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[MOM884]国士舘大FW坂巻日向(4年)_苦しみ抜いた大学生活、参考にした藤田譲瑠チマの姿勢

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FW坂巻日向(4年=東京Vユース)

[大学サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[7.15 関東大学L1部第10節 中央大0-2国士舘大 中大G]

 アミノバイタルカップを優勝した国士舘大が、勢いのままに今季リーグ戦初勝利を挙げた。また勝ち点2差で迎えた中央大との“裏天王山”を2-0で制したことで、順位も逆転して最下位を脱出した。

 先制点がチームに勇気を与えた。前半21分、国士舘大はFW古川真人(4年=実践学園高/東京V内定)のスルーパスからDFの背後を取ったFW坂巻日向(4年=東京Vユース)がGKとの1対1を制してゴールネットを揺らした。

 約1か月ぶりに再開されたリーグ戦だが、中断前までの9試合で挙げた総得点数は7。これはリーグワーストの成績で、6月の3試合をすべて0-1で落としていたように、課題は明らかだった。

 先制点が重要だということは誰もが分かっていた。さらに坂巻にとっては大学での公式戦初ゴールにもなったことで、「チームとしては勝利が絶対に欲しい試合だったし、個人的にも結果が残せてとても嬉しいです」と、より充実感を漂わせた。

 東京ヴェルディの下部組織出身で、同期はMF山本理仁(G大阪→シントトロイデン)、MF藤田譲瑠チマ(横浜FM)、DF馬場晴也(札幌)、MF松橋優安(山口)、MF石浦大雅(愛媛)がトップ昇格した。

 坂巻もそんな黄金世代の一員として全国大会で得点を決めるなど存在感をみせていたが、一番アピールが必要だった高校3年生の春に膝を手術。シーズンをほぼ棒に振る大怪我をしてしまった。大学で力をつけ直そう――。坂巻は決意を新たに、ユースの先輩のDF谷口栄斗やDF綱島悠斗(ともに東京V)がいた名門・国士舘大サッカー部の扉を叩いた。

 しかし大学サッカーはすぐに試合に出られるほど、甘い世界ではなかった。Aチームに関わることすらままならず、4年生となった今季もシーズン初めはBチームからのスタートになっていた。ただそんな悩ましい状況下で支えになっていたのが、ユース時代の経験だった。

「理仁は別格だったけど、ジョエルなんかは高3の初めくらいから出始めて、そこからトップに上がってという感じだった。でもあいつのサッカーに対する姿勢とか、取り組みを知っていて、あいつだったらそうなるよなと思っている。だからジョエルの(試合に出られない期間の)姿を見ていたから、自分も諦められない感じでした」

 “諦めなかった”坂巻はBチームが戦うインディペンデンスリーグ(Iリーグ)で結果を残すと、リーグ未勝利と苦しむチームの起爆剤となるべく、6月3日の第7節の明治大戦で初めてベンチ入り。翌節からスタメンに定着すると、リーグを中断して行った総理大臣杯予選のアミノバイタルカップでも試合に出続けた。

 そしてリーグ再開後初戦となった中大戦で初ゴールを記録。「Iリーグで力をつけてトップチームで活躍するというサイクルは国士舘のいいところ。(Iリーグは)ここ最近、毎回全国の決勝まで行っていますし、Bチームでも力をつけることが出来ている」と胸を張る。

「ジョエルなんかA代表にも入って。雲の上の存在じゃないですけど、でも追いつきたいし、追い越したい思いは常にあって。負けていられないですね」

 意地悪な質問にも嫌な顔一つせず、正直に答えてくれた。坂巻の得点をアシストした古川とDFの要に成長したDF山田裕翔(4年=正智深谷高)は、来季の東京V入団入りを内定させている。発表になったのは、坂巻がようやくAチームに帯同できるとなった時期だった。「少し複雑なところはありますけど、個人的には応援したい。自分もまだプロを目指したいので、いい刺激になっています」。

 先日、国立競技場で行われたJ2第25節の町田対東京Vの試合を観戦した。「育成の時の先輩たちもたくさんいて、すごく刺激になりました。あのピッチでやりたいなと改めて思いました」。将来への決意をより強く持った。

 その将来を左右するであろう大きな大会がこの後待っている。国士舘大はアミノバイタル杯を優勝して、連覇のかかる総理大臣杯への出場を決めた。夏の全国大会でアピールできれば、スカウトの目にも必ず留まるはずだ。「連覇のプレッシャーはあるけど、まずは目の前の一戦一戦に集中すること。個人としても結果を出してチームの力になりたいと思います」。この夏、サッカー人生をかけた大勝負に出る。

(取材・文 児玉幸洋)
●第97回関東大学L特集

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