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[MOM4311]富山一MF多賀滉人(3年)_主将が”プロ並み”の運動量で攻守に“いぶし銀”の働き

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攻撃的な富山一高をアンカーの位置で支えたMF多賀滉人

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[6.4 インターハイ富山県予選決勝 富山一高 3-0 高岡一高 高岡スポーツコア]

 今年の富山一高は選手層の厚さが強みで、プリンスリーグ北信越では試合状況や相手に応じて様々なアタッカーを起用してきたが、替えの利かない選手もいる。アンカーを務める主将のMF多賀滉人(3年)だ。

「守備も効いているし、攻撃も彼が起点になっている。何よりリーダーシップがとれて頭が良いから、彼がいるのといないのとではチームが大きく違う。彼が監督です。『俺はもう任せたぞ』と言っています」(加納靖典監督)。

 高岡一高とのファイナルでも派手さはないが、彼のプレーは効いていた。「シャドーの2枚が超攻撃的」(多賀)なのが、今年の富山一の特徴。4-3-3のシステムで前がかりになる中盤の2人のカバーをしつつ、アンカーの位置からボールを散らして試合を落ち着かせるのが多賀の役割だ。

 風の影響もあり、蹴り合う展開になった序盤は腕の見せ所でもあった。「落ち着かない時間帯は相手のペースになると思っていた。自分もちょっと焦っていたのですが、できるだけボールを落ち着かそうって考えていました。マイボールの時間を長くして、できるだけ試合を支配しようと心掛けていた」(多賀)。高岡一が繰り出すロングボールのターゲット役となるFW絹野仁(3年)に対しても、CBと上手く挟み込んで自由を与えない。

「あれだけ広範囲をカバーしながら、攻撃も組み立てるなんて普通ではできない」と加納監督も称賛した通り、守備と攻撃の両面に顔を出せるのが彼の強みで、この日も最後まで力強くピッチを駆け回った。

 その運動量はプロ並みで、90分ゲームでの走行距離は約14kmをたたき出す。この日は3点を奪った攻撃陣に目が行くが、いぶし銀の働きで持ち味を引き出した多賀がMOMであるのは間違いない。

 今シーズンに入ってからは黒子としての役割を全うするが、昨年はシャドーの位置でチャンスを演出してきた。巧みなポジショニングで味方からのパスを引き出し、少ないタッチで捌いて攻撃のリズムを生み出すなど攻撃センスの高さが本来の持ち味。シャドーの位置を続けたい気持ちもあるが、攻撃色の強い選手が多い今年のチーム事情もあって、オールマイティーにプレーできる多賀がアンカーを務めている。

 慣れないポジションではあるが、守備も強い。この日も力強くボールを奪う場面が見られたが、元々は対人に自信がなかったという。転機となったのは昨年度の選手権2回戦の高川学園高戦。U-17日本代表候補のFW山本吟侍(3年)とマッチアップした際に思い切りよく吹っ飛ばされ、「悔しかった。代表に入る選手はこんなに強いんだと思った」(多賀)。選手権後は「アイツに勝ちたい」と自分で組んだ筋トレのメニューを毎日励んで、体重を5kg増やした。今年に入ってからはプリンスリーグで屈強なFWと対峙しても、当たり負けしない。

 インターハイの舞台は昨年からの成長を示すチャンスだ。山本との再戦を心待ちにしつつ、札幌光星高戦に1回戦で敗れた昨年のインターハイの借りを返すつもりでいる。「何もできなかったわけではないのに勝てなかった。最後に打たれた1本のシュートで負けたので、もどかしさというか“何で負けたんだろう?”という想いが、今でも残っている。リベンジするために絶対、全国へ行こうと思っていた。チャンスが来たので次は勝ちたい。目標は優勝です」。そう意気込む多賀は、この日と同様に渋くとも効いているプレーでチームに勝利に導く。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校総体2023

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