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存在感のFW鯉沼「全国を見据えて、質を」。國學院栃木は異質のスタイル追求し、栃木の壁突破に挑戦

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國學院栃木高の前線で存在感を放ったFW鯉沼宏輔主将

[5.15 関東大会栃木県予選準決勝 真岡高 1-0 國學院栃木高]
 
 國學院栃木高は後半アディショナルタイムの失点によって0-1で敗戦。だが、個々の技術力が高く、その特長を活かした攻撃スタイルのサッカーで優勝校の真岡高を苦しめた。

 前半からボールを支配する時間を増やし、一際存在感を放ったFW鯉沼宏輔主将(3年)が相手のプレッシャーを受け流すようなドリブルでゴールへ迫っていく。前後半ともにサイドを活用した攻撃などから決定機を創出。自分たちのサッカーをやり通したが、結果に結びつけることはできなかった。

 鯉沼は「ボール回して自分たちで支配しながらやる。その点に関しては、自分たちが栃木で一番自信を持ってやっています。自分たちのサッカーを追求しながら選手権にみんな目標を合わせてやっていて、その過程としては良い試合だったんですけれども、勝ち切って関東で良い試合とかができたら、もっと自分たちのサッカーを追求できた」と残念がった。

 それでも、今後への期待が膨らむような内容だったことは確かだ。鯉沼、右SB根本絹功(2年)とともに大会優秀選手にも選出された10番MF堀田悠斗(3年)やMF但野修平(2年)らが自分たちのテクニックをピッチで表現。バイタルエリアを崩す回数を十分に増やすことができず、無得点に終わったが、ミスを怖れずにゴールへ向かおうとしていた。

 前線で存在感を放った鯉沼は「自分の得意なプレーは前を向いてドリブルすること。自分のやりたいサッカーはできた」と頷く。当たり負けしない強さを持ち、スルスルとDFの間を抜けて行くドリブルは注目。高みを目指す姿勢も魅力だ。

 鯉沼は「全国見ると、こういう(自分のような)選手はざらにいると思う。自分では満足しないで、栃木だけを見るんじゃなくて、全国を見据えて、質を高めてやりたいです。メッシとか、アザールとか、日本でいうと三笘(薫)選手とか、個人で打開しながら周りも使える選手になりたい」と力を込めた。

 國學院栃木は80年代から90年代に掛けて選手権2度、インターハイに3度出場している私立高。矢板中央高や佐野日大高、真岡高がリードする栃木県の高校サッカーに、磨き上げた技術力と判断力で勝負を挑んでいる。

 中田勇樹監督は「技術とか判断ありきでやりたい。このサッカーで勝っていかないと県のトップに立てないし、全国で戦えるサッカーができないと思っているので、やり続けたいと思っています」と語る。

 目先の白星ももちろん求めていくが、それ以上にこだわっているのは自分たちのサッカーを追求すること。この日の先発の半数は160cm台と小柄な選手が多く、フィジカルやスピードの勝負で勝つことができないことを理解している。急ぎすぎることなく、時間を掛けて自分たちのサッカーを追求。この日も精度を欠いた部分があっただけに、満足することなくトレーニングで改善していく。

 昨年度の選手権では、中田監督の阪南大時代の先輩・仲井正剛監督率いる帝京大可児高(岐阜)が攻撃的なスタイルを貫き、青森山田高(青森)から2点を奪うなど印象的な戦い。「目標は帝京大可児のサッカー」(中田監督)。より戦う部分も必要。國學院栃木も帝京大可児のように技術力と判断力を駆使して相手の逆を取り、剥がしてゴールを奪い、栃木の壁を破る。

(取材・文 吉田太郎)

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