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初観戦の『S』に捧げた“手品パフォ”…カタールFWアフィフが史上初の決勝3発、アジア杯MVP&得点王に

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『S』のカードにキスするFWアクラム・アフィフ

[2.10 アジア杯決勝 ヨルダン 1-3 カタール ルサイル]

 前代未聞の“手品パフォーマンス”は、晴れ舞台を見守ってくれた愛する妻へのメッセージだった。

 カタール代表FWアクラム・アフィフ(アルサッド)はアジアカップ決勝の前半22分、自ら獲得したPKを右に決め、先制ゴールを奪うと、ソックスに隠し持っていたカードを使ってゴールパフォーマンスを披露。自らの写真を中継カメラにアピールしたかと思いきや、カードを素早く振ると、アルファベットの『S』の手書き文字が現れるというトリックを仕込んでいた。

 試合後、記者会見に出席したアフィフは「『S』は妻の名前の頭文字だよ」とパフォーマンスに込めた思いを明かした。「妻はクウェート出身で、今日は彼女が初めてスタジアムに見に来てくれた。今までスタジアムで見てくれたことは一回もなくて、彼女にとって初めての試合だったんだ」。決勝に臨む自らの勇姿を初めて見ていた妻へのメッセージだったようだ。

 妻が見守る中、モチベーションを燃やしたアフィフはその後も止まらなかった。1-1と追いつかれた後半28分、VARで相手のファウルが確認され、再びPKを獲得すると、GKは右のコースを狭める駆け引きをしてきたが、迷わず左のコースにキック。キッカー不利だとされる2度目のPKを難なく決め、再び勝ち越しに導いた。

 さらに後半アディショナルタイムにはロングボールに抜け出し、GKに倒されると、一度はオフサイド判定が下されたが、再びVARが介入。オフサイドはなかったことが確認され、3度目のPKが与えられると、このキッカーも務めた。。今度は1本目や2本目とは異なる右のコースへ。アジア杯決勝史上初となるハットトリックをPKだけで達成してみせた。

 試合後、PKの秘訣を問われたアフィフは「PKは技術やコースではない。決められたのは仲間が僕を信頼してくれたからだし、人々が自分やチームの背中を押してくれるという感覚があるからだよ」と断言。VARによって与えられたPKには疑念の声も飛んだが、「オフサイドはVARでクリアになるし、ファンも見ることができる。僕はただの一選手だから審判の判断に従ってプレーするだけだよ」と冷静に切り返していた。

 そんなアフィフはこの日のハットトリックにより今大会通算8ゴールを記録。表彰式では単独得点王に加え、最優秀選手賞(MVP)もダブル受賞した。マルケス・ロペス監督は会見で「アクラムのことをとても嬉しく思っている。彼は全ての賞を受賞するのに値する働きをしたからね」と太鼓判を押していた。

 そんな27歳にはアジア最高の選手としての期待もかけられており、会見では海外メディアを中心に欧州移籍の可能性に話が及んた。だが、アフィフは「そういうことはよく検討しないといけない。決めるのは僕だけじゃないし、妻と一緒に決めないとね」とサラリ。「これは運命だ。そうあるべきことならそうなると思う。とにかくベストを尽くしたい」と述べるにとどめ、「いまわかっていることは連覇ができたということ。とても幸せだし、次のアジアカップまでは楽しむつもりだよ」と喜びに浸っていた。

(取材・文 竹内達也)

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竹内達也
Text by 竹内達也

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