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[MOM4391]明秀日立MF竹花龍生(2年)_悔しさを募らせた”新ジョーカー”の決勝弾!そして、運命の日大藤沢戦へ挑む

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決勝ゴールを叩き出してチームを勝利に導いた明秀日立高MF竹花龍生(2年=JFC FUTURO出身、17番)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.2 インハイ準々決勝 高知高 0-1 明秀日立高 カムイの杜公園多目的運動広場A]

 強気なアタッカーは、悔しさを募らせていたという。ここまではスタメンで出場した2回戦を含め、3試合すべてに出場してはいたものの、自身の結果は付いてこない。ヒーローになるためのモチベーションは、十分過ぎるほどに膨れ上がっていた。

「3回戦までスタメンで出る時もあったんですけど、根岸くんが結果を出していて、実際はひそかに裏では悔しかったので、こうやって取り上げられるのは正直嬉しいです(笑)」。

 この日ばかりは、その存在を取り上げざるを得ないだろう。明秀日立高(茨城)のナンバー17。MF竹花龍生(2年=JFC FUTURO出身)の豪快な一撃が、チームの新たな歴史の扉を力強くこじ開けた。

 今大会の“台風の目”として猛威を振るってきた明秀日立が、準々決勝で対峙したのは高知高。全国4強を懸けた一戦は、序盤からやや相手の勢いに押される形で立ち上がる。

「今日は流れが悪い中で、少しネガティブな言葉掛けが多かったんですけど、ベンチメンバーも含めて『ポジティブにやっていこう』という話はしていました」と話す竹花はベンチスタート。出場するチャンスを窺いながら、その時に向けて気持ちを高めていく。

 スコアレスで迎えた後半15分。「先発起用できるような子が取っておけるというのは、今の強みとして凄く感じています」と語る萬場努監督が動く。講じた策は2枚替え。静岡学園高も、青森山田高も、後半アディショナルタイムのゴールで沈めたFW根岸隼(3年)と竹花を同時投入。大きな勝負に打って出る。

「守備のプレスの掛け方は言われていたんですけど、『やってこいよ』ということで、悪い流れだったので、根岸くんと一緒に『ここは流れを変えて、オレたちが試合を決めるぞ』と話をしていました」と話した竹花だが、実際は主役になる気満々でピッチへと駆け出していく。

 千載一遇のチャンスは24分にやってくる。左サイドでのスローイン。神経は研ぎ澄まされる。MF斉藤生樹(3年)が投げ入れたボールを根岸が落とすと、もうその目線はゴールしか捉えていない。

「ファーストタッチが思ったより上手く決まって、ツ―タッチ目で身体を開いて、しっかりコントロールして打てました」。右足一閃。美しく描かれた軌道は、右スミのゴールネットへと突き刺さる。

「予選は2ゴール獲っていましたけど、全国のゴールは全然違いますね」と笑った竹花のゴラッソは、そのままこの試合の決勝点。今大会初ゴールと全国初ゴールを同時に達成した16歳が、苦しむ明秀日立を鮮やかに救ってみせた。

 参考にしている選手は、右利きのアタッカーとしては意外な人選だ。「自分はFC東京の松木玖生選手のプレーをよく見ていて、フィジカルのところも参考にしていますけど、どちらかと言うと技術的なところというよりも、メンタル的なところが凄いなと思って、尊敬しています。あのメンタルは凄いです」。理由を聞けば納得。国内有数のメンタルモンスターから学ぶ部分は少なくない。

 竹花は神奈川県の出身。準決勝の相手に決まった日大藤沢は、県内の進学先として常に考えていた高校だった。最終的には寮生活をしたいという希望もあり、茨城の明秀日立へと進学したものの、そんな相手とファイナル進出を懸けて対峙するとは、何とも運命的だ。

 さらに日大藤沢には、中学時代に所属していたJFC FUTUROのチームメイトも在籍しているという。「中学時代のチームメイトが日藤に2人行きました。トップチームでは出ていないですけど、“Aチーム寄り”のBチームにいるらしいです。今日ちょっと電話して、『明日はやってやるぞ』と伝えておきます(笑)」。活躍するための要素は十分にそろっていると言っていいだろう。

 改めて重要な一戦へと、竹花は気持ちを引き締める。「日大藤沢は行きたかった高校の1つでもあるので、負けられないですけど、今日のゴールの余韻に浸らず、慢心することなく、明日もゴールを決められたらなと思います」

 スタートからでも、途中からでも、再び目指すのは自らのゴールとチームの勝利。明秀日立に現れた“新ジョーカー”。決勝進出の主役の座も虎視眈々と狙う竹花のアグレッシブな姿勢は、きっとチームに大きなエネルギーをもたらすはずだ。



(取材・文 土屋雅史)
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