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大ピンチで団結力強めた尚志、JFAアカデミー福島に「経験がないような勝利」で2回戦へ

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9人で戦い抜いた尚志

[12.14 プレミアリーグプレーオフ1回戦 尚志高 1-1(PK4-3)JFAアカデミー福島 広島一球]

 高校年代最高峰のリーグ戦への参入をかけた高円宮杯JFA U-18サッカープレミアリーグ2018プレーオフは14日に1回戦を実施した。尚志高(東北1/福島)とJFAアカデミー福島(東海2/静岡)の一戦は、前半に先制ゴールを奪った尚志がペースを握る試合となったが、JFAアカデミー福島が後半アディショナルタイムに同点ゴール。白熱の攻防の末、PK戦を制した尚志が勝ち残りを果たした。

 現在は静岡を拠点に活動を続けているJFAアカデミー福島だが、チーム名が示すとおり東日本大震災以前は福島県で活動していた。そのチームが高円宮杯プレミアリーグ復帰を懸けた試合で高校サッカーの福島王者・尚志と激突することとなった。

 立ち上がりはやや慎重に試合へ入った尚志に対し、JFAアカデミー福島がMF瀬畠義成(3年)らを中心とした得意のポゼッションプレーから押し込む時間帯を多く作る展開となる。ただ、「ウチの精神的支柱」と仲村浩二監督が信頼を置くDF馬目裕也(3年)を中心に尚志がしっかり対応。前半は相手のシュートをわずか2本に抑え込んでみせた。

 攻撃でも尚志は抜け目なさを見せ付けた。「マリーシアでしたね」と仲村監督が微笑みながら振り返ったのは、前半38分の得点場面。ラインアウトからJFAアカデミー福島側がマイボールを主張する中、U-17日本代表FW染野唯月(2年)がクイックリスタートでスローイン。あっさりと裏を取ったMF加瀬直輝(3年)が右サイドを破って折り返すと、FW二瓶由嵩(3年)が前で潰れ、後ろに入っていたMF吉田泰授(3年)がフィニッシュ。見事な形で先制点を奪い取った。

 だが後半に入ると、尚志をアクシデントが襲う。まずは後半5分、守備の要である馬目が負傷交代を余儀なくされ、ゲームプランが大きく狂うこととなった。何とか1点を返そうとするJFAアカデミー福島は、SBの菊地健太(3年)らも果敢に攻撃へ加わって攻勢を強め、尚志は確実に劣勢となっていった。

 それでも水際で踏ん張りを見せていた尚志だが、後半45分、ついに決壊。絶妙なタイミングで裏抜けをしてきたFW植中朝日(2年)をGK森本涼太(3年)がPAのすぐ外で倒してしまい、一発退場。このFKのピンチはしのいだものの、その直後にエースの染野が相手のキックを頭部に受けて負傷し、ピッチの外へ。9人になってしまった状況で、FKの流れから最後は植中に押し込まれ、土壇場で同点ゴールを許してしまった。

 延長戦突入後、染野はいったんピッチに戻ったが、すぐにプレー続行不能と判明して退くことに。交代枠は使い切っていたため、尚志は9人で延長戦を戦うことになった。「9人でやった経験はまったくなかった」(MF大川健、3年)という状態だったが、中で人数不足に陥らないように、外へ出される形はある程度あきらめる守備を徹底。もともと逃げ切り策として「とにかく走れる選手」(仲村監督)であるFW河村匠(3年)をピッチに入れていたこともあり、運動量と集中力で人数不足をカバーしながら、JFAアカデミー福島に対抗した。

「逆に一体感が出た」と仲村監督が振り返ったように、大ピンチで団結力を強めた尚志イレブンは結局、最後まで決壊せず。年代別日本代表経験者をズラリとそろえた相手に対し、11対9の数的不利ながらも最後まで耐え抜き、PK戦へと持ち込んだ。このPK戦では交代出場のGK鈴木康洋(2年)が1本をセーブするなど奮闘。PK4-3で尚志が2回戦へと駒を進めることとなった。

「魂ですね。魂を見せてくれました」。そう言って破顔した仲村監督は「ちょっと経験がないような勝利でした。本当によく戦ってくれました」と、大ピンチを乗り切った選手たちへ賛辞を惜しまなかった。

(取材・文 川端暁彦)
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