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前橋育英が延長戦の3発で佐野日大に勝利。メンバー入り懸けた選手たちが団結して関東大会Bグループ制覇

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関東大会Bグループは前橋育英高が優勝した

[5.30 関東高校大会Bグループ決勝 前橋育英高 4-1(延長)佐野日大高]

 30日、令和4年度 第65回 関東高校サッカー大会(神奈川)のBグループ決勝が行われ、前橋育英高(群馬)が延長戦の末、佐野日大高(栃木)に4-1で勝利。Bグループ優勝、全体3位で大会を終えた。

 今大会の前橋育英は、プレミアリーグEASTを戦うAチームのサブ組と、県1部リーグを戦うセカンドチームの選手中心に構成されたメンバー。この日2得点のFW山本颯太(3年)が「みんなインターハイ出たいと目標にしていて、みんな全力で取り組んでいたので良いチームだったと思います」と説明したように、生き残るために各選手が全力で戦ってきた。

 2試合を10得点無失点で決勝進出。この日は前日にプレミアリーグの指揮を執った山田耕介監督もベンチ入りした。4-4-2システムの先発は、GK大澤脩人(3年)、右SB磯村陽軌(3年)、CB熊谷康正(2年)、CB斉藤航汰(3年)、左SB福永竜也(3年)、ダブルボランチが大當泰生(3年)とゲーム主将の茂木碧生(3年)、右SH齋藤颯太(3年)、左SH芦田悠真(3年)、2トップは水川哲平(3年)と尾上飛翔(3年)がコンビを組んだ。

 一方の佐野日大は、今年の狙いとする前から奪い切るディフェンスでチャレンジするなど日大藤沢高(神奈川)、駒澤大高(東京)を破っての決勝進出。この日はGK槙田海里(3年)とDF大野結斗(3年)を負傷で欠いていたが、GK村野大輝(2年)、中央に緒形一真(2年)、青木柾(3年)、高根澤賢(3年)の3人と右WB小竹翔馬(3年)、左WB原朝哉(2年)が並ぶ5バック、高橋篤生(3年)と向井俊貴(3年)のダブルボランチ、右SH江沢匠映主将(3年)、左SHヒアゴンフランシス琉生(3年)、そして1トップを大久保昇真(3年)が務める5-4-1システムでBグループ制覇に挑戦した。

 立ち上がり、佐野日大は高い位置でボールを奪うと、向井や大久保が思い切り良くミドルシュート。また、CKから高根澤がヘディングシュートを放つなど勢いのある攻撃を見せる。だが、3連戦の疲労もあって普段のように前から寄せ切れず、選手間のプレッシングの呼吸が合わない部分も。試合は早い時間帯から前橋育英がボールを圧倒的に支配する展開となった。

 前橋育英は左SB福永が積極的な攻撃参加からクロスやシュート。15分には、左サイドで芦田、水川とテンポ良く繋いで福永が左足クロスを入れる。GKが飛び出して何とか触るも、こぼれを尾上が右足で蹴り込み、前橋育英が先制した。

 だが、佐野日大がすぐに得点を奪い返す。19分、右サイドへボールを繋ぐと、江沢がPAへループパス。ダイアゴナルの動きで走り込んだヒアゴンが右足でゴールを破り、1-1とした。

 前橋育英は左右へボールを動かし続け、水川や齋藤颯の突破や福永のプレースキックも交えて相手ゴールへ迫る。だが、守備ブロックを構築して対抗する佐野日大はスライドを欠かさず、背後へのボールも高根澤らがクリアする。守りの時間が長くなったものの、前への姿勢を失わず、江沢のロングスローや大久保の反転シュートなどで2点目を目指した。

 前橋育英は後半開始から尾上に代えて山本を投入。運動量豊富な大當がボールに係わり続けながら、丁寧に2タッチで動かして相手にプレッシャーを掛ける。9分にゴール前を崩して芦田が決定的な左足シュートを放つが、その後はボールを保持して揺さぶり続けるもなかなか決定機を作ることができない。

 力みすぎた面もあったか。前橋育英の指揮を執った櫻井勉コーチは「負けられない、(山田)監督が来ているというプレッシャーがあることは分かります。でも、それで何もできない、ではいけない」。各選手がチームのために特長を出そうとしていたが、相手の堅い守りもあってやり切れない時間帯が続いた。

 一方、佐野日大は狙い通りの守備をハイタッチで喜ぶシーンも。海老沼秀樹監督が「初戦に比べてディフェンシブゾーンの守りは良くなったかなと思います」と頷いたように、ボールを繋がれても中央のスペースを空けず、ゴール前ではシュートブロックやクロス、セットプレーで相手よりも先に触ることが徹底されていた。

 そして、球際光る高橋らがボールを奪うと、向井の精度高い左足キックなどから1チャンスを狙う。だが、前橋育英もリーダーシップを持って戦う茂木や斉藤航を中心に堅い守りを継続。前橋育英は11分に水川をFW西島隆太(3年)、21分に磯村を右SB清水大幹(2年)、33分には芦田をMF堀川直人(3年)へ入れ替え、佐野日大も36分に大久保に代えてFW籾山陽紀(3年)を投入する。だが、攻める前育、守る佐日の展開、スコアも変わらないまま試合は前後半計20分間の延長戦へ突入した。

 その前半開始直後の6分、ついに前橋育英がスコアを動かす。右サイドでオーバーラップしたSB清水へ齋藤颯からのパスが通る。そして清水がライナー性のクロスを入れると、ニアへ飛び込んだ山本が左足1タッチで合わせて勝ち越し点。さらに9分、清水の右クロスを堀川が頭で合わせると、フワリと浮いたボールがそのままゴールを破り、3-1となった。

 佐野日大は延長前半終了間際に江沢からFW田村一心(3年)へスイッチ。前橋育英は延長後半開始から齋藤颯とMF小川雄平(3年)を入れ替える。佐野日大は原のロングスローや向井の仕掛けなどから1点を奪い返そうとするが、前橋育英は6分、左サイドからカットインした山本が右足シュートを叩き込んで4-1。前橋育英が熱戦を制した。

 敗れた佐野日大だが、海老沼監督は「良く頑張ってあそこまで耐えてくれて。あそこで1点獲られてそこで粘れたらまた違ったんだけど、子どもたちも今持っている力を出してくれたかなと思います」と選手たちの健闘を讃えていた。

 一方、前橋育英の大當は「(山田)監督が見ていると、みんなやらなきゃなって思いも強くなりました。(それ以上に)1日目から通してみんな良い雰囲気と集中力を持ってやれたのでそこが(全体)3位、(Bグループで)優勝できた要因かなと思います」と胸を張った。

 櫻井コーチは「こういう緊張感の中で3試合できたのは収穫だったかなと思います。何人か(インターハイ予選で)チャンスはもらえるかなと思いますけれども、まだまだなんで。でも、これをきっかけにしてもらいたいと思います」と選手たちに期待した。関東大会予選決勝で桐生一高に0-4で敗戦。その悔しさもぶつけ、今後へのきっかけを掴んだ前橋育英の“関東大会メンバー”が、プレミアリーグEAST暫定3位のAチームに新たな活力を加える。

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校総体2022

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