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[MOM4393]明秀日立FW熊崎瑛太(3年)_ここまで無得点の地元出身“チャリ通”FWが圧巻の2ゴールで決勝進出に大貢献!

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明秀日立高FW熊崎瑛太(3年=日立市立助川中出身、9番)は2得点で決勝進出に貢献!

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.3 インハイ準決勝 日大藤沢高 1-3 明秀日立高 カムイの杜公園多目的運動広場A]

 自分だってフォワードだ。ゴールが欲しいに決まっている。でも、スタメンを張り続けているのに、チームが決勝点を挙げるのは、いつだって自分が交代した後。「次こそはオレが」と願い続けてきた男の想いは、この大一番で結実する。

「『自分も決めなくちゃいけない』という焦りもありましたし、昨日も決められなくて、難しい状況の時に自分と交代した選手が決めていることもあったので、今日の試合は『結果を残してやろう』という意気込みでゲームに入れたのが良かったと思います」。

 明秀日立高(茨城)の9番を背負った、地元育ちの“チャリ通”フォワード。FW熊崎瑛太(3年=茨城県日立市立助川中出身)の得点感覚が、大事なセミファイナルでとうとう爆発した。

 世間を驚かせる“アップセット”を果たした1回戦の静岡学園高戦から、熊崎は一貫してスタメンに指名され続けてきた。「自分はハードワークというか、献身的に泥臭くやるプレーが特徴だと思いますし、自分にしかない“強さ”というストロングでチームには貢献できていると思うので、そういうところが使ってもらっている理由かなと感じています」。走って、収めて、戦う。それがチームのためになると、わかっているからだ。

 それでも大会を勝ち進んでいく中で、自分の結果だけが付いてこない。同じ3年生のFW石橋鞘(3年)やFW根岸隼(3年)が、勝利を引き寄せる貴重なゴールを挙げるのを横目に、とにかく課せられた役割を愚直にこなしてきた。

 迎えた準決勝の日大藤沢高戦。1点をリードした前半30分。熊崎に絶好の得点機が訪れる。右サイドからFW柴田健成(2年)が上げたクロスに、ファーサイドへ潜って合わせたヘディングは枠を捉えると、GKがファンブルしたボールはゴールの中へ転がり込む。

「キーパーのミスも少しはあったと思うんですけど、献身的に自分が頑張った結果だと信じています。ゴールはゴールなので、嬉しかったですね」。今大会5試合目にしてようやく手にした初ゴール。照れくさそうな笑顔を浮かべた9番を、チームメイトが次々に祝福する。

 熊崎がさらなる輝きを放ったのは、日大藤沢に1点を返され、嫌な雰囲気が漂い掛けた後半8分。左サイドをDF阿部巧実(2年)との連携で崩したMF益子峻輔(3年)のクロスから、柴田が放ったシュートは相手に当たって、目の前にこぼれてくる。

「2点目は泥臭く、フォワードらしいゴールだったなと思いますね。どんな形でも決められることはチームとしても凄く大事ですし、2-0から1点返されて、チームのメンタル的にもちょっと不安定になったところもあったんですけど、そこで決められたのはチームとしても士気が上がったと思います」。今大会の明秀日立ではまだ誰も成し遂げていなかった“1試合2得点”は、遅れてきたフォワードが鮮やかにさらう。

「やっと熊崎にゴールが出たということは、かなり明るい材料です。ゴールの獲り方にも“熊崎らしさ”を凄く感じました。華やかではないけれど、相手とぶつかってボールをキープしたり、献身的にボールを追い掛けるのが彼の特徴なので、豪快なシュートというよりは、ちょっとでも触って入れるとか、詰めるとか、そういう形で今までも大事なところでゴールを獲ってきてくれたので、今日もそういう活躍をしてくれたのが大きかったですね」と評価を口にしたのは萬場努監督。献身性でチームを助けてきた熊崎が、ゴールという形でチームの決勝進出に大きく貢献してみせた。

 試合メンバー表で熊崎の“前所属チーム”を見ると、記載されているのは『茨城県日立市立助川中学校』の文字。「本当に地元出身です。自分が入る前に選手権でベスト8に入るのを見て憧れもありましたし、『地元で全国に行って日本一を獲りたい』と、『歴史を塗り替えてやろう』と思って入学したので、今大会は嬉しさがありますね。自宅は本当に自転車で登校できるような距離で、20分くらいで“直通”です(笑)」。

 自らハイレベルな環境に身を投じただけに、「入学当初は不安もあったんですけど」と素直に明かしながら、「自分らしさを出すことが生き残っていくためには必要だと思っていた中で、明秀日立は自分のプレースタイルに合ったチームだったので、“明秀色”にうまく染まったと思います」とも。いわゆる“チャリ通”の地元出身者の活躍が周囲の子どもたちに与える影響も、きっと小さくないはずだ。

 いよいよ次の1試合は全国大会の決勝戦。これ以上はない最高の舞台へ、熊崎も想いを馳せる。「全国の決勝という舞台で戦えることは本当に楽しみですし、その中で自分がどれだけできるか、ゴールを奪えるかというのも凄く楽しみです。明日は日本一になれるように、優勝目指して頑張ります。去年の関東大会でも桐光とやった時に点を獲っているので、明日も決めます」。

 献身性を武器に、泥臭く戦うことのできるファイター系フォワード。周囲の期待を裏切らない“熊崎らしさ”は、日本一の懸かった試合だからこそ、明秀日立にとっても絶対に欠かせない。



(取材・文 土屋雅史)
●【特設】高校総体2023

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