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[MOM4134]京都U-18FW平賀大空(3年)_若き紫魂を束ねる「7番のキャプテン」が土壇場で執念の決勝ゴール!

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劇的な決勝ゴールを奪った「7番のキャプテン」、京都サンガF.C.U-18FW平賀大空

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.9 高円宮杯プレミアリーグプレーオフ1回戦 日本文理高 0-1 京都U-18 バルコムBMW広島総合グランド]

 もうキャプテンという役割とこの番号を背負った時から、とっくに覚悟は決まっていた。1年でチームを約束の場所へ連れて帰る。そのためだったら、自分にできることは何だってやり通してみせる。きっとこの日の大事なゴールは、そんな毎日を積み重ねてきた大きな努力に対して、サッカーの神様が微笑んでくれたに違いない。

「今年の1年はチームをキャプテンとして引っ張ってきましたけど、去年はチームをプリンスに落としてしまったので、『後輩のためにも』という想いで自分が決めたいと思っていました。みんなが寄ってきてくれて凄く嬉しかったですけど、ホッとした気持ちが一番強かったですね」。

 伝統の“7番のキャプテン”を託された、京都サンガF.C.U-18(京都)が誇る2022年のリーダー。FW平賀大空(3年=神戸フットボールクラブジュニアユース出身)が土壇場で叩き出した執念のゴールで、チームは最後の90分間への挑戦権を力強く手繰り寄せた。

 昨シーズンの京都U-18は奮戦しながらも、2011年の創設から戦い続けてきたプレミアリーグの舞台から、初めての降格を突き付けられた。プリンスリーグの開幕を控えた今年3月。平賀の言葉が印象に残っている。「チームとしては歴史に残る1年にしたいなと思っていて、初めてサンガとしてもプリンスを戦うということで、凄く難しいと思うんですけど、1年でプレミアに上げたいと思いますし、自分が中心になってやらなくてはいけなくて、どんな時も自分だけは折れちゃいけないとは思っているので、みんなが僕のことを見てやってくれればいいかなと」。

 激戦区のプリンス関西を2位で駆け抜けたシーズンを通じて、キャプテンの存在は際立った。9ゴールを挙げて得点王に輝いた上に、大会MVPまで獲得。「結果が出る前から自信を持ってプレーはしていたんですけど、特に後期はその自信がより結果に繋がりましたし、対戦相手の方も結構ダントツで『平賀がMVPだ』と言ってくれた方が多かったんです」と明かすのはチームを率いる石田英之監督。残すは最大にして、唯一の目標の達成。プレミア復帰を懸けたプレーオフに挑むため、広島へ乗り込んできた。

 日本文理高と対峙する1回戦。相手の戦い方はハッキリしていた。守備は粘り強く、攻撃は縦に速く。ボールを丁寧に動かす京都U-18との噛み合わせも決して良いとは言えないスタイルだが、チームが1年を掛けて重ねてきた経験値が、この大一番でも明確な手応えとして生かされる。

「今年1年はプリンスでああいうチームともやってきていますし、僕らも対策されてきて、前から行って、後ろで弾いて押し込むみたいなチームとの試合は苦しかったですけど、前期は結構やられてきたことで、我慢強くなった部分は凄く成長しているなと思います」とは平賀。我慢の展開は織り込み済み。“一刺し”の瞬間を焦れずに探り続ける。

 その時は最終盤に訪れた。0-0で迎えた後半45分。右サイドでのスローイン。DF柴田将伍(3年)の機転から、相手の裏を取ったFW熊谷空大(2年)の折り返しが平賀の足元へ届く。夢中で振り抜いた左足の感触は確かにあったが、そこから先のことはよく覚えていない。気付けばベンチに向かって全速力で走り出していた。

「正直あまり覚えていないですけど、コースは見えたので、みんなの想いの乗ったゴールを押し込んだ感じです」(平賀)。殊勲のスコアラーを中心に、歓喜と絶叫の輪が広がっていく。「やっぱり大黒柱なので、キャプテンが決めてくれて良かったと思います」と笑ったのは石田監督。チームを牽引し続けてきたキャプテンの劇的な決勝弾で、京都U-18は最後の1試合へと生き残った。

 川崎颯太、中野桂太遠山悠希と受け継がれてきた、京都U-18の“7番のキャプテン”。責任と重圧の伴う役割にも、平賀はポジティブに向き合っている。「自分がピッチの中で誰よりもやらないと、口先だけで引っ張っていったところで誰も付いてこないというところで、そこはプレミアで戦ってきた先輩たちを見てきましたからね」。

「(川崎)颯太くんにはトップに行った時も凄く声を掛けてもらいましたし、やっぱりトップチームの中でも颯太くんは引っ張っていくような人やったので、そこは背中を見て学んできました。もちろん凄く責任は感じていますけど、今のチームは付いてきてくれる人が多いので、キャプテンとしてもやりやすいです」。

 泣いても、笑っても、このチームで戦えるのはあと1試合だけ。「この大会が終わったら引退だということに寂しい気持ちはあって、特に3年生はそういう面で『できるだけみんなでサッカーをしたい』ということで、一体感があると思います」。だからこそ、成し遂げたい。この仲間と、このスタッフと、掲げ続けてきた最大の目標を。

「サンガはプレミアにいるべきチームだということを証明しに来たので、次も絶対に勝って、もう1回プレミアに戻りたいと思います」。

 広島の大空へ歓喜の声を響かせるイメージはできている。若き紫魂を束ねる“7番のキャプテン”。平賀の決意は、揺るがない。



(取材・文 土屋雅史)
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