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さらなる成長へのラストピースは「駒大高校らしさ」。実力者・狛江の奮闘に苦しみながら駒澤大高が東京8強進出!

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駒澤大高は粘り強く勝ち切って準々決勝へ!

[6.3 インターハイ東京都予選2回戦 駒澤大高 2-1 狛江高 戸吹スポーツ公園]

 例年以上に攻守のクオリティを出せる自信は携えてきた。だからこそ、ここから先へと勝ち上がっていくためのラストピースは、赤黒軍団が伝統的に受け継いできた“駒大高校らしさ”であることに疑いの余地はない。

「この子たちはもっと誠実に、マジメに、“駒大高校らしい”ことができる代だと思うんですけど、ちょっと上手くできるようになってきているので、逆に『何を勘違いしているんだ』というところに繋がっている気がします。それが今日は出たので、もっと“駒大高校らしい”形で、ドロドロになりながらも、ハードワークできるようなことを目指してやってもらいたいなと思っています」(駒澤大高・亀田雄人監督)。

 厳しい試合を勝ち切りながらも、見据えるのは自分たちらしさのさらなる追求。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技東京都予選2回戦が3日、戸吹スポーツ公園で開催され、2014年大会以来の夏の全国を目指す駒澤大高狛江高が対峙。前半で2点を奪った駒澤大高が、狛江の反撃を1点に抑えて2-1で勝利。準々決勝へと進出している。

 序盤は双方に決定機が訪れる。前半10分は駒澤大高。エリア内に飛び込んだMF菊池遥人(3年)が獲得したPK。キッカーのDF平井涼真(3年)が左に蹴ったキックは、しかしポストを直撃。先制点を奪えない。命拾いした狛江は14分、右サイドを単騎で抜け出したFW森野琉仁(3年)がシュートを放つも、ここは駒澤大高のGK長野真也(3年)がファインセーブで応酬する。

 15分は再び駒澤大高。FW内田龍伊(2年)のフィードに、飛び出したMF森山真人(3年)が合わせた決定的なシュートは、狛江のGK笹川知輝(2年)がビッグセーブ。20分は再び狛江。FW金原央(3年)が左へスルーパスを通すと、森野が迎えた1対1はここも長野の好守に阻まれるも、「長野はずっとBチームにいた選手で、もともとゴールキーパーなんですけど、足が速いのでワンチャンスを狙うタイプなんです」と長山拓郎監督も言及した“元ゴールキーパー”のアタッカーが見せ付ける存在感。

 際立った“飛び道具”の威力。21分。右サイドで獲得した駒澤大高のCK。キッカーのMF中澤聡太(3年)が蹴り込んだキックに、高い打点でDF若田澪(3年)が打ち下ろしたヘディングは豪快にゴールネットへ突き刺さる。「去年から若田とは一緒にやっていて、T2(東京都2部)リーグで一緒に結構点を獲っていたんです」(中澤)「聡太とは去年から一緒にやっていて、自分の得意なコースにボールが来れば絶対に決められる自信はありますし、凄く良いボールが来たので、絶対決めてやろうと飛び込みました」(若田)。ホットライン開通。駒澤大高が1点のリードを奪う。

 失点を受けて、狛江はシステムチェンジに打って出る。「昨日キャプテンから『これでやりたいんですけど』という提案があったので、それを尊重したんですけど、思った以上に上手く行かなくて、失点したところからパッと戻しました」(長山監督)。果敢にトライした5-3-2から、最終ラインにDF栗田健生(3年)、DF伊藤蹴人(3年)、DF正木健晴(2年)、DF河野俊哉(2年)を右から4枚並べる、いつもの4-4-2に戻して、全体のバランス修正を施す。

 だが、次の1点を記録したのも駒澤大高。前半終了間際の40分。長野のロングキックに森山が競り勝ったボールは中央へ。ゴール前の混戦の中で、飛び込んだMF西元一平(3年)が当てたシュートは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれる。「飲水前に1点と、終了間際に1点だったので、仕留めることができたのは良かったですね」とは駒澤大高を率いる亀田雄人監督。前半は2-0でハーフタイムへ折り返す。

