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[MOM4394]桐光学園DF川村優介(3年)_誰よりも声を出し、前の試合以上の汗。危機感を持って積み上げてきたCBが桐光を救う

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桐光学園高CB川村優介(3年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)がスライディングタックルを決める

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[8.3 インハイ準決勝 桐光学園高 0-0(PK5-4)国見高 花咲スポーツ公園陸上競技場]

 目の前のことを一つ一つ積み上げてきたCBが、チームを救った。後半35+7分、桐光学園高(神奈川1)はGK渡辺勇樹主将(3年)が国見高(長崎)の右クロスに対応。飛び出してわずかにボールへ触れたが、このこぼれ球をヘディングシュートで狙われた。

 ボールはGK不在のゴール方向へ。だが、「結構気合入れて、相手ドフリーだったので守ってやろうと思っていた」というCB川村優介(3年=横浜F・マリノスジュニアユース追浜出身)が落ち着いて頭でクリアする。思っていたよりもシュートが緩かったというが、味方の窮地で当たり前のようにゴールカバー。この試合最大のピンチを凌いだ直後に後半終了のホイッスルが鳴った。

 渡辺は「自分が出て、(ゴール前は)無人だと思ったんですけれども、マジでホッとしました」と振り返る。そして、土壇場で好守を見せた川村について、「アイツ、最初はBチームで出ていたけれど、Bチームで先頭に立ってやってくれていましたし、Bチームの頃からAチームの練習に入っても誰よりも声出せる。日々やってきた結果が、今、(先発)DFとしてやってくれているのでとても頼もしい」と説明する。

 どんな時も変わらぬ姿勢を貫いてきた。川村は当初、神奈川県2部リーグに所属するBチームのメンバーとして公式戦に出場。その後、Aチームの先発で先発する回数を増やし、今大会はCB平田翔之介(3年)とともに最終ラインの中央で不動の存在となっている。

「自分がやるべきことをやることだけを考えていたら自ずと評価された感じです。前の試合よりも少しでも汗かかないとスタメン取れないと危機感持って自分はやっていたので、それが結果、こういう立ち位置に持ってこれたと思います」。桐光学園のCBのポジションはU-17日本高校選抜のCB青谷舜(2年)や、昨年から公式戦に出場しているCB川口泰翔(3年)もいる激戦区。だが、常に危機感を持って積み重ねてきたことが先発定着、そして大舞台の白星に繋がった。

 この日は、桐光学園が主導権を握る中での戦い。「主導権を握っている試合はカウンターが一番怖いので、そこは平田と一緒にチャレンジとカバーをして守るようにしています。自分がラインコントロールだったり、カバーリングだったり、戦術的な部分含めて後ろから発信しないと奪えないし、守れないと思っているので、そこは自分のウリでやっています」。川村は身体を投げ出してのタックルなどで相手の速攻に対応。被シュート4本、無失点で前後半を終え、最後は川村のキックで勝利を決めた。

 0-0で突入したPK戦。先攻・国見の2人目が外し、桐光学園は4人目を終えて4-3とリードする。国見5人目が決めると、直後に川村が桐光学園の5人目としてペナルティースポットへ向かった。味方にけが人が出たことで大事な5人目を担当。緊張せずに、吹っ切って助走したCBの右足シュートは狙っていたコースとは違ったようだが、GKの手を弾いてゴールネットを揺らす。この瞬間、勝利が確定。日本一に王手をかけた。

 川村は横浜F・マリノスジュニアユース追浜時代に右SB。隣でプレーしていたのは、U-19日本代表のリーダー格の一人、「中学の時、(能力が)凄かった。(隣で)ずっとこうしろああしろと言い合いばかりしていました」というCB畑野優真(現横浜F・マリノスユース)だ。川村は高校進学後にCBへ転向。全国舞台で対人、カバーリングという強みを発揮している。

 日本一まであと1勝。「自分、小さい頃から遠くの目標を掲げているのはあまりイメージが沸かないんで苦手なんですけれども、目の前のこと一つ一つ積み上げて、一つ一つ階段を上がっていくような形で、結果、日本一という形が自分にとってベストな日本一の取り方だと思うので、明日も一つずつ積み重ねてやっていきたいです」。決勝もいつも通りに全力プレーを貫き、目の前のタイトルを勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2023

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