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貫くのは「良いサッカー」ではなく「勝てるサッカー」。成立学園は昨夏全国準優勝の帝京を撃破して東京4強!

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成立学園高は昨夏全国準優勝の帝京高を堂々撃破!

[6.10 インターハイ東京都予選準々決勝 帝京高 0-2 成立学園高 駒沢第二球技場]

 それは良いサッカーをして勝てれば一番いいけれど、どこも真剣に勝利を目指して向かってくるトーナメントで、そんなに思った通りの試合ができるはずもない。ならば、一番の目的は自ずと決まってくる。『何が何でも勝つこと』。この一択だ。

「夏は良いサッカーというよりも、勝てるサッカーをしようと。夏は綺麗事じゃないから、勝つためには暑さの中でしっかり走らないといけないし、しっかり戦わなきゃいけないという話をずっとしているので、この大会は勝ちにこだわります」(成立学園高・山本健二監督)。

 全力で勝ちに行って、狙い通りに勝ち切った会心の80分間。令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技東京都予選準々決勝が10日、駒沢第二球技場で開催され、これが初戦となる昨年度の全国ファイナリスト・帝京高成立学園高が対峙。前半にFW冨永創(3年)が先制点を、後半にもDF鎌田真碧(3年)が追加点を挙げた成立学園が2-0で勝利。2014年以来、9年ぶりとなる夏の全国出場へ王手を懸けている。

 立ち上がりは帝京が個の強さを前面に押し出し、攻勢を強める。前半3分には右サイドバックのDF大舘琉史朗(2年)が左へ送り、巧みなトラップからMF土本瑶留(3年)が放ったボレーは枠の右へ外れるも、まずは際どいフィニッシュ。以降も中盤でMF砂押大翔(2年)、MF橋本拓人(3年)、土本のトライアングルがボールを動かし、右の注目FW横山夢樹(3年・今治内定)、左のFW山崎湘太(3年)の両ウイングが積極的にドリブル勝負。相手のラインを押し下げに掛かる。

 22分は帝京。右サイドからカットインした横山の左足シュートは枠を越えるも、あわやというシーンにどよめくスタンド。24分には右CKをショートで始め、土本とのパス交換からDF竹内大地(3年)のクロスに、横山が合わせたヘディングは成立学園GK新渕七輝(3年)がキャッチしたものの、少しずつゴールの匂いを漂わせていく。

 だが、成立学園はとりわけサイドプレイヤーが引き過ぎることなく、ファイティングポーズを取り続けていた。その姿勢が実ったのは34分。最終ラインのビルドアップから、ボールを引き出したMF横地亮太(3年)は「フリーでボールを受けて、前を向いたら右サイドバックが高い位置を取っていたので」そのまま右へスルーパス。走ったDF新倉虎士(2年)の折り返しを横地が叩いたシュートは、冨永の足元へ届く。

「横地くんがシュートを打ったんですけど、そのこぼれに詰めようと反応していて、それがたまたま自分の足元にピタッと止まったので、あとは決めるだけという感じでした」。11番のシュートが確実に揺らしたゴールネット。「相手もサイドアタッカーが高い位置を取って、攻撃的に来るのかなというところがあったんですけど、ウチのサイドバックが逆に高い位置を取れたことが、得点のところも踏まえたら非常に良かったんじゃないかなと思います」とは山本監督。成立学園が1点をリードして、最初の40分間は終了した。

 後半も個で攻める帝京、組織で対抗する成立学園という大きな構図は変わらない。12分は帝京にセットプレーのチャンス。前半のうちに投入され、鋭いドリブル突破を繰り返していたMF樋口晴磨(3年)が、ペナルティエリアのすぐ外で倒されてFKを獲得。これを今治内定のDF梅木怜(3年)が直接狙ったが、ここは成立学園の壁が気合のブロック。22分にも砂押のパスから梅木が縦にくさびを打ち込み、受けた横山の枠内シュートは、ここも新渕がキャッチ。「足先だけで行かないで、身体で行こうと。戦わないと絶対に止められない相手だったので、球際にもこだわって、勝負にもこだわってやろうと思っていました」とは成立学園のディフェンスラインを束ねる鎌田。1人が外されても、次の刺客がきっちりカバーし、相手にアタック。グループの力で最後の一線は越えさせない。

