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苦手を強みに変えた努力の人。FC東京U-18MF加藤大地が極める“受けて、捌く”

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FC東京U-18のプレーメーカー、MF加藤大地

[10.3 プレミアリーグEAST第10節 市立船橋高 1-1 FC東京U-18 タカスポ]

 受けて、捌く。シンプルだが、この繰り返しがチームにリズムを生んでいく。ひたすら受けて、捌く。簡単なようで、簡単ではない。本来は得意なプレーではなかったのなら、なおさらだ。

「もともとはボールを受けるのが本当に苦手で、何なら自分が一番嫌いなプレーだったんですけど、歳を重ねていく上で『プロになるためには必要だな』と思っているので、そこは意識しています」。FC東京U-18(東京)のプレーメーカーは努力の人。MF加藤大地(3年=FC東京U-15むさし出身)が積み重ねてきた“受けて、捌く”は、今や絶対的な武器になっている。

「もうちょっと自分たちのサッカーがしたかったというのはあるんですけど、リーグが再開して負けなかったのは良かったと思います。でも、個人的にはもうちょっと攻撃に関われたらいいなと感じていますし、ミスもなくしていけばもっと良くなると思うので、そういうところは自分で意識していきたいです」(加藤)。

 市立船橋高(千葉)と対峙したプレミアリーグEAST第10節。相手が前線から激しくプレッシャーを掛けてくる中で、なかなかFC東京U-18は良い形で攻撃するまでには至らない。「今日は相手も前から来ていたので、もうちょっとバックラインから回せれば良かったと思うんですけど、自分も含めて個々の技術がまだ足りないので、もっと練習から頑張っていきたいと思います」。それでも逃げずにボールを引き出す加藤の姿勢は、チームの攻撃の始点になっていた。

 そこには自分の中でのこだわりが秘められている。「今日も公式戦なんですけど、自分がもっと上手くなれるように意識していますし、ボールを受けることを避けていたら上手くなれないので、そこは何回でもボールを受けることを意識しています」。むしろ公式戦だからこそ、成功体験は自分の技術に大きな後ろ盾を与えてくれる。だから、受けて、捌く。恐れずにボールをもらいに行く。

 そもそもU-15むさし時代はボールを奪うことに特化したプレーヤーだったと自身で振り返るが、U-18への昇格を機に考えが変化していったという。「U-18に来た時に、ボールを奪うだけでは試合に出られないと感じていて、『自分がうまくならないといけないな』と思ったので、練習しようと思いました」。

 特に成長のきっかけになったのは、新型コロナウイルスの影響による昨年の自粛期間。チームで練習することがままならない中で、そういう時期だからこそ重点的に取り組んだことが、ボールを受けることだった。

「ボールを受けることに関しては、それが自分の課題でしたし、『そこを見直そう』と思っていて、ちょうどコロナ期間で休みが結構長くあったので、その間に友達とボールを蹴って、周りをしっかり見るような練習はよくしていました」。この“自主トレ”が加藤の意識とプレーにポジティブな変化をもたらす。

 苦手だった部分が、強みに変わる。今シーズンも8試合を消化したプレミアで、全試合フル出場を続けているのはチームの中で加藤のみ。「大地は去年の途中ぐらいから凄く自信を持ってやってくれています。その前は守備だけの選手という感じだったんですけど、昨年から技術とかボールを受けるということに関して、凄く真摯に自分で取り組んでいて、今は本当にチームの中心としてやってくれていると思います」とは中村忠監督。指揮官の信頼も間違いなく厚い。

 そんな中村監督が面白いエピソードを教えてくれた。「たまたま彼とは近所なんですけど、3年生だから学校がちょっとずつ少なくなるじゃないですか。だから、そういう時に自主トレをやっていたりして、この前もバッタリ会いました(笑)」。そのことを本人に尋ねると、「会いましたね。いやあ、焦りました(笑)。少しだけ話もしましたけど」と笑顔。そんな地道な努力を積み重ねられるのも、この男の大きな魅力だ。

「まず気持ちの面で恐れないでボールを受けるのと、常にボールを受ける前に周りの状況を確認して、常にワンタッチかツータッチで出せるところを探すことを意識しています。1年前は試合に出られない状況だったので、自分が成長して試合に出られているというのは実感していますし、このまま成長していければいいなと思っています。自分は大学を卒業してプロの世界に入っていきたいですし、夢は世界で活躍することなので、そこを目指して頑張っていきたいです」。

 以前、加藤のプレーを見ていたあるクラブの関係者が「あの子、全然プロでやれるんじゃないかな」と話していたことを思い出す。これから4年間の経験を得て、プロの道へ辿り着くため、そして世界へと羽ばたくため、積み重ねられる努力はすべて積み重ねていきそうな加藤の未来がとにかく楽しみだ。

(取材・文 土屋雅史)
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