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観衆11,822人を沸かせた静岡ファイナル。エースの超絶2発で静岡学園が延長V!!

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静岡学園高が激闘を制し、2大会ぶりのインターハイ出場

[6.4 インターハイ静岡県予選決勝 静岡学園高 2-1(延長)清水桜が丘高 エコパ]

 全国3冠を狙う静岡学園が執念の静岡制覇――。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技静岡県予選決勝が4日、エコパスタジアムで開催され、静岡学園高清水桜が丘高が激突。U-18日本代表候補FW神田奏真(3年)の2ゴールによって、静岡学園が2-1で逆転勝ちした。静岡学園は全国3位に入った21年以来、2年ぶりの優勝。通算8回目のインターハイ出場を決めている。

 “高校年代最高峰のリーグ戦”プレミアリーグWESTで首位を走る静岡学園に、名門・清水商高の伝統を受け継ぐ清水桜が丘が挑戦した静岡ファイナル。11,822人の大観衆を集めた好カードは、全国3冠を目指す静岡学園が執念の逆転勝ちを収めた。

 試合は立ち上がり、清水桜が丘が押し込んで相手陣内での時間を増やした。だが、その後は個々のスキルに勝る静岡学園がボールを支配する展開。両翼のドリブラーが警戒される中、ドリブルと左足で攻撃をリードする10番MF高田優(3年)と注目の大型MF福地瑠伊(3年)の2シャドーらが「(現時点で)個が弱い分、今年はパスワークが主体」(川口修監督)というパスワークで、距離感、テンポ良くボールを動かしていく。

 前半17分にはワンツーから高田が右中間を抜け出し、その折り返しを受けた神田がターンから左足シュートを狙う。だが、これは清水桜が丘DFがブロック。静岡学園はバイタルエリア付近でもロストすることなくダイレクトのパスを通すなど攻め続け、福地や神田、高田が次々とシュートを打ち込む。

 ただし、この日は全体的にシュートの精度を欠いた。37分、スピードに乗ったドリブルで相手守備網を攻略した右SB泉光太郎(3年)の右足シュートも枠右へ。ドリブルで局面を破るシーンも徐々に増やしていたが、「(相手のCBが)前に強くて、自分自身でキープするのがキツかった」という神田がなかなか起点になれず、最終ラインで存在感を放つCB木村海惺(3年)や高さを発揮していたCB藤田匠人(3年)ら清水桜が丘DF陣にボールを弾き返されてしまう。PAを攻略するまでは至らず、遠目からのシュートを狙うも枠を外れた。

 一方の清水桜が丘は相手の切り替えの速い守備の前になかなか押し返せず、得意とするクロスの本数を増やすことができなかった。それでも、サイドでの挟み込みや中央での跳ね返しを切らすことなく見事な戦い。2年生GK高田翔も安定したプレーを継続して隙を見せない。

 静岡学園は後半6分、泉のインターセプトから神田が決定的なヘッド。18分には左CKの折り返しをフリーの神田が狙うも枠上へ外してしまう。一方の清水桜が丘は10分に左サイドで奮闘していたSB佐藤奨真(3年)が肩の負傷で緊急交代するアクシデント。だが、ピッチに残った選手が走り続けて24分、1チャンスをモノにして見せる。

 中盤でルーズボールを繋ぐと、交代出場の左SB五十嵐洋斗(3年)のグラウンダークロスを大外の右SH相川郁也(3年)が右足1タッチでゴールへ沈める。前半から我慢強く戦い、後半により高い位置での奪い返しを見せていた清水の伝統校がリード。“清桜サンバ”などで選手たちを後押ししていた清水桜が丘スタンドが、大いに沸いた。

 反撃に出る静岡学園に対し、清水桜が丘は再び決定機。28分、左サイド後方からのFKをファーサイドの相川が右足ダイレクトで合わせる。これがクロスバーをヒット。跳ね返りをMF瀧怜真(2年)が頭で狙う。だが、これを横っ飛びからすぐに起き上がった静岡学園GK 中村圭佑主将(3年)が指先でかき出すビッグセーブ。清水桜が丘はさらにこぼれ球をMF小林滉生(3年)が狙うも、静岡学園の泉がゴールライン上でクリアした。

