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[MOM4381]国見FW坂東匡(3年)_予選を通じてインハイ初スタメンの”双子の弟”が先制ゴールで8強進出の立役者に!

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今大会初先発初出場でゴールを挙げた国見高FW坂東匡(3年=徳島サルトFC出身、13番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.31 インハイ3回戦 国見高 2-0 金光大阪高 カムイの杜公園多目的運動広場B]

 県予選を通じて、このインターハイ初スタメンのチャンスが、全国8強の懸かった大舞台でやってくる。初戦も、2回戦も、出場機会が回ってこなかった中での先発抜擢。爆発する準備は、十分過ぎるほど整っていた。

「とうとうスタメンで起用してもらうチャンスが来たので、『ここしかない』という想いで、『ここで決めてやろう』という想いでピッチに向かいました。2回戦で負傷した選手がいて、その選手の想いも背負って自分が出ていたので、その役目を果たせたかなと思います」。

 国見高(長崎)に現れたニュースター。FW坂東匡(3年=徳島サルトFC出身)の今大会初ゴールとなる一撃が、チームに19年ぶりとなるインターハイベスト8進出を鮮やかにもたらした。

 良い形でゲームに入ることができたという。金光大阪高と対峙する3回戦。ここまでの2試合はスタメンだったFW西山蒔人(3年)が、2回戦の帝京五戦で負傷交代したため、そのフォワードの位置には坂東匡が起用される。

「前半は今日先発した坂東が、上手く基点になってくれてサイドに展開できましたね」と話したのは、先発に指名した木藤健太監督。坂東匡も「最初はフォワードにボールも収まって、良い形が作れていたと思います」と自身のプレーの手応えを語っている。

 だが、次第に金光大阪の勢いに上回られる形でピンチが増加。守備陣が繰り出す水際でのシュートブロックで相手の攻撃を凌ぐ時間が続いていく中、その瞬間はやってくる。

 前半終了間際の34分。相手陣内に少し入ったセンターサークル内で、FW中山葵(3年)が獲得したFK。スポットに立ったMF門崎健一(2年)が山なりのボールをエリア内へ蹴り込むと、13番はいち早く落下地点を見極める。

「ちょっとボールが大きく逸れるかなと思ったんですけど、前に落ちてくる感じだったので、『飛び込んだら勝てるかな』と」。マーカーと競り合いながら夢中で頭に当てたボールは、GKの頭上を越えて、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれていく。

「飛び込んだらうまい感じで当たりました。ボールを見ながら『ワンチャン、入ってくれないかな』という想いがあって、そうしたら入ってくれたので、嬉しかったです」。長崎県予選から数えて9試合目にして、初めてスタメンで出場した試合で、インターハイ初ゴールを奪ってしまったのだ。本人は「これって持っているんですかね?(笑)」と笑ったが、もちろん『持っている』と言って差し支えないだろう。



 この試合は、“坂東家”にとっても記念の試合になった。左利きのボランチとして国見の中盤を支えるMF坂東匠(3年)は、坂東匡にとって“双子の兄”。3回戦にしてようやく兄弟が同じ全国のピッチに立ち、しかも“弟”はゴールまで奪ってしまったというわけだ。

「まさか一緒に出られるとは思っていなかったですけど、2人で3年間切磋琢磨してきたので、それが良い形で現れたのかなと思います。普段はあまりサッカーの話はしないですけど、自分は『一緒にピッチに立てたらいいな』とは思っていました(笑)」。坂東匡はこの日も観戦に訪れていたという両親に、ゴールと勝利という最高の“プレゼント”を贈ってみせた。

 中学時代は徳島サルトFCでプレー。「自分は正直国見のことはあまりよく知らなかったんですけど……」と正直に明かしながら、「中学生の時のチームの監督さんが紹介してくれて、『行ってみないか?』ということで、匠も含めて何人かで練習に行かせてもらったんです。OBの名前を見たら大久保嘉人さんとか徳永悠平さんとか素晴らしい方々がいたので、そういう歴史のあるところでやってみたいと思いました」と言葉は続く。

 徳島を飛び出し、もともとは想像すらしていなかったような、国見町で過ごしてきた2年半の時間を経て、坂東匡は「サッカー以外の部分でも成長できたかなと思います。寮生活なので、いろいろなことを自分でしないといけなくて、親のありがたみはこの2年半で一番わかりました」と話している。だからこそ余計にこの日のゴールには、これまで育ててきてくれた両親への感謝の意味が込められていた。

 次のラウンドはいよいよ準々決勝。相手は矢板中央高に決まった。昨年度の高校選手権ではベスト16で敗退したため、今の国見の選手たちにとってここから先は“未知の世界”に突入していくが、『持っている』ストライカーはきっぱりと言い切った。

「次はベスト8ということで注目されると思うんですけど、そこでも良い緊張感をもって、国見らしいサッカーができたらなと思いますし、そこでも自分が怖がらずに、ゴールを獲れたらなって。自信は、あります」。

 それが先発でも、途中出場でも、自分のやることは変わらない。前からプレスを掛け続け、身体を張ってボールを収め続け、そしてゴールを奪うだけ。主役候補に名乗りを上げた、国見のニュースター。坂東匡はチームメイトと共有する歓喜を自ら手繰り寄せるため、虎視眈々と捕獲すべき獲物を狙い続ける。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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