4分に高い位置で収めた山村が、安野からのリターンを受けて枠内に打ち込むも、ここも松澤がファインセーブ。11分にも後半から投入されたMF畑遼河(3年)が右へ振り分け、堀の折り返しをMF橋本燦(3年)が叩いたシュートはクロスバーの上へ。どうしても1点が奪えない。

 12分に日本文理は交代策。長身FW上田然(3年)を投入し、明確なターゲットを前線に置きながら、奮闘したFW石川里樹(3年)とFW中村瑠(2年)も入れ替える勝負の一手を。18分にはピッチ中央、ゴールまで約25mの位置でFKを獲得すると、宮下が直接狙ったキックは枠を越えるも、ようやく惜しいシーンを創出してみせる。

「ちょっと空中にボールが浮いている時間が長くなったことで、ゲームテンポも上がらなかったですね」と話したのは帝京長岡の谷口哲朗総監督。規定の70分間では双方に得点は生まれず、試合は前後半10分ずつの延長戦へと突入する。

 延長前半2分は帝京長岡。内山の左クロスに、畑が合わせたヘディングは枠の上へ。5分は日本文理。巧みなボールコントロールから上田が打ち切ったシュートは、小林が丁寧にキャッチ。6分は帝京長岡。左サイドに張り出した山村の右足クロスから、堀のヘディングはわずかにゴール右へ。9分には堀が、10+1分には橋本が、それぞれ決定的なシュートを打ったものの、どちらも松澤がファインセーブで凌ぐ。

「決め切れなかったなという感じですね。そんなにピンチらしいピンチもなかったと思うんですけど、自分たちが決め切れずに苦しんでしまいました」と90分間を振り返ったのは堀。延長でもスコアは動かず、旭川行きの切符の行方はPK戦へと委ねられる。

 先攻の日本文理、後攻の帝京長岡ともに2人目まで成功したが、日本文理は3人目が、帝京長岡は4人目が枠を外してしまい、3-3のイーブンでキッカーは勝負の5人目に。ここで帝京長岡の守護神が魅せる。

「相手が目線で駆け引きをしてきたんですけど、PKは凄く自信があったので、しっかりと自分が決めた方に自信を持って飛んだら、うまくそっちに来てくれたので、丁寧に手で壁を作って、最後までボールを見て止めた感じです」。小林が披露した気合のショットストップ。帝京長岡5人目は延長後半から登場したFW河角昇磨(3年)。丁寧な助走から、レフティが左足で振り抜いたボールは、ゴールネットを確実に揺らす。

「チームとしてPK戦は決して得意なところではないですけど、選手は毎日練習もしていましたし、GKの小林はPKが大好きなヤツなので(笑)、1本ぐらいは止めてくれるんだろうなと思っていました」(谷口総監督)。日本文理の奮戦、実らず。PK戦を制した帝京長岡が、2年連続となる全国切符をスタンドとピッチの全選手で喜び合う結果となった。



 ゴールを決め切れないという課題こそ残ったものの、このゲームの帝京長岡で特筆すべきは無失点を成し遂げた守備陣だろう。基本的には攻め続ける展開の中で、高い推進力を有する山田や、高さを誇る上田など、日本文理も力を持った個が虎視眈々とチャンスを狙ったが、高萩と坪田のセンターバックコンビを中心にしたディフェンスは最後まで崩れず、集中力も切らさなかった。

 谷口総監督は「高萩が本当に良く落ち着いて対処してくれて、あそこで割られることがほぼなかったですし、キーパーの小林も含めて非常に経験値のある子たちなので、落ち着いてやってくれたなと思います」と高い評価を。高萩も「後半の立ち上がりのところはミスからショートカウンターを受ける場面があって、そこは改善しないといけないところですけど、決定的なピンチもあまりなかったので、リスク管理できていたことは良かったなと思いますし、守備全体の手応えはありました」と話しており、今大会の全5試合中、3試合で完封勝利を達成するなど、着実に守備面での進化を遂げてきたことは間違いない。

 今年の帝京長岡の3年生は、高校選手権で2年続けて全国ベスト4に入ったチームを見て、入学してきた世代だ。だが、ここ2年間はなかなかその頃と同じような結果を出すまでには至っていない。

 中学時代に所属していたFC東京U-15むさしで全国制覇を経験している小林が「このチームの全国大会はベスト4が最高で、日本一に近付けても獲れないところがあると思うので、去年は1年生のルーキーリーグで優勝できたんですけど、さらに全国大会でも入学した頃からずっと狙っている日本一を獲れるように、頑張っていきたいなと思っています」ときっぱり言い切れば、「目標はもう日本一というところですけど、まずは初戦を勝つことが大事ですし、インターハイではなかなか勝てていないので、自分たちが歴史を変えられるように頑張りたいと思います」と高萩も明確な目標を口にする。

「日本文理さんに勉強させてもらって、また次にゲームをさせてもらう権利を戴いたので、新潟県の代表として、何とか過去に類を見ない成績を収めたいと思います」(谷口総監督)。新潟県勢のインターハイ最高記録はベスト8。『過去に類を見ない成績』を明確に狙う帝京長岡が、夏の旭川に乗り込む冒険は果たしてどこまで。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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