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逆転劇導く“日本分析”明かしたイラン指揮官「2つの戦術的指示を出した」アジア連盟への公然批判も

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アルデシル・ガレノイ監督とMFサイード・エザトラヒ

 アジアカップ準々決勝で日本を破ったイランは7日、準決勝で開催国のカタールと対戦する。6日の前日会見に出席したアルデシル・ガレノイ監督とMFサイード・エザトラヒは、中3日での決戦に向けて「日本戦のことは忘れなければならない」と口を揃えた。

 日本と戦った3日の準々決勝では最後の最後に試合を決めたイラン。前半28分に守備陣の連係ミスから失点を喫したものの、ハイボール攻撃を徹底した後半10分に同点に追いつき、最後はアディショナルタイム6分にMFアリレザ・ジャハンバフシュがPKを決めた。ドラマティックな形での準決勝進出に、選手たちは優勝したかのように歓喜を爆発させていた。

 それでも指揮官は切り替えを求めた。「明日の試合はとても大事になる。我々がこれまでやってきたことはノックアウトステージを勝ち抜いて決勝戦に進むということだけ。選手たちには日本戦のことは忘れろと伝えた。大事なのはカタールを倒して決勝に進むことだ」。劇的勝利のムードを引きずれば、足をすくわれかねない一戦。日本戦にボランチでフル出場したエザトラヒも「監督の言うとおり日本との試合は忘れなければならないし、カタールとの試合に集中しないといけない」と力を込めた。

 イランの記者からは日本戦の失点につながったミスに関する批判的な質問も飛んだが、「分析セッションでもミスがあったのは確かだし、二度と起こらないように注意を払う。ただ、その準備はできているし、明日の試合に集中できている」とエザトラヒ。また指揮官は分析チームへの信頼を示すべく、「私はドレッシングルームでも指示をしているが、試合中には分析グループが我々に情報やビデオを送ってくれている。日本戦のハーフタイムにもそれに基づいて2つの戦術的な指示を出した」と述べ、次のように明かした。

「まず1つ目の戦術的な指示は日本の3センターをいかに試合から外していくか。そして2つ目は日本のサイドバックとセンターバックの間、そしてセンターバックの裏のスペースをいかに使っていくかだ」。後半は日本の中盤の久保建英、守田英正、遠藤航がセカンドボール対応に追われ、最終ラインも跳ね返しに苦慮していたが、指揮官はその成功体験を批判への牽制に持ち出した。

 会見では大会を運営するアジアサッカー連盟(AFC)への批判も随所に込められた。カタール戦との準決勝ではクウェートのアハマド・アルアリ氏が主審を担当する予定。エザトラヒは会見の冒頭で「我々にとって驚きだったのは、明日の試合の審判だ。彼はクウェート出身であり、アラブ人だ。明日の試合に向けてアラブ人の主審を起用することができるのかと困惑している」と疑問を投げかけた。

 またガレノイ監督は主審の選定に関しては「AFCのマッチコミッショナーの決定によるものだ。我々テクニカル部門には関係ない」と皮肉混じりに述べつつも、日本戦までの試合間隔がFIFAルールの72時間未満だったことを再び指摘。さらに「またVARが我々に親切ではない。日本戦ではサルダル・アズムンにペナルティかもしれないシーンがあったが、VARはチェックしてくれなかった」とGK鈴木彩艶と交錯した場面に関する不満も述べた。

 一方、エザトラヒは「ただ我々はイラン代表だ。とても偉大なチームであり、素晴らしい選手が揃っている。我々はプロフェッショナルだ。プロフェッショナルなテクニカルスタッフもいる。カタールを倒して、決勝に進むことが最優先だ」と意気込み。指揮官も「我々はこのトーナメントで起きていること全てに強くならないといけない」とリバウンドメンタリティーを強調した。

 カタール戦はイランにとって48年ぶりの決勝進出がかかる一戦。その間、準決勝は6回も敗れてきた鬼門にあたる。指揮官はそんな開催国との大一番を前に「カタールはとても素晴らしいチームであり、ディフェンディングチャンピオンだ。彼らはこの数年、フットボールを進歩させるために多額の金を使ってきた。だが、我々はイランだ。非常に良いチームを持っている」と自信も示した。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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