 後半は両チームとも交代カードを切りながら、大事な次の1点を窺う展開に。狛江はドイスボランチのMF寿功之助(3年)とMF野島羽瑠(3年)が配球とセカンドボール回収に奔走。ウイングバックから前線にスライドしたキャプテンのFW毛利心駿(3年)やMF中村慶次郎(2年)はボールを引き出し、チャンスの芽は作るものの、DF山口航生(3年)を軸にした駒澤ディフェンスが敷く堅陣はなかなか揺らがない。

 懸命に繰り出した反撃の一手。終盤に差し掛かった後半34分。狛江は右サイドへと展開し、後半から投入されたMF齋田陽(2年)がクロスを入れると、やはり途中出場のDF中川太智(3年)が優しく繋いだボールは、中村の足元へ。23番が丁寧に蹴り込んだボールは、力強くゴールネットへ到達する。歓喜するオレンジ。1点差。にわかに試合の行方はわからなくなっていく。



「アレで同点に追い付かれて、逆に持っていかれるというのが一番良くないゲームだと思いますし、あり得ることだったので、相手の選手が足を攣ってしまった時に1回みんなを集めて、『自分たちのやりたいことではなくて、相手が嫌がることをやろう。ヘディングや球際で負けるな』という話はしました」(中澤)。駒澤大高は、それでも冷静だった。

「悔しいですね。最初の失点がもったいなかったなというところもありましたし、課題もいっぱい見えました。でも、久々にここまで勝ち上がってきたので、これからだなというところですね。たぶんウチはもう1点獲れても、延長は走れなかったと思います」(長山監督)「狛江高校は凄く良いチームですよね。選手たちが能動的に頑張ろうとしているから、運も転がってくるんだろうなという好感の持てるチームで、本当はそれをウチがやらなきゃいけなかったんだろうなと思いました」(亀田監督)。狛江の奮闘、一歩及ばず。駒澤大高が2-1で逃げ切って、実践学園高が待つ次のラウンドへと勝ち上がった。

 関東大会予選でも、結果的に本大会を制することになる修徳高と代表決定戦の準決勝で延長までもつれ込む激闘を演じるなど、今シーズンの駒澤大高は間違いのない実力を有している。だが、できることの幅が広いがゆえに、勝負の際の部分に甘さが残されていると選手もスタッフも感じているようだ。

「前の選手が綺麗にやろうとしている部分は自分も感じていて、みんなシュート技術もあると思うので、もっと簡単にゴールを狙っていってもいいのかなと思います。やっぱり得点を獲ることが一番なので、もちろん自分も狙いながらですけど、前にはゴールを獲ってほしいなと思います」(中澤)「去年のチームの方が1試合1試合に対しての熱量が高かったというか、相手のセットプレーになった時に『絶対にやられないぞ』という雰囲気があったので、そういう『チーム全体で守り切る』というところで、駒澤らしさは自分たちにまだまだ足りないかなと思います」(若田)。

 誰よりもチームの歴史をよく知る指揮官も「ちょっとチャンスを作ることがゴールになってしまっているようなところがまだあるので、『一番大事なところをもっと丁寧に』というところで、来週はトレーニングしていきたいなと思います」と語りながら、今年のチームに対する期待も隠さない。

「この代は入学時から献身的に努力してきた子たちが多かったんです。でも、今年になって代が変わってから積み上げてきたモノも、いろいろなコーチがいろいろなものを積み上げてくれたものもあって、彼ら自身もいろいろ考えながらやっているので、伸びているとは思いますし、修徳さんに負けてからは『とにかく力を付ける1か月にしよう』ということでやってきたので、特にこの1か月はかなり良くなってきたんじゃないかなと」。

 だからこそ、ラストピースはこの言葉に凝縮されている。「『下手でもいいから頑張れ』というところが、一周回って大事になるかなと思っています」(亀田監督)。彼らが伝統的に貫いてきた『下手でもいいから頑張る』という信念。“駒大高校らしさ”がどういうタイミングで彼らに宿っていくのか、要注目だ。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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