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納得の先発落ちも、ピッチで見せつけた力。静岡学園は徳島内定MF玄理吾が流れ変え、会場沸かせる

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静岡学園高は徳島内定のMF玄理吾が技巧で流れを変えた

[12.12 高円宮杯プレミアリーグプレーオフCブロック決勝 静岡学園高 3-2(延長)愛媛U-18 バルコム]

 静岡学園高が後半半ばから取り戻した“静学らしさ”。それをもたらしたのは、徳島内定のMF玄理吾(3年=FC Libre出身)だった。

 静岡学園は前半、サイドからの崩しとショートカウンターによって2得点。相手の鋭い寄せを掻い潜ってチャンスを作り、リードを広げて前半を終えた。守備ではシュートを打たせたり、剥がされるシーンがあったものの無失点。結果としては悪くなかったが、攻撃リズムが好転しなかったチームは、後半立ち上がりの連続失点で苦しい展開へ追いやられた。

 だが、急いで攻めて失うシーンが増えていたチームを玄が立て直した。後半16分、中盤中央に入った玄は、積極的にボールを呼び込んでビルドアップの中心に。キック精度の高い左SB野村海翔(3年)が縦パスを狙おうとすると、大声で「待て!!」。組み立て直させてボールを受けると、正確なタッチでグラウンダーのパスを繋いでいた。

 この日、愛媛U-18は手の届くような距離感で強度高い守備。静岡学園は多くの選手が苦しんでいたが、“王国の精密時計”こと玄は「引っ張られる前に叩いたり、完璧に逆突いたり、判断速くするところは速くして、自分がボール持つところは持ってという感じで、ドリブルとパスするところは上手く使い分けて凄く困惑させられたんじゃないかと思っています」という動きを見せる。2人掛かりで取りに来た相手を鮮やかにかわすとどよめきの声も。見る人を楽しませることも表現していた。

 玄の存在によってボール保持の時間を増やした静岡学園は、攻め続けて迎えた延長後半3分に同じく交代出場で流れを変えたMF高橋隆大(2年)が決勝点。玄はダブルボランチとして先発したMF菊池柊哉(3年)とMF小泉龍之介(3年)の良さとは違う部分を発揮できたことを喜ぶ。「ビルドアップとかボール持つ部分は負けていないと思っているので、それをこの試合で(監督の川口)修さん含めて観客の人にも表現しようと思ってできたので、良かったです」。

 徳島内定の玄は今年、チームの絶対的な司令塔として君臨。静岡3冠やインターハイ3位に貢献してきたが、選手権予選優勝後のプリンスリーグ東海・浜松開誠館高戦でプレスバックや守備の強度が足りずハーフタイムに交代、川口修監督に叱責を受けた。

 リーグ戦のラスト2試合は後半途中からの出場。この日もベンチスタートだった。本人も「納得していました」という“サブ降格”。だが、このまま終わるつもりはなかった。「練習のA1とA2の紅白戦でも悔しい思いとかもしていたので、チャンスが来たら絶対にモノにするという思いでいました」。チームは2-0から追いつかれる苦しい展開。投入されると、“早く出たい”“流れを変えたい“の思いをぶつけ、川口監督も高評価するプレーを見せた。

「まだ全国もあって、その時にスタメンで出られるか分からないいんですけれども、『ラストのアピールする場所やな』と(同じ立場の)高橋とも話していて、交代で出場して良い結果に繋がったので良かったです」と微笑む。完璧な内容ではなかったかもしれないが、守備でも役割を遂行。アピールにも成功した玄は、選手権へ向けて「試合に出て、見ている人を楽しませて勝利に繋げたいです」。ポジション争いのライバルたちも強力だが、練習でまた信頼を勝ち取り、ピッチで勝利に貢献する。

(取材・文 吉田太郎)
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