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[MOM4366]成立学園MF外山朔也(3年)_右足の“一振り”を備えた10番が土壇場での同点FKでチームの救世主に!

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劇的な同点FKを沈めた成立学園高MF外山朔也(3年=エム・イー・エス千葉 VITTORIAS FC出身)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.29 インハイ1回戦 近江高 2-2 PK4-5 成立学園高 カムイの杜公園多目的運動広場B]

 1点ビハインドで迎えた試合終了間際。10番はそこまでの自分に「ヤバいな……」と思っていたという。

「あそこまでチームも自分も上手く行かない時間が多くて、自分もフォワードもあまりボールを受けられなくて、ゲームを作れていなかったですから」。そんな状況でやってきた千載一遇のチャンス。成立学園高の10番を背負うMF外山朔也(3年=エム・イー・エス千葉 VITTORIAS FC出身)は決めれば同点という重要なFKの助走に入る……

 近江高と対峙したインターハイの初戦。成立学園は常に先行を許す展開を強いられる。前半32分にはPKで先制点を献上。35+2分にはMF佐藤漣(3年)のゴールで追い付いたものの、後半に入ると再び勝ち越し弾を許し、1点をリードされたまま、時間ばかりが経過していく。

 外山は2度の“チャンス”を逃していた。1度目は28分。左サイドから枠へ飛ばしたMF戸部茉広(3年)のシュートは、コース上にいた外山にヒットして枠外へ。2度目は33分。右サイドから上がったクロスを完璧なボレーで叩いたものの、相手GKのファインセーブに阻まれる。

 34分。成立学園にFKのチャンスが到来する。ゴールまでは25メートル近い距離。ピッチ中央、やや右寄りのスポットには10番だけが立つ。「チームメイトも壁の前に2枚入ってボールを隠してくれて、キーパーも見づらかったと思いますし、壁を越えたら入るイメージはあって、あとはどれくらい落ちるかというところでした」。

 右足を振り抜いた直後。完璧な軌道でゴールネットへ突き刺さったボールを、はっきりとその視界に捉える。「蹴った瞬間に『入ったかな』という感覚はありました。うまくボールが落ちてくれたかなと思いますね。先日の練習で同じ場所から1本決めていたので、それと同じで、縦に落ちて、入ってくれた感じでした」。これこそエースの仕事。土壇場での劇的な同点弾。外山の一撃で、成立学園は息を吹き返す。

 それは積み重ねた練習の成果だった。「FKは1年生からメチャメチャ練習してきたので、それがやっと結果に結び付いて良かったです。自分は寮生なので、みんなで練習後もボールを蹴ったりするんですけど、とりあえず最後にFKを蹴って上がる、みたいな感じで蹴ってきたので、それが今日のゴールに結び付いた感じです」。たゆまぬ努力は嘘をつかなかったというわけだ。

 もつれ込んだPK戦。4人目が終わり、成立学園は全員成功。1人が外していた先攻の近江も5人目はきっちり沈めると、ペナルティスポットに外山が向かう。「PKは公式戦で外す感じはないので、5本目で、後攻で、決めたら勝ちの状態で、蹴る前から『やった!勝った!』みたいな感じで、自信はメチャメチャありました」。

 蹴ったコースはど真ん中。「自分は自信がある時は真ん中に蹴ったりするんですけど、『今日は真ん中の方がいいかな』という気持ちがあったので、そのまま真ん中に蹴りました」。GKの新渕七輝(3年)と抱き合うと、すぐにチームメイトの歓喜の輪に10番が飲み込まれていく。

「苦しい試合だったので、『ああ、勝てた……』という感じでした。本当に勝てて良かったです」。スペシャルなFKでの同点ゴールに、強心臓ぶりを発揮したラストキッカーとしてのPK成功。外山が右足の“二振り”で、成立学園の勝利に大きく貢献してみせた。

 勝利にプラスして、嬉しいことがあったという。先制点を決めた佐藤と外山は、エム・イー・エス千葉 VITTORIAS FCでプレーしていた中学時代から同じチームで6年間を過ごしている盟友同士だ。

「漣とは嬉しいことも悔しいことも一緒に経験してきた仲で、漣が点を獲った時は嬉しい気持ちもありながら、悔しい気持ちもあったので、『自分も獲りたいな」という気持ちはありました。結果的に漣も点が獲れて、自分も獲れて、良かったです」と外山が話せば、「2人でゴールを決められて、ちょっとVITTORIASの後輩に夢を与えられたかなと思いますね」と佐藤も笑顔。きっと“後輩”たちも、“先輩”たちの活躍に刺激を受けることだろう。

 まだまだ大会は続く。2回戦で激突するのは桐光学園。間違いなく難敵ではあるが、相手にとって不足はない。「一応10番を背負っているからには、チームを勝たせないといけない存在だと思っているので、もっと得点で貢献できればと思いますし、優勝という目標はもちろんあるんですけど、次の桐光戦もそうですし、1試合1試合頑張ります」(外山)。

 “一振り”でも、“二振り”でも、それこそ“三振り”でも、その決定的な仕事が多ければ多いほど、チームは勝利に近付いていく。確かなセンスを携えた攻撃のキーマン。外山の躍動は、成立学園が目指す上位進出への絶対条件だ。

GK新渕七輝からボールを受け取り、5人目のキックに向かう外山朔也


(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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