beacon

[SBSカップ]”お祭り男”が見せた勝利後の気遣い。U-20関東大学選抜DF池谷銀姿郎(筑波大)が誇るピッチ内外での貢献度

このエントリーをはてなブックマークに追加

U-20関東大学選抜のムードメーカー、DF池谷銀姿郎(筑波大1年=横浜FCユース)

[8.20 SBS杯第3節 U-18日本代表 2-2 PK3-5 U-20関東大学選抜 エコパ]

 相手のアタッカーと激しく競り合っていても、PK戦のあとに敗れた相手の選手たちへ真っ先に近付いていっても、優勝の歓喜を満面の笑顔で喜んでいても、その男の佇まいはいつだって変わらない。それが、その価値を一層浮き立たせていく。

「自分たちはU-18の代表選手より世代は上で、『そんなに甘くないよ』ということを教えてあげるのが責任だと思っていましたし、彼らはこれからW杯を控えている選手たちばかりだと思うので、そこで新たな刺激を与えられるようにというのはチーム全体で意識していました」。

 U-20関東大学選抜をピッチ内外で盛り上げていた“お祭り男”。DF池谷銀姿郎(筑波大1年=横浜FCユース)の明るいキャラクターは、いつでも、どこでも、まったく変わらない。

「僕自身も知っている選手は多かったですけど、なかなか一緒にやる機会のなかった選手もいたので、『どんな選手なのかな?』というのは探り探りやっていたところもありましたね」。そう池谷が振り返るのは、SBSカップ初日の静岡ユース戦。チームを率いる佐藤健監督が「出場が決まったのが土曜日で、メンバーを決めたのが日曜、集合したのが火曜でした」と明かしたように、U-18パラグアイ代表の出場辞退を受け、急遽大会参加が決まった経緯もあり、迎えた“木曜の初戦”は0-0からのPK戦勝利。大学生としての違いを見せられなかったチームには、試合後に指揮官から厳しい檄が飛んだという。

「『もっともっとできるんじゃないか』ということを監督からも言われましたし、第2戦の韓国戦はみんなのやるべきことがハッキリしましたね」(池谷)。迎えた2戦目の相手はU-18韓国代表。初戦に続いてスタメン起用された池谷は、1点をリードした前半29分にMF小川雄輝(中央大1年=FC東京U-18)の左CKにヘディングで合わせ、貴重な追加点を挙げてみせる。

「ヘディングは自分の強みのところですし、小井土さんからも『韓国のウイングの選手は速いから、そこをしっかり抑えて、セットプレーで1個獲ってこい』と言われたので、ゴールを獲ることは意識していました」。普段は筑波大で指揮を執り、今大会はU-20関東大学選抜にも帯同している小井土正亮“コーチ”の指示に結果で応える役者ぶり。試合も4-1と快勝を収め、チームは上向きの状態で最終日へ向かう。

 最後に対峙するのはU-18日本代表。大学生の彼らにしてみれば、基本的に1つ下の世代の“後輩”たちであり、負けるわけにはいかない相手だ。また、池谷にとってこの一戦は、かつてのチームメイトとの再会の舞台でもあった。

「なかなか会わない間にスーパーな選手になっていて、そこは驚きながらもリスペクトしていますけど、今日はそこまでリスペクトし過ぎずに、自分の強みを出そうと思っていました」と言及するのは、U-18日本代表のFW塩貝健人(慶應義塾大1年=國學院久我山高)。2人は横浜FCジュニアユース時代のチームメイトであり、「アイツとは小学校も同じチームですけど、ジュニアユースで一気に伸びたというか、手の届かない存在になったなと思っていました」と話す塩貝も、この一戦により気合を乗せていたことは想像に難くない。

 U-20関東大学選抜が1点をリードしていた後半24分。右サイドを持ち運んだ塩貝が飛び出したGKの頭上をループシュートで破ったが、ここに全力で戻ってクリアしたのは池谷。「自分の強みとしてカバーリングもあるので、やって当たり前のプレーかなとは思います」とは本人だが、ゴールを巡って2人の思惑が交錯する。

 ただ、終盤に塩貝も意地の同点弾を叩き出し、2-2のままで突入したPK戦は、「『いろいろ関係ないでしょ。気持ちでしょ』という感じで蹴りました(笑)」と口にした4人目の池谷も含めて5人全員が成功したU-20関東大学選抜が、しぶとく勝利を引き寄せる。

 決着が付いた直後。歓喜の輪を作るチームメイトから1人離れた池谷は、相手GKのもとへと向かって健闘をたたえたあとも、U-18日本代表の選手たちと1人1人握手を交わしていく。「80分間一緒に戦った相手ですし、PK戦まで戦った相手として、リスペクトを欠いていたらこんなゲームはできていないので、『2年後まで頑張れよ』という意味も込めて励ますような感じでした」。この人はそういう男なのだ。



 筑波大でも少しずつ公式戦での出場機会を獲得し始めているが、既にピッチ外でも存在感を示しつつある。7月から8月にかけて、筑波大学蹴球部のSNSでは“ハッピ”を着用し、“手ぬぐい”を頭に巻いた池谷の姿が、連日のように公開されていた。

「アレは“お祭り男”ですね(笑)。先輩から『8月5日の法政戦を盛り上げてみない?』ということで、自分がインスタやTwitterでいっぱい広報することで『少しでも多くの人が来てくれるかな』と思って、やりました。ああやって自分が大々的にやることで、いろいろな人に試合を見に来てもらえれば、自分たちも気持ちの入ったプレーができますし、多くの人に“1グラ”に来てもらうことが、これからも目標だと思っています」(池谷)。

 実際に8月5日の関東大学リーグ・法政大戦には、“1グラ”=筑波大学第1サッカー場に1000人近い来場者が訪れ、試合も3-0で快勝。90分間フル出場した池谷が、ピッチ内外でこの日の勝利に貢献したことは間違いないだろう。

 来月からはリーグ戦も再開され、シーズンも佳境に入っていく。首位を快走する筑波大にとっても、6年ぶりのリーグ制覇に向けて勝負の時間が続いていくが、この1年生ディフェンダーも確実に重要なピースを担っている。

「まずは筑波の中で中心的人物になりたいですね。他の1年生も試合に出ていて、内野(航太郎)も活躍していますけど、それは自分にとってもとても良い刺激なので、もっと試合に絡んでいくこと、内容の質を上げていくこと、あとはサッカーの次に筋トレが好きなので、もっともっと筋トレに打ち込みたいです(笑)」。

 メリハリの効いた、筑波大が誇る“お祭り男”。池谷の明るいキャラクターは、いつでも、どこでも、まったく変わらない。



(取材・文 土屋雅史)
土屋雅史
Text by 土屋雅史

TOP