 紙一重の戦い。静岡学園は福地が至るところに現れてボールに絡み、清水桜が丘のDF間へ割って入ろうとする。福地、高田を中心に細かくボールを繋いで攻めるが、焦りでミスも起き、人数をかけて守る清水桜が丘の青い壁に大きく跳ね返されてしまう。

 30分、静岡学園MF高田の左足FKが左上隅を捉えるが、清水桜が丘GK高田がファインセーブ。逆に39分、清水桜が丘は交代出場FW遠藤力薫(2年)が右サイドを抜け出してラストパスを送る。これに同じく交代出場のMF中澤音和(3年)がフリーで走り込むが、シュートは枠上へ。静岡学園は幾度かカウンターを喰らいながらも1点差で粘って攻め続け、エースのスーパーゴールで同点に追いついた。

 5分が掲示されたアディショナルタイム突入後の後半40+3分、静岡学園はセンターライン付近からCB水野朔(3年)がロングボールを放り込む。これを神田が競りに来た相手DFの頭よりも高い位置で胸トラップ。そして、反転しながらの右足シュートを決めた。川口修監督が「あのゴールは、なかなか高校生はできないんじゃないかな」と評し、清水桜が丘の片瀬晴城監督も「見事だと思う」と認めた一撃。観衆もどよめく超絶ゴールで1-1となった。

 清水桜が丘は優勝目前での失点。だが、切り替えて前に出る。失点直後に右サイドを抜け出した相川が右足シュート。さらに再三スプリントを見せていた右SB岡谷龍斗主将(3年)が右足ミドルを打ち込む。清水桜が丘も観衆を沸かせ、勝利への執念を見せるが、次の歓喜が訪れたのも静岡学園の方。延長戦突入直後、静岡学園のエースが再びファインゴールを決めた。

 延長前半1分、静岡学園は左中間で落としを受けた福地が1タッチで中央の神田へつける。これをトラップした神田は、「ボールを受けた瞬間、自信がありました」と右へ運びながらDF2人のマークを外して右足シュート。これがファーサイドのネットに吸い込まれ、静岡学園が逆転した。

 この後、清水桜が丘はクロスなどからゴール前のシーンを創出していたが、相手DF水野にブロックされるなど得点を奪うことができない。最後は静岡学園が時間を削って試合終了のホイッスル。静岡学園が清水商時代からのライバル・清水桜が丘との激闘を制し、2大会ぶりのインターハイ出場を決めた。

 静岡学園は高い目標実現へ向け、全員で勝ち取った1勝だ。中村は「全国に行きたいという気持ちだけで戦っていたので、そこが結果に繋がって良かった」。今年のチームの目標は偉大な先輩たちも実現していないインターハイ優勝、プレミアリーグ優勝、そして選手権優勝の全国3冠だ。

「去年のチームが終わってから全国3冠と言ってきましたし、プレミアでもやるんだという気持ちで臨んでいましたし、プレミアでも最後ファイナルに行くのが自分たちの目標なので、その目標に向けてやれているのがプレミア1位に出ているかなと思います」と中村。簡単な目標ではないことはもちろん理解している。また、静岡学園は勝つこと以上に成長することを重視するチーム。勝ちにこだわりすぎてサッカーの質を落とすことなく、自分たちの攻撃的なスタイルで成長と、全国タイトル獲得の両方の実現に挑む。

 川口監督は今年の世代の成長力を評価する。「守備の強度もそうだし、サポートの質、ボールを握る力、決定力は経験積みながらレベルアップしている。それを私自身も感じているし、選手も実感していると思う」。プレミアリーグの戦いでは後半に突き放したり、逆転勝ちするゲームもあり、しぶとく勝つ力も身についてきている。

 中村は「(全国3冠という目標を)自分はできると思っていますし、みんなのことを信頼しているのでブラさずにやっていきたいなと思っていますし、自分たちが“歴代最強”と言われるくらいに歴史も塗り替えていきたい」。そのためにライバル、先輩たち以上の日常を過ごす。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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