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「新しい国見」が見据えるのは「新しい形での日本一」。したたかに金光大阪を倒した国見が19年ぶりに夏の全国8強進出!

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国見高は2004年度以来となる夏の全国8強へと勝ち上がる!

[7.31 インハイ3回戦 国見高 2-0 金光大阪高 カムイの杜公園多目的運動広場B]

 実に19年ぶりとなる夏の全国8強にも、彼らには満足感なんて微塵も漂っていない。もちろん先輩たちが築いてきた歴史には最大限のリスペクトを払いながらも、今の自分たちなら『もっと良いサッカーができる』という自信を纏ってきているからだ。

「今回も1つの目標として、『去年の選手権の“ベスト16”を超えたい』という想いはあったので、そういう意味ではベスト8に来れたということでの目標を達成できたんですけど、自分の中でもゲーム内容的に不満な部分がたくさんあるので、そっちの方が悔しいなと。トーナメントはその大会の流れをいかに掴むかが大きいと思うので、ベスト8は1つの通過点として、さらに上がって行けるように、この勝利をうまく自信に繋げてもらえればいいかなと思います」(国見高・木藤健太監督)。

 『新しい国見』が見据えるのは『新しい形での日本一』。7月31日、夏の高校サッカー日本一を争う令和5年度全国高校総体(インターハイ)「翔び立て若き翼 北海道総体 2023」男子サッカー競技3回戦が行われ、インターハイ優勝5回の国見高(長崎)と金光大阪高(大阪1)が対峙。前半に今大会初出場初先発のFW坂東匡(3年)が先制ゴールを奪った国見は、後半にもオウンゴールで加点すると、守備陣も3試合連続無失点を達成。2-0で勝ち切って、日本一に輝いた2004年度以来のベスト8進出を決めている。

 立ち上がりは国見の勢いが鋭い。キャプテンのDF平田大耀(3年)とDF中浦優太(3年)のセンターバックコンビに、ボランチのMF坂東匠(3年)を加えてきっちりビルドアップしながら、前線の坂東匡に良い形でボールが収まり、MF門崎健一(2年)やFW中山葵(3年)が積極的に仕掛け、攻勢に出る。

 ところが、最初の決定機は金光大阪。6分にFW太田陸斗(3年)が左へ振り分け、MF岡田涼馬(3年)の折り返しを、ニアに潜ったFW上田琥太郎(3年)が枠内へ収めたシュートは国見のGK松本優星(2年)がファインセーブで凌いだものの、以降は「前半は僕たちが押していて、良い流れはあったと思います」と太田も話したように、ゲームリズムは金光大阪が握る格好に。

 金光大阪は23分にMF原竜馬(3年)のパスから、太田が決定的なシュートを放ち、26分にも右サイドバックのDF村田凌介(3年)を起点に岡田が繋いだボールから、上田がシュートまで持ち込むも、国見も前者はDF松永大輝(3年)が、後者はDF古川聖來(3年)が身体を張ってブロック。好アタックを繰り出すもゴールには至らない。

 スコアはセットプレーで動く。34分は国見のFK。センターサークル内から門崎が中央へ浮き球を蹴り込み、「ちょっとボールが大きく逸れるかなと思ったんですけど、前に落ちてくる感じだったので、『飛び込んだら勝てるかな』と」落下地点に入った坂東匡がヘディングで合わせると、ふわりとした軌道はゴールネットへ吸い込まれる。予選を通じて今大会初スタメンだった13番が、やはり予選を含めた今大会初ゴール。国見が1点のアドバンテージを握って、最初の35分間は終了した。



「ハーフタイムで『自分たちはもう負けている状態なので、やるしかない』という気持ちで、全体でもう1回自分たちのやるべきことを確認して臨みました」とキャプテンのDF長瀬怜旺(3年)も話した金光大阪は、後半も攻める姿勢を貫く。

