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県新人戦初戦敗退から全国3位に。堅く、“ねちっこい”守備で全5試合無失点の国見が冬により輝く

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長崎の伝統校・国見高は19年ぶりのベスト4。全国3位に。

[8.3 インハイ準決勝 桐光学園高 0-0(PK5-4)国見高 花咲スポーツ公園陸上競技場]

 涙の準決勝敗退。それでも、特別な伝統を持つ国見高(長崎)が“ねちっこい”守備を軸に19年ぶりの全国4強まで舞い戻った。桐光学園高(神奈川1)にPK戦で敗れたものの、全5試合無失点という素晴らしい結果。木藤健太監督は「アイツらの目標の中で、『この大会、絶対に失点しないぞ』と。きょう負けたけれど、プラスに捉えて、自信持って良いところだと思います」と評していた。

 この日は、桐光学園のMF松田悠世(3年)、MF齋藤俊輔(3年)という強力な両ウイングと対峙。1対1ではなかなか止めることができなかった。だが、CB平田大耀主将(3年)が「SBが蓋をして、SHがプレスバックして人数をかけて守備することを意識しました」と説明したように、2人がかりで対応。シュートやクロスまで持ち込まれても、決定打を打たせなかった。

 MF坂東匠(3年)とMF山口大輝(2年)を中心に相手の間を取りながらボールを繋いで前進する一方、不用意なミスからカウンターを食らうシーンもしばしば。だが、全国レベルでも堂々の守備を見せる平田やCB中浦優太(3年)、右SB松永大輝(3年)を中心に落ち着いた守備で封じ込んでいた。雨中の難しいコンディションの中でGK松本優星(2年)もファインセーブを連発。今大会5度目の無失点で終え、敵将・鈴木勝大監督も「国見は全員がハードワークして、距離感考えながら良い守りをしていた」と称賛していた。

 チームは今年1月、長崎県新人戦初戦で長崎南山高に0-1で敗戦。12年ぶりに出場した選手権で16強入りした直後の苦敗に、選手たちは自分たちの代の力不足を痛感させられることになった。選手権の経験者でもある10番FW中山葵(3年)は、「自分たちの甘さが出てしまった試合だった」。敗退後は大会の運営補助に。平田は「心の奥に悔しいという気持ちを秘めて、『次の高総体、リーグ戦でやり返そう』とみんなで話していました」と当時の心境を明かす。

 その後は上手くいかないことが続いたというが、3月の清水フェスティバル(全国高校サッカー親善試合)が一つの自信に。八千代高(千葉)や武南高(埼玉)という伝統校に勝利し、街クラブの強豪・三菱養和SCユース(東京)と引き分けた。中山は「(自分たちの代は)勝てない、と思い込みがあったけれど、それを機に自分たちは良くなったと思います」と振り返る。

 中でも成長した部分が守備だ。中山は「全員が決めさせないという気持ちになってから良くなったと思います。国見は凄く“ねちっこい”というか、何回も繰り返せるんで、それは練習から強く要求しているというか、言っているのでそれが試合でできていると思います」と説明。その堅く、“ねちっこい”守備でインターハイ長崎県予選を6試合2失点で制し、長崎県1部リーグも最少失点で無敗首位に立っている。

 そして、インターハイでは全5試合無失点で大会を終了。平田は「自分たちは新人戦県ベスト16で負けて、周りから散々言われてきたんですけれども、自分たちにとって大きな自信になりました。去年とはまた違う国見を見せようと遠征しながら、練習試合しながら、普段のトレーニングでも厳しい言葉を掛けたり、切磋琢磨しながら育んできたので、こういう結果が出たんじゃないかと思います」と頷いた。

 木藤監督も、「新人戦初戦負けで、県大会の運営を彼らがやって、そこからのスタートでした。去年、選手権出て、『自分たちの代でやってやるぞ』という出鼻をくじかれて、そこから勝っていくためにどうしていこうと考えてきたチームで、平田キャプテン中心に良い積み重ねができている。ここで夏に得た自信と、まだまだ足りないことをここから積み上げていきながら、勝負の冬に向かっていきたい」と語った。

 戦後最多タイの選手権優勝6回、同2位のインターハイ優勝5回の名門校が13年ぶりのインターハイで存在感のある戦いを見せた。OBの木藤監督も「僕はめちゃくちゃ楽しめましたし、色々な特長のあるチームと試合がやれたので、そのチームと国見高校、自分がどう戦っていくのか考えただけでもワクワクしましたし、そこで試合を重ねるたびに生徒たちが逞しくなっていく、そこが一番嬉しかったですね」と喜ぶ戦い。今回の3位で、暫く全国舞台から遠ざかっていた名門校の目線がまた上がることは間違いない。

 平田は「自分たちはまだ選手権が残っていますが、(一つ)下級生に良いものを残せたんじゃないかと思っています」とコメント。木藤監督は「地域も盛り上がっていると聞きました。国見町の元気印というかシンボル的な、街を盛り上げるように存在になろう、と生徒たちが思ってやってくれている。本当はファイナルに行ってという目標がありましたけれども、そういうのも踏まえた時に彼らのコツコツやってきたことが力になってきて、周りの人たちも応援してくれる。これを続けていくことが大事かなと思います」と語った。

 ここから先のステージで勝つためにはより多くのチャンスを作り、点を取れるチームにならなければならない。指揮官も「ここから決勝、優勝になってくると、そこが必要。点を取り切る力をつけたい」と求めた。守備の奪い方の質を上げ、ボールを動かす力、そして決め切る力も高めていく。

 夏の期間やリーグ戦を経て力を磨き、冬により上へ。平田は「選手権では県をまず取って、全国大会でも結果を残せるチームに。また一からスタートして行きたいなと思っています」。新人戦初戦敗退から全国3位まで勝ち上がった国見が、成長を続けて選手権でより輝く。 

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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