 すると、次の1点も成立学園が奪い取る。26分。右サイドで手にしたFKをMF外山朔也(3年)が蹴り入れると、エリアのすぐ外からMF佐藤漣(3年)は右足一閃。この軌道に「ゴールから外れていたので、『身体には当てよう』というイメージで、とっさに頭が出たという感じでした」という鎌田がいち早く反応して、コースを変えたヘディングはゴールネットへ到達する。「仲間があれだけ応援してくれていて、一緒にゴールを分かち合いたかったので、最初から行こうと決めていました」というスコアラーは仲間の待つスタンドに一直線。2-0。残り15分あまりで、さらに点差が開く。

「ハーフタイムにも仲間と話し合って、『オレが声を掛けるからここから行け』とか、相手のハメ所も決めていたので、後半は結構守備もハマっていたなと思います」(冨永)「結構耐える時間が多かったですけど、自分たちは試合中に集中力が続くのが持ち味なので、ディフェンスもラインを揃えて、前線からプレスに行くという形でやれたと思います」(横地)。40+6分。帝京は途中出場のMF宮本周征(1年)が決定機を掴むも、新渕がファインセーブで凌ぐと、程なくしてタイムアップのホイッスルが鳴り響く。

「狙い通りかと言ったら、狙い通りかもしれないですね。前半は0-0でOKという考え方で行っていた中で、1点獲れたのは大きかったなと。それでウチのペースにできたのかなと思いますし、『今日は守備に回る時間が長いから、その中でいかに攻撃的にできるかというところも、これからの課題になるよ』という話はしていたので、それを考えた時にも良い試合だったんじゃないかなと思います」と山本監督も笑顔を見せた成立学園が帝京を堂々撃破。準決勝へと勝ち上がる結果となった。

 今シーズンの成立学園は、なかなかコンスタントに勝利を手にすることができなかった。関東大会予選は初戦こそ大成高に1-0で競り勝ったものの、修徳高には0-3で完敗。ここまで3試合を消化しているT1(東京都1部)リーグでも、1分け2敗と未勝利。白星に恵まれない中で、このインターハイを迎えていたのだ。

 山本監督は大会を前に、選手たちへ訴えかける。「『まず勝ちにこだわろう』と。『このインターハイは勝ちにこだわって、1人1人がメンタル的に強くなろう』と言いました」。その意図も指揮官は続けてこう語る。「今の子は勝たないとメンタル的にも上がってこないんですよね。関東大会予選もいろいろ試さなきゃいけないなと思っていたんですけど、勝たないと選手の勢いが付かなかったので、『じゃあもうみんなで勝ちに行くぞ』と。『そのかわり全員がその意識を持たないとダメだ』という話をしてきました」。

 もともとは元気でエネルギーにあふれている代。みんなのベクトルは定まった。「自分たちはアップから『勝つための準備をしよう』と話して、みんなが声を出して、活気を出してやることを意識していますし、試合前日はグラウンドにみんなで集まって“決起集会”をやるようなチームですからね」(横地)。

 今大会もここまで楽な試合は1つもなかった。1点差ゲームを続けて拾い、東久留米総合高戦はPK戦をモノにして、何とか準々決勝まで勝ち進んできた。ところが、昨年度のインターハイで全国準優勝を経験している帝京を向こうに回したこの日のゲームは、今シーズン初めての2点差での勝利。追い求めてきた『勝ちにこだわる』姿勢は、いつの間にか彼らを逞しいチームへと成長させていたのだ。

 次は夏の全国大会が懸かる大一番。それでも、ゼブラ軍団が携えている意志は何も変わらない。「自分は初めて西が丘に立つので、そこで何としてでもチーム全員で勝ち切って、全国に行けるように頑張ります。オレがチームを勝たせます」(冨永)「あと1勝で全国というところなので、来週の練習からまたチーム一丸となって、次の相手にも勝てるように気持ちを入れて戦って、絶対に勝ちたいと思います」(鎌田)。

 足を踏み入れた『勝ちにこだわる』フェーズの集大成。成立学園が北海道行きの切符を手に入れるために必要な勝利は、あと1つ。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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