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圧倒的な動き、活躍を続ける國學院久我山FW塩貝健人。選手権で最大級のインパクトも

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2得点1アシスト。國學院久我山高FW塩貝健人主将(3年=横浜FCジュニアユース出身)は強豪対決で圧倒的な動き

[11.27 高円宮杯U-18リーグ東京1部第17節 成立学園高 2-3 國學院久我山高 成立学園鷲宮G]

 今冬、最大級のインパクトを残すかもしれない。國學院久我山高FW塩貝健人主将(3年=横浜FCジュニアユース出身)はこの日、選手権代表校対決となった成立学園高戦で2得点1アシストの大活躍。選手権東京都予選でインターハイ全国2位の帝京高相手に2得点を挙げるなど4戦連発、計8得点を叩き出しているストライカーが強豪対決で再び結果を残した。

 前半14分の先制点、後半38分の決勝点ともに味方の折り返しからゴール。「1点目も2点目も、サイドからボールが入ってきて、冷静に流し込めば良いというゴールだった」。シーズン当初はその決定機で仕留め切れなかったというが、本人も決定力と味方の崩しの質が高まっていることを実感する2発となった。

 この日は得意とするドリブルシュートでの得点がなく、本人は「あと2点くらい獲れた」と不満げだったが、リーグ戦の首位決戦で逆転勝ちの立て役者に。加えて、背番号10は時に複数のDFを引きずるかのように前進するなど、随所で相手を圧倒していた。1対1はおろか、DF2、3人相手でも止まらないほどの推進力。前線でボールを受ければ確実にキープし、ターンして強引に前へ、前へと突き進む。明らかにエンジンが違うような動きを見せ続けていた。

「止めに来よう、と思って来ている方が自分は嬉しい。逆にいなせるというか。オレにこう来るということは、オレと1対1を仕掛けて来ている。そこじゃ負けないので。逆に力強くそこをいなせれば前向けるとだんだんと分かってきた感じですね」

 ドリブル、キープ、守備のプレッシングもフルパワー。李済華監督は苦笑いを浮かべながら、「目に入るよね、やっぱり。(彼には)9番タイプを求めるから、違うことで消耗して欲しくない。でも、彼は守備も攻撃も全部やりたいタイプだから。『オマエ、人使えよ』と言いたいけれど、力あるよね。きょうも最後に決めてくるから」。失うことがゼロではなく、コーチ陣が首を振るようなシーンも。それでも、まっすぐな姿勢でゴールと勝利を目指し続けるストライカーは結果によって名将をも認めさせている。

 現在は178cm、75kgというが、横浜FCジュニアユース時代は身長165cm、体重も50kg台で「中学の時は全然ちっちゃかったんですけれども。どっちかというと技術の『ザ・久我山』のような選手だった」。中学時代に評価を得られなかった悔しさも成長の糧に。コロナの自粛期間に自ら筋力、瞬発力、何よりも身体の使い方を向上させる術を調べ、実践し、ジムにも通って「実戦に繋げて行く」力を身につけた。

 そして、プレースタイルを徐々に変えながら進化。現在のパフォーマンスができるようになるまで、相当な努力があったはずだ。「自分で考えないと。自分のプレーは自分で練習して、考えてやらないと伸びない」。國學院久我山の自由な校風も合っていた。考え、成長を続けた3年間。昨年度の選手権予選でも印象的な動きと活躍を見せていたが、現在は周囲を活用する回数を増やすなど少しずつプレーの幅を広げて白星に導き続けている。

 全国大会への出場がなかったこと、また独特過ぎるプレースタイルも影響してか、進路についての勧誘は全く無かったという。大学進学予定で「だんだんこの先も自分のプレーは変わると思うんですけれども、大学行ってフィジカルみんな上がった時にどうするか考えていきたい」と語る塩貝は、新たな進化の前に野心を持って選手権を戦う。

「注目されているFWや、プロに行くFWのいるところとやれるんで、急に出てオレが一番だと見せてやろうと思っています。(2回戦からの登場で1試合少ないが、)大迫選手を超えて歴代得点王を取って大学に行きたいと思っています。ちょっと(目標が)デカ過ぎたかもしれません(微笑)」。

 前回王者・青森山田高のエースFW小湊絆(3年)は横浜FCジュニアユース時代のチームメートで、当時「アイツは全然、上」という存在だった。小湊は前回大会で3得点を挙げるなど注目FWとなっているが、現在は「負けていないと思っている。ずっと意識してきたので、やっと同じ全国出てここからだと思っている。自分まだ全国でやっていないので、自分がどれだけ全国でやれるのかというのは自分も楽しみです」。選手権予選やリーグ戦の大活躍から厳しいマークを受けることは間違いない。ここからの1か月でも満足することなく考え、成長を続け、万全の状態で選手権へ。そして、注目FWたちを凌駕する。

後半38分、左足で決勝ゴール

(取材・文 吉田太郎)
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