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[デンチャレ]「大きくて、特別上手いサイドバック」へのチャレンジ。U-20全日本選抜DF関根大輝が見据えるのは世界へと続く一本道

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大型右サイドバックとして注目を集めるU-20全日本選抜DF関根大輝(拓殖大2年=静岡学園高)

[3.2 デンチャレ グループA U-20全日本選抜 2-0 関東選抜B ひたちなか市総合運動公園]

 もう膨らんだイメージは、ハッキリとした像を結び始めている。右サイドを駆け上がり続けることで、今の自分の視界が捉えている、さらにその先に広がっていくであろう鮮やかな景色へ。

「今年でプロ入りを決めて、Jリーグデビューをしたいというのは個人的に凄く思っています。まだ進路は決まっていないですけど、今年はJリーグデビューを狙いたいですし、大学を卒業してから数年後には海外に行きたいなとは思っています」。

 187センチという恵まれたサイズと確かなサッカー観を併せ持った、U-20全日本選抜が誇る大型右サイドバック。DF関根大輝(拓殖大2年=静岡学園高)は新たなチャレンジへのスタートを、このひたちなかの地で力強く切っている。

 シンプルに悔しかった。デンソーカップ初日。U-20全日本選抜は関西選抜に0-4と大敗を喫する。「初戦に負けたこともそうですけど、僕は出られなかったことも悔しくて、なかなかチームに活気がなかった中で、(上林)豪と宿舎で『オレたちがそれを変えよう』『アピールすれば絶対にスタメンで出られるから』という話をしていたんです」と関根は試合後の様子を振り返る。

 昨シーズンもこの大会にU-20全日本選抜の一員として参加し、日韓定期戦に挑む全日本大学選抜にも選出されるなど、着実に戦うステージを自らの力で上げてきたが、初戦は出場機会もなく、チームも敗戦。このままで終わるわけにはいかない。危機感と悔しさを携えて、2日目の東北選抜戦に向かう。

「去年はいろいろな経験をさせてもらって、この中でも経験値はある方ですし、その中で自分が引っ張っていかないと、という想いはあったので、声を切らさないようにというのは意識していました」。とにかくポジティブな声を出し続ける。関根が、GKの上林豪(明治大2年=C大阪U-18)が、MF山市秀翔(早稲田大1年=桐光学園高)が、初日の試合に出られなかった3人は、とにかくチームメイトを鼓舞し続ける。

 1点リードで迎えた終了間際の後半45分。右サイドバックに見せ場が訪れる。MF藤井海和(流通経済大2年=流通経済大柏高)から高い位置でボールを受け、縦に持ち出しながら上げ切った正確なクロスは、中央で待っていたFW日野翔太(拓殖大2年=堀越高)の頭にドンピシャで届く。

「最初は正直トラップしてシュートを打とうと思ったんですけど、トラップがちょっと流れてしまって、それで前のスペースが凄く空いていたので、ドリブルも得意なので縦に行ったんです。あの形のクロスは結構練習していて、今回の合宿に来てからの練習でも凄く感触は良かったので、ああいうところで出せて良かったですし、アシストが付いて嬉しかったです」。雪辱を期した一戦は2-0で快勝。関根の見事なアシストも、チームの白星に華を添える結果となった。

 大会3日目に行われた関東選抜B戦にも、関根はスタメンに指名される。このゲームでより意識していたのは的確なポジショニングだ。「自分は内側を取ってプレーするのが得意で、サイドハーフが中を取るような選手だと、まだうまく行かないことも今回の選抜でもあったんですけど、自分も外を取ってアーリークロスを上げるような練習は最近の自チームでもしていたので、サイドハーフが内側に入る選手の時にはそういうところも意識していますね」。

 前半はMF中島舜(流通経済大2年=柏U-18)、後半はMF角昂志郎(筑波大2年=FC東京U-18)と右サイドハーフも入れ替わる中で、バランスを見ながら内側と外側を巧みに取り分け、積極的に攻撃参加。果敢にミドルシュートも狙うなど、連戦とは思えないようなパフォーマンスを披露する。本人は「今日もまだ消えている時間が長かったので、もっとボールを呼び込むポジショニングを、いろいろな試合を見て勉強しないといけないなということは感じています」とは言うものの、この日も2-0のスコアでもぎ取った勝利に、19番もきっちり貢献してみせた。

 もともと静岡学園高時代からCBを主戦場にしてきたが、大学1年の夏過ぎからサイドバックへコンバートされたことで、持ち合わせていた攻撃力が開花。「サイドに行ってからは中の状況が凄く見えるようになりましたし、身体の向き1つで相手のサイドハーフの立ち位置が変わってくるのもあって、サイドバックはそういう部分も凄く楽しいなと思っています」と話すように、着実に右サイドバックとしての地歩を固めてきた。

 だが、前述した日韓定期戦で2度とも試合出場が叶わなかったことが、自身の意識に変化をもたらしたという。「自分の中でシンプルにもっと技術を上げないといけないなって。今までは『大きいけど、ちょっと上手い』みたいなイメージだったと思うんですけど、『特別上手い選手』という存在になりたいんです。たとえばトップ下やボランチで出ても、遜色なくできるくらいのサイドバックになりたいので、今年はトラップやパスだったり、ワンタッチのダイレクトで斜めに差し込むボールとかは凄く意識してやっています」。

 とりわけ参考にしているのは、プレミアリーグで首位を快走するアーセナルの左サイドバックだ。「アーセナルもジンチェンコがメチャメチャ内側に入るじゃないですか。僕は右ですけど、凄く参考になるなと。ボランチみたいにずっと中に入ってゲームを作っていて、ああいうのを理想としたいですし、たぶんこの身長があれば自分も世界でもやれるなという自信はあるので、もっと技術レベルを上げないといけないなと思っています」。

 プレミアリーグを好んで見ているのは、面白いからという理由だけではない。自身の思い描くこの先の未来予想図を、しっかりと投影しているからだ。「選手個人のレベルも高いですし、見ていて面白いことと、将来はプレミアに行きたいので、あのスピード感を今のうちに見ておけばとも考えていて、常に高いレベルを意識して勉強しています」。

「もっと全然上手くならないといけないことはわかっているんですけど、だんだん自信も付いてきて、今もプロになることが目標ではなくて、プロになるのは当然にしなくては、という考え方になってきているので、もっと上で活躍することを目指してやっていきたいです」。

 コンバートから1年あまりで、周囲から大きな期待を集めるまでに成長を遂げてきたのびやかな才能。関根は『大きくて、特別上手いサイドバック』を目指して、昨日の自分を超え続けていく。

(取材・文 土屋雅史)
●第37回デンソーカップチャレンジサッカー茨城大会特集

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