beacon

日本高校選抜の活動をユースレフリーの育成、目標の場に。5人の高校生が同志やプレーヤーから学び、新たな意欲

このエントリーをはてなブックマークに追加

U-17日本高校選抜と大学生の練習試合を担当、コントロールしたユースレフリーの5名

 高校2年生の有力選手たちで構成されたU-17日本高校選抜が、2月17日から20日まで静岡県内で合宿を行った。期間中に大学生と練習試合3試合を実施。そのうち、19日の拓殖大戦、20日の桐蔭横浜大戦の2試合を高校生のユースレフリーによる審判団がコントロールした。

 日本高校選抜の活動は1970年代から続いているが、今回、その活動に初めてユースレフリーの育成が加えられている。高体連サッカー専門部は、22年に入ってから、U-18日本高校選抜とU-17日本高校選抜の活動を計3度の時期に実施(U-18、U-17の各選考合宿は同時期)。各合宿の練習試合のうち数試合をユースレフリーが担当している。

 この新たな試みを行う上で、全国のユースレフリーに参加者を募集。新型コロナウイルスの影響や費用面で残念ながら参加できない高校生もいたという。その中で、今回の静岡合宿は、選ばれた松尾祥汰君(桐陽高3年)、福田天翔君(旭高3年)、木下心君(千里高2年)、藤田海豪君(東海大相模高2年)、山田咲助君(横浜隼人高2年)の5名が1泊2日で活動をともに。同じ志を持つユースレフリーたちや指導員の先生方と経験や考え方を伝え合った。

 そして、同年代で、日本を代表する高校生プレーヤーたちのハイレベルな試合を担当。高校サッカー部の“代表チーム”であるU-17日本高校選抜と同じく、“全国のユースレフリーの代表”という責任感を持って臨み、試合を通して貴重な経験を得た。

 ユースレフリーの育成は日本サッカー界が重視している課題の一つ。今回の試みは「高校生審判員が目標とするような場や、成長するためにレベルの高い場所を提供したい」という意見などをきっかけに、関係者たちの尽力もあって実現した。

 静岡合宿に帯同した福島崇教諭(正則高)は、「地域で活躍しているユース審判員がいて、彼らがこれからどう育っていくか。大きな舞台を経験することで色々な子と出会って、学んで、刺激を受けて、審判を目指す子たちの一つの夢が作れたらなと思っています。(今回参加しているユースレフリーは皆)生き生きとしています」と語った。

 参加したユースレフリーたちからは、「徐々に自分が流れを掴むことができた」「できないことにどんどんチャレンジすることを意識した2日間でした」「他県の人たちと交流することはなかなか無いこと」「一緒に切磋琢磨できる仲間がいたので、自分の頑張れる活力になる」「同年代の高校選抜の方が凄く頑張っている。今後の審判活動もより一層頑張りたい」「こういう機会が増えて、自分ももっともっとレベルアップしたい」といった声が挙がっていた。

 高体連サッカー専門部は今後もユースレフリー育成のための取り組みを考え、実行していく。もちろん、レフリングのレベルアップが必須だが、近い将来、インターハイなどの全国大会をユースレフリーが担当する機会が訪れるかもしれない。一方、貴重な経験や同志との交流をしたユースレフリーたちは、自分の成長や地域のレベルアップに繋げる考え。将来、U-17日本高校選抜の選手たちとピッチで再会することも目標に努力を重ねる。

以下、参加したユースレフリー5名のコメント(取材順)。

●松尾祥汰君(桐陽高3年)「今回が3回目の活動で僕は1回目も参加させてもらいました。あの時はU-18とU-17の高校選抜の(選考)合宿だったというのもあるんですけれども、どっちも高校のトップレベルで今までやってきたレフリングが通用しない部分もあったのですが、(前回、今回と)徐々に自分が流れを掴むことが出来ました。今3級なので2級、1級を目指していきたいです。今3年で、卒業したら国士舘の方で学連に入って審判として活動していく予定です。大学のトップレベルでもやっていくので、この経験を大学に活かして行きたいです」

●木下心君(千里高2年)「今回、3回目の研修で大阪、関西から初めて、違う地域から来させて頂きました。普段、主に高校生年代を担当させて頂いている中で、このレベルで(笛を)吹くのは初めての経験だったので、まず自分の実力がどこまで通用するのかは選手と一緒でした。できないことにどんどんチャレンジすることを意識した2日間でした。(選手とは、)今後どこかの試合のピッチ上でまたお会いすると思うので、お互い成長した上で、気持ちよく試合に臨んで行けるようにするのが僕らの使命であり、個人としてもそう思っているので、吸収した上で今後の活動に活かしていきたいです」

●福田天翔君(旭高3年)「(高校選抜の選手たちは、)選抜されているだけあって上手いし、速いしで普段やり慣れていないスピードだったんですけれども、そこに上手く対応できたのは自分にとって凄く良い経験になったんじゃないかと思います。また、(対戦相手が)大学生になると、強さとかも出てくるので、そういったところも今回は見極めることができたので良かったんじゃないかなと思います。あと、こうやって他県の人たちと交流することはなかなか無いことなので、色々な人の考えや経験を聞けたし、吸収もできたのでとても良かったです」

●藤田海豪君(東海大相模高2年)「今回初めて参加して、高校生の一番レベルの高い人たちと大学の中でもトップレベルの人たちとの試合だったので、最初はちょっと緊張もあって自分の中で上手くジャッジできなかったりというのがあったんですけれども、だんだん慣れてきて、同世代の子と一緒にできることもなかなかないので、楽しくできたというのもありました。(今回は)一緒に切磋琢磨できる仲間がいたので、自分の頑張れる活力になると思います。凄く貴重な経験になりましたし、同じ年代の人たちとやることは本当に数少ない機会なので、もっともっとこういう機会が増えて、自分ももっともっとレベルアップしたいと思います」

●山田咲助君(横浜隼人高2年)「自分はいつも神奈川県の所属として神奈川県内で主に活動しています。今回は日本高校選抜ということで、全国から色々な人が来る、審判も色々なところから来るということで、自分の県とは違う色のサッカーなどがあったりして色々な刺激を受けることができました。同年代の高校選抜の方が凄く頑張っているなと、自分も凄くエネルギーというものをもらえて、少しでも自分の思うサッカー像、試合を作っていくために今後の審判活動もより一層頑張りたいと思いました。今日来れなかった人もたくさんいるみたいなので、またの機会に違う人とも交流をして、お互いに切磋琢磨していきたいです」

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2021

TOP