 3分には太田の右クロスから上田が合わせたボレーはヒットしなかったものの、惜しいシーンを。22分にも左サイドバックのDF斎藤大靖(3年)のクロスに、太田が合わせたシュートは枠の左へ。「流れの中でチャンスを作り出していたとは思います」と話した岩松哲也監督も、MF上田大翔(3年)やFW村尾優真(3年)と攻撃的なカードを切って、同点と逆転を狙い続ける。

 それでも国見の堅陣は揺るがない。「選手たちがポイントのところで、自分たちに流れが来るようなプレーができていましたね」と口にしたのは木藤健太監督。そして、“ポイント”を見逃さない狡猾さの結晶は終盤の30分。カウンターから途中出場のMF江藤呂生(2年)が右から上げたクロスは、中央が合わせ切れなかったものの、きっちりボールを回収した二次攻撃から再び右へ展開すると、またも鋭く入れた江藤のクロスが相手のオウンゴールを誘発する。

「1点獲った時に、今までは守りに入るというか、引き過ぎたりして完全に受けてしまうことが多かったんですけど、そこで追加点を狙いに行く姿勢を持ちつつ、時間を使うところ、自分たちで保持するところ、シンプルにクリアするところと、そういう使い分けでゲームコントロールすることは、ちょっとずつできてきているのかなと思います」(木藤監督)。慌てず、騒がず、2-0。守る時間も短くない中で、効果的な時間に、効果的なゴールを2つ奪った国見が、逞しく全国ベスト8の椅子を手繰り寄せた。

「あそこで失点をしなかったところが今日の勝因だと思います」と木藤監督が言及したのは、先制点を挙げるまでの攻め込まれていた20分近い時間帯。金光大阪が再三エリア付近でシュートチャンスを窺うも、平田と中浦を中心に人数を掛け、相手に寄せ切り、打たれても身体にぶつけ、ボールをゴールには届かせない。

「あそこのところは、ウチのディフェンスラインにとっては『そこだよ』というところですし、『それを逃げるようでは国見ではない』というところなので、やっぱり身体を張るとか、最後に1メートル寄せるとか、そういう部分はこだわってやってきたことを、選手がよくやってくれているなとは思います」と木藤監督が話せば、「練習からそこは徹底してやっています。自分たちの良さでもある粘り強い守備を県大会から続けていて、後ろも失点ゼロで抑えることを普段から意識しているので、それが今回も出たからこそ勝てたと思います」とは平田。全国大会での3試合連続完封勝利は伊達ではない。

 ただ、冒頭でも触れたように指揮官は少しだけ渋い表情で、内容面での不満を口にしており、「内容的に言うと自分たちはまだまだだなと思っていて、奪ったボールを簡単に相手ボールにするのではなくて、しっかり自分たちのボールにして、相手のコートでもっとサッカーをすることは意識していますね。そういう練習をしてきているので」とキャプテンの平田も話している。

 つまりは目線が上がっているということなのだろう。「自分たちはもともとヘタクソで、全然弱い代だったんですけど、春先から夏までしっかりトレーニングを積んできたので、しっかり自信を持ってこの大会に挑めています。入学した時は全国大会自体をちょっと上の存在だと思っていたんですけど、去年の選手権はベスト16で、今回はインターハイベスト8に入ったことで、自分たちも全国で全然やれることがわかったので、もっと高みを目指していきたいと思います」。平田は力強く、こう言い切った。

「これで“国見復活”というふうに思ってもらえるのは嬉しいですし、錚々たる先輩方も後輩たちもいらっしゃる中で、いろいろな方に『自分が思う国見を作っていい』と言っていただいていますし、自分自身もベースの国見らしさは残したまま、小嶺(忠敏)先生の国見高校とは違うチャレンジを、ずっと続けていきたいと思っています」(木藤監督)。

 『新しい国見』が見据えるのは、『新しい形での日本一』。19年ぶりとなる夏の頂点までに必要な勝利は、あと3つ。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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