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目標は国立で勝つこと。全国決勝の難しさ、2位の悔しさを感じた桐光学園が史上4校目の夏準V→選手権制覇に挑戦

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準優勝・桐光学園高の選手たちは明秀日立高の喜ぶ姿を見つめていた

[8.4 インハイ決勝 桐光学園高 2-2(PK6-7)明秀日立高 花咲スポーツ公園陸上競技場]

 全国2位の経験をしたのは、自分たちだけ。優勝校・明秀日立高(茨城)の喜ぶ姿を心に刻んだ桐光学園高(神奈川)は今冬、国立で勝つ。

 桐光学園は18年以降の5大会(20年大会は中止)で3度目のインターハイ決勝進出。前日の準決勝・国見高(長崎)戦で戦う姿勢の不足を鈴木勝大監督から厳しく指摘されていたこともあり、「昨日の試合後に全員を集めて、『このような試合をしていたら勝てる訳がないから、しっかりと気持ちを切り替えてよい準備をしよう』と話していた」(GK渡辺勇樹主将、3年)。その効果もあってか、立ち上がりは桐光学園の出足が勝っていた。

 だが、「良い守備から良い攻撃」を目指すチームの守りが崩され、前半19分までに2点を先取されてしまう。それでも前半31分、MF松田悠世(3年)の左足FKをFW宮下拓弥(3年)が頭で決めて1点差。宮下は、鈴木監督から「2点取って得点王取って来い」という檄を受けて決勝に臨み、今大会4得点目で得点ランキング首位に並んだ。

 0-2という苦しい状況から1点を返して前半を終了。後半は、前半から止まらない存在になっていた松田と怪我の影響で後半開始から出場したMF齋藤俊輔(3年)の突破力が明秀日立を苦しめる。鋭いドリブルで幾度もPA付近まで侵入。また、宮下は相手の注目DF山本凌主将(3年)との競り合いで上回る回数を増やしていた。

 ボールを支配する桐光学園はサイドチェンジの精度も高く、ピッチをワイドに使って攻め続けていた。そして、後半16分、MF小西碧波(3年)がセカンドボールを回収してからボールを繋ぐ。左サイドへ展開し、齋藤から出された鋭いパスを中央の松田が絶妙なコントロール。最後は豪快な左足シュートで決めて同点に追いついた。

 流れは桐光学園。だが、次の1点を奪うことができなかった。試合終盤、延長戦と鈴木監督が今大会成長したポイントに挙げる守備の粘り強さや前線のハードワークを発揮。優勢に試合を進めながら、ゴールを決めることができなかった。

 70分、延長戦を2-2で終え、PK戦で惜敗。鈴木監督は「力不足ですかね。アドバンテージを考えたら……(5試合目の桐光学園に対し、)明秀さんは6試合目だし、我々は幸運にも昨日この(会場の)天然芝でゲームができているので、もうちょっと上回らないと行けないところが、互角の勝負に引きずり込まれてしまった」と首を振った。

 初優勝の明秀日立は喜びを爆発。歓喜の声は表彰式後も会場内に響き渡っていた。鈴木監督は「2位の悔しさ、(相手の)喜んでいる声を心と耳に刻んで、また明日から努力していきたいと思います」と語り、渡辺は「2位は初戦敗退と同じで1位に立つから意味があると思うので。今日、決勝戦の難しさだったり、2位の悔しさを肌で感じられたので、この悔しさを毎日毎日練習にぶつけて冬に向かっていきたい」と誓った。

 選手・スタッフともに「決勝で負けたら、1回戦敗退と同じ」とコメントしていた。それでも、5試合を経験し、成長した大会になったことは間違いない。松田は「このインターハイの一週間を通して成長した場面の方が多くて、全然無駄じゃない準優勝だと思っています。ただ、優勝で終わりたかったという思いは全員が持っていたので、悔やんでもしょうがないですけれども、選手権があるので全員で向かっていきたい」と力を込めた。

 桐光学園の目標は「国立で勝つこと」。今回、全国決勝を経験して得たことを選手権決勝の舞台である国立競技場での勝利に繋げる。鈴木監督は「(インターハイを通じて、)全国の一番高いところに行くために何をしないといけない、何をしたらいけないかという判別が彼らにとって感じられたんじゃないか」とコメント。過去のインターハイ準優勝校で同年度の選手権を制しているのは1973年度の北陽高(大阪、現関西大北陽高)、1987年度の国見高(長崎)、2010年度の滝川二高(兵庫)の3校だけという難関だ。それでも、桐光学園はどんな戦いでも動じない強さ、選手層の向上、決め切る・決めさせない力を追求して、来年1月の選手権決勝を笑顔で終える。

(取材・文 吉田太郎)
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吉田太郎
Text by 吉田太郎

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