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ジーコ監督が埼スタ初黒星。奇策“マンツーマン3枚つぶし”実らず

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[9.11 W杯アジア最終予選 日本1-0イラク 埼玉]

 ジーコジャパン時代にはおよそ見られなかった“奇策”が飛び出した。

 イラク代表のジーコ監督が日本に対して採った戦術は、中盤の3枚であるトップ下の本田圭佑(CSKAモスクワ)と、ダブルボランチの遠藤保仁(G大阪)、長谷部誠(ボルフスブルク)にそれぞれマンマークを付けることで日本の生命線である中盤のパスワークを奪うというもの。しかも、長谷部と遠藤をマークしたのは、4-1-3-2システムで2トップを担うFW勢だった。

「日本のスピードに対応するために若い選手を使った。オマーン戦と同じメンバーで戦っていたら大量失点していた可能性もある」

 そう振り返ったように、イラクの先発メンバーの中には国際Aマッチ初出場が3人含まれており、攻撃の中心であるナシャト・アクラムとユーヌス・マフムードはコンディションが悪いという理由でベンチスタート。“ジーコイラク”は、少なくとも前半は攻撃を捨ててでも失点を防ぐという超守備的なスタンスで試合に入った。

 これにはジーコジャパン時代に先発で30試合、途中出場で10試合出場した遠藤も当惑。取材陣に「イラクの攻撃にジーコらしさを感じた部分はあったか?」と聞かれ、「いや…特にないですね」と返答するしかなかった。

 02~06年の日本代表監督時代は「非公開練習なし」「先発11人を試合前日の会見で発表」というスタイルを貫いた。ピッチでも「うるさいことを言う監督ではなかった」(遠藤)と、選手を全面的に信頼し、自由を与えていた。

 今回来日した際も、練習は前日の公式練習も含めてすべて公開し、“ブレないジーコ”を見せつけていた。先発メンバーに関しては「直前に言えばいいこと」と明かさず、そこだけは日本時代とは違っていたが、「現代のサッカーは互いの情報をみんな持っているので、奇策は必要ない」と言い切る姿にはジーコらしさがにじみ出ていた。

 ところが、ふたを開けてみれば、3人に対してのマンツーマンDFは、まるでバスケットボールコートでやっているかのようなしつこさで、これを奇襲と言わないわけにはいかないような戦術だった。

 遠藤が「それによって日本の良さを消された気はしない」と言ったように、成果は出なかったが、日本から勝ち点を取るんだという気概を感じさせるものだった。

 結果的には0-1で敗れ、ジーコジャパン時代に続けていた「埼玉スタジアム無敗記録(7勝2分)」が10試合目にして崩れたうえに、試合後、ザッケローニ監督と握手する場面もなかったが、「彼とは古くからの友人なので、握手を忘れられたからと言って問題にはならないよ」と意に介す様子はない。「ザッケローニ監督を祝福したい」と話す鷹揚な姿に、日本のサポーターからも「ジーコ!」コールが起きた理由が見えた。

(取材・文 矢内由美子)

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